日本農芸化学会誌
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43 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 清酒酵母の外層多糖類の分離とその構成糖について
    熊谷 知栄子, 斎藤 和夫, 秋山 裕一
    1969 年 43 巻 12 号 p. 813-818
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    清酒もろみは,酵母株によって高泡の有無や状貌を異にするが,この現象は酵母細胞の最外層構造が関係すると推測される事実が示されてきた.本報ではこれに関連して,高泡を形成する清酒酵母(協会7号)菌体から細胞外層物質を分離し,これを精製し,マンナンであることを明らかにした.
    外層物質の精製法は酵母をバイブレーターにより細胞を破損しないようにして溶離,メタノール沈澱させ,Sevag法を繰返して精製する方法をとった.
    外層物質は,薄層クロマトグラフィー,ペーパークロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィーによってマンノースのみが検出されることから,マンノースを骨格としたマンナンであることを明らかにし,これを外層マンナンと称することにした.
  • 酸性ホスファターゼの精製および性質
    萩原 一成, 増田 勉, 榊原 栄一
    1969 年 43 巻 12 号 p. 819-825
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    緑豆発芽体の酸性ホスファターゼを冷水抽出,セファデックスG-25ゲル濾過,硫安塩析,DEAE-セルロースによるカラムクロマトグラフィー,そしてセファデックスG-200ゲル濾過によって約420倍に精製し,その酵素的性質を検討した.
    (1) ρ-=ニトロフェニルリン酸に対するKmは2.7×10-4Mであった.
    (2) 最適pHは4.65であった.
    (3) pH 7.0で,熱に対する安定性は40°Cでは1時間後,全く失活しないのに対し,60°Cでは10分で60%失活し,1時間ではほとんど完全に失活した.
    (4) 基質特異性についてはρ-トロフェニルリン酸,フェニルリン酸,β-グリセロリン酸,グルコース-6-リン酸,5'-AMP,無機ピロリン酸を水解するが,3'-AMPは水解しなかった.
    (5) ビス-(ρ-ニトロフェニル)リン酸に対するホスホジエステラーゼ活性は示さなかった.
    (6) Zn2+,PO3-4,F1-,Mo7O6-24,L-酒石酸で強く阻害された.
  • アルカリペーストの黄発色の要因としてのフェルラ酸エステル
    小山 裕康, 米山 徹, 府川 秀明, 清水 徹
    1969 年 43 巻 12 号 p. 826-830
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 小麦粉をアルカリ性メタノールで抽出し,そのエーテル可溶部をカラムクロマトグラフ,薄層クロマトグラフで精製し,粉中のアルカリ黄発色物質としてフェルラ酸を同定した.
    (2) デンプンのフェルラ酸エステルを合成し,小麦デンプンに加えたところ強い黄発色を認めた.
    (3) この二つの事実から,小麦粉のアルカリ黄発色の主要因は粉中の糖の水酸基にエステル状に結合するフェルラ酸と推定した.
  • Rhizopus niveusのガラクダナーゼの精製と酵素的性質
    橋本 揚之助, 辻阪 好夫, 福本 寿一郎
    1969 年 43 巻 12 号 p. 831-836
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Rhizopusniveusの麩培養麹からガラクタナーゼを抽出し,Sephadex G-100でゲル濾過して4つの区分,F-1,F-II,F-III,F-IVに分別した.これらはすべて,コーヒーアラビノガラクタンを加水分解した.この抽出液中にはβ-ガラクトシダーぜも含まれていたが,ゲル濾過によってガラクタナーゼから分離された.F-IIIおよびF-IVに含まれるマンナナーゼは,DEAE-Sephadexカラムクaマトグラフィー,あるいはマンナン吸着によって除去された.
    これらのガラクタナーゼの反応最適Pxは,いずれも5.0付近にあった.pH安定性は,F-1では3.0~9.0,F-IIでは3.0~6.5,F-IIIでは3.0~7.5,F-IVでは3.0~8.0であった.また,いずれも50°C以下で安定であった.
