ここでは台湾の自転車産業と電子産業のケースから,OEMと後発工業国の企業成長の関わりを分析している.それを通して得られた第1の結論は,自転車産業のケースから導出された「OEMから自社ブランドへ」という後発国企業の発展経路を,包括的に他産業に適用することは難しいということである.第2に,自転車産業のケースから,「OEMから自社ブランドへ」という経路を達成した場合,自社ブランド事業はバリューチェーン全般,さらには社会に対しても,広範な影響を及ぼすことが明らかになった.一方,電子産業のケースからは,自社ブランドの確立を通じた価値創出の可能性が低下しつつあること,後発国の価値創出のあり方には多様な可能性があることが示された.第3に、基幹部品メーカーは,一面ではブランド力の弱い後発国企業の自社ブランド事業を容易にするものの,他面,自社ブランド事業から獲得できる成果を限定するという二面性を持つことが明らかになった.
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