マグネトロンスパッタ成膜と350℃の熱処理により作成したMnBi(15nm)膜に30keVのKr^+イオンを照射し,その構造と磁気特性の変化を調べた.イオン照射前のMnBi(15nm)膜の磁化は180emu/ccとこれまでの報告値の1/3程度であったが,保磁力は10kOe程度と大きく,大きな垂直磁気異方性を示す膜が得られた.MnBi膜の磁化,保磁力はKr^+イオン照射量3 x 10^<14>ions/cm^2程度で消失することが分かった.一方,1 x 10^<15>ions/cm^2の照射においてもNiAs型のMnBi相の存在およびトルク曲線に一方向異方性が現れていることを確認した.MnBi膜のAFMおよびMFM像から,膜表面には高さ50nm程度の凸部があり,イオン照射後においてもこの凸部に守られたMnBiが膜内に粒子状に存在していることが分かった.この粒子状のMnBi相は磁気的に孤立していると考えられ,このMnBi相により磁化,保磁力,トルク曲線振幅,構造のイオン照射量依存性を説明できることが分かった.以上から,平坦性の良いMnBi膜を得ることで,3 x 10^<14>ions/cm^2程度の低ドーズ照射により,強磁性/非磁性遷移が可能となることが分かった.
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