    コーヒーアラビノガラクタンに対する加水分解率は,F-1>F-II>F-III>F-IVの順であったが,マンノース含量の比較的高い不溶性アラビノガラクタンの可溶化活性は,濁度の減少で測定した場合F-IV>F-III>F-II>F-Iの順であり,可溶性アラビノガラクタンに対する加水分解率とは逆の順序であった.
  • 馬鈴薯の煮沸に伴うインドフェノール還元値の増加について (1)
    沼 慎二, 野村 男次
    1969 年 43 巻 12 号 p. 837-843
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯磨砕組織を煮沸するに伴いインドフェノール還元値が増加する現象について検討した結果,
    (1) イソドフェノール・キシレン法によれば,試料の煮沸に伴い顕著なTillman試薬の還元値の増加が見られたが,2,4-ジニトロフェニルヒドラジン法によれば試料中のASAは微量で,しかも煮沸とともに減少した.また試料中のDHA含量が高くDKGがこれに次ぎ,いずれも煮沸とともに急激に減少した.したがって馬鈴薯試料の煮沸に伴うTillman試薬の還元値の増加は,これまでに報告されている結合型ASAの加熱分解による遊離ASAの生成によるものではないと断定した.
    (2) 馬鈴薯磨砕組織の煮沸試料をシリカゲルGの薄層クラマトグラフィーによって検索した結果,煮沸とともに増加しているレダクトンB(2,3,4-トリヒドロキシ-2-ペンテン酸),およびレダクトンIII(5-メチル-3.4-ジヒドロキシテトロン)を同定した.
    (3) 試料とほぼ等濃度のASAおよびDHAの2%メタリン酸溶液をおのおの煮沸すると,DHA溶液のみ煮沸とともに顕著なTillman試薬の還元値の増加が見られた.
    (4) したがって,馬鈴薯磨砕組織の煮沸に伴うインドフェノール還元値の増加の原因の一つとして,DHAの加熱分解によるレダクトン類の生成を挙げることができると考えた.
  • 木灰が分生胞子成分に及ぼす影響について (3)
    真鍋 勝, 松浦 慎治, 中野 政弘
    1969 年 43 巻 12 号 p. 844-850
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    木灰を添加し製麹した種麹胞子の耐久性増大の機作を追求するために,胞子の糖類およびケト酸について検討を加えた.
    (1) 直接還元糖:種麹製造直後は両試料とも少量で差がないが,貯蔵により含量が増加していた.とくに無添加胞子の増加が大であった.
    (2) 酸分解生成還元糖:木灰添加により含量が増加しており,貯蔵による減少は無添加に比較して少なかった.
    (3) グルコース:製造直後は両試料ともほとんど含有していないが,貯蔵により増加する.とくに無添加胞子の増加が大であった.
    (4) トレハロース:製造直後は木灰添加による含量変化はなかった.両試料とも貯蔵により含量が減少するが,木灰添加することにより減少速度が低下していた.
    (5) マンニトール:木灰添加により含量が増加しており,貯蔵による含量変化は両試料とも少なかった.
    (6) ピルビン酸:木灰添旅により含量が著しく減少している.貯蔵により両試料の含量は減少するが,無添加胞子の減少が著しかった.90日間の貯蔵により両試料の含量は近くなっていた.
    (7) α-ケトグルタル酸:木灰添脚こより著しく減少していた.貯蔵により両試料の含量は減少するが,無添加胞子の含量の減少が著しかった.
    以上のことより,木灰添加により製造した胞子は,ケト酸,トレハロース,酸分解生成還元糖などの含量変化より全般的な代謝活性が低下していることが推察された.この代謝活性の低下により貯蔵物質の減少は少なくなり,発芽に必要と思われるマンニトールを多量に含有することにより,木灰添加により製造した種麹胞子は,耐久性が増大しているものと考察した.
  • 米山 勝美, 示野 邦郎, 田口 龍祐, 見里 朝正
    1969 年 43 巻 12 号 p. 851-856
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Comparative investigation was taken among several antibacterial screening methods for controlling bacterial leaf blight of rice plant caused by Xanthomonas oryzae with 5 chemicals applying nowadays.
