携帯無線機アンテナを人体近傍に配置したときのSAR分布の発生メカニズムを調べるために,人体ファントム内外における近傍電磁界分布を調べた.アンテナが損失性媒質に極近接している場合には,入射磁界とSAR分布に密接な係わり合いがあることが報告されているが,入射電界との相関は必ずしも高くない.しかし,一般に局所SARは媒質内の電界によって評価されるため,媒質内外で取り扱っている物理量が異なっている点に疑問が残る.特に半波長ダイポールアンテナでは給電点付近よりも素子両端部の近傍電界が大きいにもかかわらず、媒質に平行近接させた場合のSAR分布は給電点付近のほうが大きくなっており、媒質境界面を境に分布の傾向が大きく異なっている.そこで,損失性媒質の電気定数のうち,比誘電率と導電率に着目し,これら成分が,媒質内の電界分布にどのような作用をもたらすかについて調べた. 2GHz帯半波長ダイポールアンテナとCOST244人体ファントムモデルを用いた検討を行った結果,内部SAR分布は損失性媒質のtanδによる損失の影響と,境界面での複素誘電率の差によって生じる境界面直交の電界成分の減衰によって決定されていることがわかった.
抄録全体を表示