本文では,ヘルムホルツ分解定理に着眼したパーティクルフィルタによるフロー推定法を提案する.ヘルムホルツ分解定理を用いた従来法では,平行移動および過去に推定されたフローの推定誤差を考慮していないため,その推定性能が低下する場合が存在する.そこで提案手法では,平行移動に注目して,ヘルムホルツ分解定理のモデルを拡張する.これにより,平行移動を考慮したフローの推定が可能となり,その推定性能の向上が期待できる.さらに提案手法では,パーティクルフィルタの状態変数をフローとし,一時刻前のフレームの各画素におけるフローが現時刻のフレームの各画素におけるフローへ推移する過程を状態遷移モデルで定義する.また,以下に示す2つの過程を観測モデルとして定義する.1つ目は,現時刻のフレーム中の各画素におけるフローからそのフレーム中の各画素における輝度値が生成され,雑音が重畳する過程である.2つ目は,現時刻のフレーム中の各画素におけるフローがヘルムホルツ分解定理により回転成分および発散成分に分解され,雑音が重畳する過程である.それらのモデルに基づくパーティクルフィルタを用いることで,提案手法では一時刻前のフレーム中の各画素におけるフローの推定誤差の影響を受けずに現時刻のフレーム中の各画素におけるフローを推定することが可能となる.
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