日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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45 巻, 7 号
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原著
  • 元井 冬彦, 島村 弘宗, 石山 秀一, 及川 昌也, 桜井 直樹, 阿南 陽二, 中村 隆司, 内山 哲之, 片寄 友, 海野 倫明
    原稿種別: 原著
    2012 年 45 巻 7 号 p. 697-707
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    目的:膵癌の長期生存を可能とする治療法は根治的な切除と考えられるが,治療成績は著しく不良である.癌遺残度(residual tumor;以下,Rと略記)は切除例の予後因子だが,R0切除後でも予後・再発予測の指標が必要である.膵癌切除後に腫瘍マーカー(tumor marker;以下,TMと略記)が正常化しないことがあり,予後不良であると報告されている.今回アンケートで切除後TM正常化の有無と臨床病理学的因子の関係を解析し,予後因子としての意義を明らかにした.対象:宮城肝胆膵癌化学療法研究会参加21施設を対象に,2003年1月から2007年12月までの5年間に切除された膵癌333例中,組織学的に通常型膵癌で,TMが測定された294例を対象とした.方法:年齢・性・術式・TM・補助療法などを問うアンケートを集計し,術前TM非上昇,術後正常化・非正常化の3群に分け解析した.結果:CA19-9が67%,その他を含めると80%の症例で上昇を認め,上昇例の約半数で切除後TM非正常化が認められた.術前非上昇例,切除後正常化例の生存期間中央値が36.4,24.5か月に対し,非正常化例では16.8か月で有意に予後不良であった.多変量解析では,病期と術後TMが有意な予後因子として選別され,R0切除サブ解析でも,術後TM非正常化では有意に予後不良であった.結語:膵臓癌切除後腫瘍マーカー非正常化は重要な予後因子である.
症例報告
  • 谷岡 利朗, 川村 秀樹, 高橋 昌宏, 山上 英樹, 益子 博幸, 石津 寛之, 岡田 邦明, 市原 真
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 708-714
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    症例は52歳の女性で,4型胃癌で2005年10月に胃全摘術を施行後に術後補助療法としてS-1を投与した.2007年6月のCTで右水腎症を認め,後腹膜再発を疑いweekly paclitaxelを開始した.2クール後に水腎症は改善するも,2008年10月に右大腿の疼痛と筋の硬化が出現した.2009年3月のCTで両大腿動脈周囲に低濃度領域を認め,疼痛も両下腿へ拡大した.後腹膜再発の大腿動脈周囲への伸展とその随伴症状と診断した.両鼠径部への放射線照射後に同部位の低濃度領域は消失したが,下肢の疼痛と硬化は進行し,硬化範囲が背部へも拡がったため,同年11月にMRIを施行した.脊柱起立筋から下腿に筋変性を認めたため,変性疾患との鑑別のため筋生検を施行した.横紋筋はほとんど間質線維に置換され,その中に異型腺管をまばらに認め,胃癌筋転移と診断された.胃癌骨格筋転移の報告は少ないが,筋変性を伴った報告はなく,本症例は極めてまれな症例と思われる.
  • 野渡 剛之, 稲川 智, 木村 聡大, 久倉 勝治, 寺島 秀夫, 大河内 信弘
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 715-723
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    症例は76歳の男性で,2000年2月に吐血を主訴として近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて出血性胃潰瘍と診断された.内服加療を行うも吐血を繰り返すため,精査を行ったところ原発性限局性胃アミロイドーシスと診断され,2001年12月当院内科に紹介となった.化学療法や内視鏡的止血術が施行されたが,吐血による入退院を繰り返し,2010年9月吐血による6回目の入院時に,今後も出血の再燃が危惧され手術適応と判断された.当科に紹介となり,同年10月に胃全摘術を施行した.術中,通常の手術操作で胃粘膜下出血, 巨大血腫を形成し,易出血性が示唆された.術後経過は良好であり,現在外来で経過観察中である.アミロイドーシスにおける易出血性の機序はいくつか報告されているものの,消化管出血に対し胃切除が行われる例は非常にまれであり,若干の文献的考察を加え,報告する.
  • 大野 吏輝, 原田 雅光, 長橋 美弥, 金村 普史, 藤井 正彦, 大谷 広美, 名和 由一郎, 前田 智治, 河崎 秀樹
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 724-731
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    症例は69歳の男性で,当科受診2か月前より腹痛が出現し近医を受診した.内視鏡検査で十二指腸下行脚の潰瘍性病変を認め,腹部造影CTにて胆道気腫を指摘され,精査加療目的で当院内科を紹介された.再検上部消化管内視鏡検査時の生検にて,T細胞リンパ腫が強く疑われた.PET-CTで同部にFDGの集積を認めたが,他に異常集積を認めず,化学療法に先行して膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本にて十二指腸・膵頭部に7×6 cmの潰瘍性病変を認め,免疫染色でCD3+,CD20−,CD5−,CD7+,CD56+,CD4−,CD8+,CD30−,TIA-1+,GranzymeB+,EBER ISH−,であり,十二指腸原発T/NK cell lymphoma, enteropathy type IIと診断された.胆道気腫を契機に診断された十二指腸原発のT/NK細胞性の極めてまれな症例を経験したので報告する.