    In the agar dilution method, the agar diffusion method and the turbidimetric method, Phenazine-5 N-oxide, Cellocidin and Chloramphenicol were remarkably effective, whereas, Ni-bis-dimethyldithiocarbamate was a little effective, and Fentiazon was not observed the antibacterial activity in these tests.
    In rice seedling screening methods, the high protective effects of these five chemicals were observed by 3 kinds of method, which were needle inoculation, bacterial exudation, and spray inoculation methods.
    The results were concluded that the method of spraying chemicals immediately after needle inoculation was preferable as primary screening test and the other methods might be applied as secondary screening test.
  • 温度勾配培養法による各種牛乳細菌の発育温度特性の検定とその意義
    中江 利孝
    1969 年 43 巻 12 号 p. 857-861
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    牛乳・乳製品の試料30点から5°C,35°Cおよび47°Cの3段階の温度条件下で低,中および高温菌を分離して菌属までの同定を行ない,一部の既知食品細菌をあわせて,計90菌株の発育温度特性を温度勾配培養法によって検定した,特性値としての発育適温と発育最高および最低温度を測定した結果,低,中および高温菌の発育適温の平均値はそれぞれ28.4,37.4および46.5°Cであり,発育最低および最高温度で示す温度範囲の幅は低,中および高温菌の順に大きくなることが示された.これらの菌群は発育温度特性値,とくに発育適温と発育最高温度から,真正低温菌,中温性低温菌,低温性中温菌,真正中温菌,高温性中温菌,中温性高温菌,真正高温菌の7群(GroupI~VII)にグルーピングされ,それぞれの菌群と分類学上の菌属との間には概して一定の相互関係が認められた.供試菌株については,さらに温度勾配培養下の集落拡大速度を経時的に測定するとともに,それに基づく発育温度曲線を作成し,牛乳細菌の発育速度と温度との関係およびその意義について若干検討を加えた.
  • Taitomycinの結晶化とその性質
    安達 卓生, 田中 博, 青木 博夫, 並木 満夫, 宗像 桂
    1969 年 43 巻 12 号 p. 862-865
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Taitomycinが,taitomycinA,B,C,Dと名づけた強い黄緑色螢光をもつ淡黄色の類縁化合物の混合物であることがわかった.このうち主成分Bの結晶化に成功し,その分析値より実験式C31H31O9S3N8を提出した.
    (2) Taitomycin Bの塩酸分解でほぼ同モルのスレオニンと未知中性アミノ酸が生成した.
    (3) 精製taitomycin粉末とtaitomycin B結晶の抗菌力には大差なかった.
    (4) Taitomycinと近似した性質をもつRP-9671はtaitomycinB,Cの混合物からなることが判明した(約4:1).
    本報告を終るにあたり,試料taitomycinと生産菌を提供していただいた台糖株式会社の霜三雄博士,RP-9671を恵与していただいたRhone-Poulenc社,RP-9671生産菌株,Strept. actuosus NRRL 2954を恵与していただいたアメリカ合衆国農務省のT.G.Pridham博士に厚く感謝いたします.
  • Zittleらの尿素-硫酸法によるκ-カゼインの調製法と,分離したκ-カゼインの2, 3の性質について
    中西 武雄, 伊藤 敞敏
    1969 年 43 巻 12 号 p. 866-869
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The investigation was performed on the preparation method of κ-casein by ureasulfuric acid method of Zittle and Custer. Some attentions on the method and properties of κ-casein prepared by this method were described.
    Major part of impurities in κ-casein, judged by starch-gel electrophoresis, was freed after twice precipitation with ethanol, but a small amount of impurities remained even after four times of purification.
    The presence of para-κ-casein like components formed by degradation of κ-casein during preparation procedures was also observed. Sialic acid content was the highest in κ-casein purified three times, but the stabilizing ability to αs-casein in the presence of Ca ion was lowered as the purification was repeated. Excessive mixing or agitation during purification procedure changed κ-casein to gelled form.
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