電流メモリ回路は, 電流サンプルホールド機能を実現し, 電流モード離散時間アナログ信号処理回路の主な構成ブロックである.単一のデバイスに信号をサンプルするため, 電流ミラーを用いた場合に比べて, 複製された信号が素子のばらつきや精度に依存しない.しかし, チャネル長変調効果, MOS FETから発生する雑音, スイッチをオン・オフする際のクロックフィードスルー等が原因となり, 入力した電流とサンプルホールド電流間に誤差を生じる.本稿では, AB級動作を用いて, それらの非理想的要因を低減する電流メモリ回路を提案する.HSPICEにより, クロックフィードスルーによる誤差を0.1%以下に, 熱雑音の影響を従来回路の1/5程度に低減できることを確認した.応用例として逐次比較型A/D変換器を設計し, 分解能10bit, クロック周波数2MHz, 電源電圧2.0V, 消費電力0.45mWの性能が実現できることを示す.
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