  • 塚原 哲夫, 奈良 聡, 尾島 英知, 大黒 聖二, 岸 庸二, 江崎 稔, 島田 和明, 小菅 智男
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 732-739
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    症例は70歳の男性で,心窩部痛を主訴に近医を受診,肝腫瘤を指摘され当院紹介となった.肝炎ウイルスマーカーは陰性,血清CA19-9は上昇していた.造影CTで肝内側区域を主座とし,辺縁から内部に向かって不均一に造影される6 cm大の腫瘍と,臍部から左枝に至る門脈腫瘍栓,左葉肝内胆管の拡張を認めた.腫瘤形成型肝内胆管癌の診断で,拡大肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査所見では腫瘍は主に中分化型腺癌,充実性増殖部,および紡錘形細胞の3成分からなり,互いに移行像を認めた.また門脈腫瘍栓は肉腫様の紡錘形細胞で構成されていた.術後8か月で肝内多発転移および縦隔リンパ節転移を認めたが,化学療法を施行し,術後27か月生存中である.肉眼的に明らかな門脈腫瘍栓を伴う肝内胆管癌の切除報告は少なく,中でも門脈腫瘍栓が肉腫様成分からなるものは本症例のみとまれである.その臨床病理組織学的特徴について,文献的考察を加え報告する.
  • 山口 哲司, 瀧井 康公, 丸山 聡, 松木 淳, 野村 達也, 中川 悟, 藪崎 裕, 佐藤 信昭, 土屋 嘉昭, 梨本 篤
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 740-748
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    我々は大腸癌由来転移性膵癌の4切除例を経験した.S状結腸癌術後が2例,直腸癌術後が2例であり,全てstage IIIaであった.全例異時性転移で,1例は初発再発であったが3例は他臓器転移切除を行っていた.リンパ節郭清を伴う膵切除術を行い,3例でリンパ節転移を認めた.2例は肺転移のためそれぞれ膵切除後11か月,57か月で死亡し,他2例は11か月,46か月生存中である.本邦における大腸癌由来転移性膵癌切除の報告は自験例を含め42例であり,臨床的特徴について検討した.原発巣は直腸に多く,リンパ節転移陽性例が多かった.転移性膵癌は27例が膵体尾部にあり,17例がリンパ節転移を伴っていた.膵切除後15例は1年を超える生存が得られている一方で,1年以内に21例に他臓器再発を認め8例が死亡していた.術前に十分な全身検索を行ったうえで,根治切除,術後化学療法が有用である可能性があると思われた.
  • 張 丹, 宮田 完志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 田畑 光紀, 小林 陽一郎, 藤野 雅彦, 河田 健司
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 749-757
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
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    症例は33歳の女性で,2歳時にPeutz-Jeghers症候群と診断され4回の開腹手術歴がある.腹部膨満感を主訴に当院婦人科を受診した.CTにて多量の腹水と右卵巣腫瘍を認め,腹水細胞診で腺癌細胞を認めたため,卵巣癌,腹膜播種の診断で手術が施行された.開腹時,Treitz靱帯より100 cm肛門側の空腸に腫瘍を認めたため,右付属器摘除に加えて小腸部分切除を行った.小腸腫瘍は漿膜に露出する長径6 cmの亜有茎性乳頭状腫瘍で,病理組織学的に過誤腫,腺腫,腺癌の混在する小腸癌であった.右卵巣腫瘍は小腸癌の腹膜播種性転移と診断した.Peutz-Jeghers症候群に合併した小腸癌切除の本邦報告例は自験例を含めて12例で,その多くで小腸ポリープからの癌化が示唆された.Peutz-Jeghers 症候群の患者では消化管ポリープの癌化,他臓器癌の可能性を念頭においた厳重な経過観察を行うべきである.
