地上デジタル放送は2003年12月に東京,名古屋,大阪の三大都市圏で放送が開始されて以降,順次放送エリアが拡大され,現在は小規模中継局の整備へと段階が進んできている.多くの送信所が設置されるにともない,電波の異常伝搬などにより予想もしないような遠方から,希望波と同じチャンネルで希望波とは異なる番組を放送している電波が到来して,同一チャネルの干渉妨害を引き起こすことが考えられる.これまでに筆者らは放送波中継局の上位局波受信における干渉対策として,同一チャネル干渉除去装置の開発を行ってきたが,サービスエリアにおける一般家庭での受信向けに,より簡易な構成で,かつより劣悪な受信環境でも干渉除去効果を得ることができる技術が求められている.本報告では,家庭用受信機に応用することを想定し,チャネル歪みを含む再変調時間領域信号を参照信号とするアダプティブアレーを提案する.計算機シミュレーションの結果より,劣悪な受信環境においても効果的に干渉を抑圧できることを示す.
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