木灰を添加し製麹した種麹胞子の耐久性増大の機作を追求するために,胞子の糖類およびケト酸について検討を加えた.
(1) 直接還元糖:種麹製造直後は両試料とも少量で差がないが,貯蔵により含量が増加していた.とくに無添加胞子の増加が大であった.
(2) 酸分解生成還元糖:木灰添加により含量が増加しており,貯蔵による減少は無添加に比較して少なかった.
(3) グルコース:製造直後は両試料ともほとんど含有していないが,貯蔵により増加する.とくに無添加胞子の増加が大であった.
(4) トレハロース:製造直後は木灰添加による含量変化はなかった.両試料とも貯蔵により含量が減少するが,木灰添加することにより減少速度が低下していた.
(5) マンニトール:木灰添加により含量が増加しており,貯蔵による含量変化は両試料とも少なかった.
(6) ピルビン酸:木灰添旅により含量が著しく減少している.貯蔵により両試料の含量は減少するが,無添加胞子の減少が著しかった.90日間の貯蔵により両試料の含量は近くなっていた.
(7) α-ケトグルタル酸:木灰添脚こより著しく減少していた.貯蔵により両試料の含量は減少するが,無添加胞子の含量の減少が著しかった.
以上のことより,木灰添加により製造した胞子は,ケト酸,トレハロース,酸分解生成還元糖などの含量変化より全般的な代謝活性が低下していることが推察された.この代謝活性の低下により貯蔵物質の減少は少なくなり,発芽に必要と思われるマンニトールを多量に含有することにより,木灰添加により製造した種麹胞子は,耐久性が増大しているものと考察した.
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