Palmisano ら (2000) は視覚刺激に不規則な微小振動を付加するとベクションが促進され,その周波数成分により促進の度合いが異なることを明らかにした.また,サルの前庭感覚系の動特性は正弦波状回転加速度刺激の周波数成分により異なる (Fernandez and Goldberg, 1971).これらのことから本研究では促進の理由が前庭感覚系の動特性と関係すると考え,視覚刺激に付加された前庭感覚系の動特性を考慮した垂直軸周りの振動 (周波数: 0, 0.0125-0.1, 0.1-0.25, 0.25-0.5, 0.5-1.0, 1.0-2.0, 2.0-4.0, 4.0-8.0, 8.0-16, 16-32 (Hz)) がベクションに及ぼす影響を検証した.その結果,振動を加えなかった場合よりも振動を加えた場合にベクションが促進された.また,周波数に応じて促進の効果も変化した.この結果はベクションが前庭感覚系の動特性の影響を受けることを示唆する.
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