  • 野村 聡, 塩谷 猛, 渋谷 哲男, 渡邉 善正, 南部 弘太郎, 内間 久隆, 鈴木 英之, 内田 英二
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 758-765
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    症例は83歳の男性で,間歇的腹痛を主訴に近医受診するも改善なく当科紹介となった.腹部CTで小腸の拡張と水平鏡面像を認め,虫垂切除術の既往から癒着性イレウスの診断で入院となった.保存的加療で軽快するも,第9病日に腹痛,嘔吐が出現し,イレウスが再燃した.保存的加療での改善は困難と考え,手術を行った.回盲部より約60 cmの回腸に全周性狭窄があり,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見より,小腸原発非特異型末梢性T細胞性リンパ腫と診断した.術後補助化学療法として低用量CHOPを2コース施行し,退院後2年間,再発を認めていない.小腸原発T細胞性リンパ腫の本邦報告例は自験例を含め58例と比較的まれであり,そのうち非特異型末梢性T細胞性リンパ腫は4例であった.今回イレウスを契機に発見された小腸原発T細胞性リンパ腫を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 神 康之, 蓮尾 公篤, 山田 貴允, 韓 仁燮, 熊頭 勇太, 前澤 幸男, 利野 靖, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 766-771
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    症例は59歳の男性で,透析のため来院した際に腹痛を訴えたため,精査を行った.腹部超音波検査で虫垂に憩室を認め,虫垂憩室炎と診断した.虫垂切除術を施行した.術後経過は良好で,第5病日に退院した.病理組織学的検査の結果も虫垂憩室炎であった.虫垂憩室炎は比較的まれな疾患とされており,術前に急性虫垂炎と鑑別することは困難とされている.しかし,虫垂憩室炎という疾患を念頭に置いて慎重に超音波検査を行えば,診断率を高めることは可能であると思われた.
  • 青笹 季文, 森田 大作, 岡 敦夫, 帖地 憲太郎
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 772-777
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    我々は2011年WHO分類でmixed adenoneuroendocrine carcinoma(以下,MANECと略記)に相当する虫垂原発腺内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は48歳の男性で,急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行,神経内分泌化の傾向を有する虫垂腺癌と診断したため回盲部切除を再施行,追加切除標本には病理組織学的に腫瘍細胞の遺残などを認めなかった.再手術から3年6か月後,腹水貯留および腫瘍マーカーの上昇を認めたため腹水穿刺を施行,腹水中の腫瘍細胞が虫垂の腫瘍細胞と類似していたため免疫組織染色を行った結果,両者共にCD56(+),synaptophysin(+)であり,虫垂腺内分泌細胞癌を原発とする腹膜再発と診断した.虫垂原発内分泌細胞癌は非常にまれで,我々が検索したかぎりでは本邦では6例しか報告されておらず,文献的考察を加えて報告する.
  • 小松 聖史, 隈元 謙介, 今泉 英子, 石井 正嗣, 幡野 哲, 石橋 敬一郎, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 778-784
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    症例は18歳の男性で,腹痛を主訴に前医受診し,精査加療目的に当科紹介入院となった.腹部所見では,右下腹部に軽度圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.腹部単純X線で右上腹部から下腹部に集簇する異常ガス像を呈していた.造影CTで,右側結腸にmultiple concentric ring signを認め,腸重積の診断にて同日緊急手術を施行した.手術所見では順行性回結腸型の腸重積を認め,整復後,先進部の盲腸から上行結腸に多発する弾性軟の浮腫状の腫瘤を触知し,回盲部切除を行った.切除標本には,粘膜下に多発する含気性囊胞を認め,病理組織学的に腸管囊腫様気腫症と診断した.腸管囊腫様気腫症の発症にはさまざまな原因が報告されているが,本症に伴う腸重積は,若年世代での報告が散見され,実地臨床で念頭におく病態と考えられる.腸管囊腫様気腫症の臨床的特徴や腸重積との関連について文献的考察を加え報告する.
  • 兼子 晋, 松井 郁一, 三木 健司, 森田 恒治, 照屋 正則, 上西 紀夫
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 785-793
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    Clostridium difficile colitis(以下,CDCと略記)は院内感染性腸炎の原因として近年増加している.しかしながら,発症から急激な経過で感染性ショックに至る劇症型CDCの存在は十分に周知されてはいない.症例1は69歳の女性で,発熱と腹痛を主訴に来院し腸重積の疑いで緊急手術.術翌日に心肺停止,解剖病理でCDCによる中毒性巨大結腸症の診断.症例2は63歳の男性で,腹痛と発熱,腹部膨満感が出現し下行結腸癌による閉塞性腸炎の診断で緊急手術.術直後からCDCによるショックのため集中治療施行し救命.症例3は61歳の男性で,S状結腸癌による膀胱浸潤に人工肛門造設.術後にCDCによる感染性ショックで集中治療施行し救命.劇症型CDCといえども,早期には腹痛や発熱などの非特異的症状が発症のサインであり,下痢症状は中毒性巨大結腸症の増悪による終末像と考えられた.早期診断によるバンコマイシン経腸局所投与が救命に重要である.
  • 中尾 寿宏, 篠原 永光, 豊田 剛, 木下 貴史, 吉田 禎宏
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 794-800
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    症例は54歳の女性で,47歳時に原発性胆汁性肝硬変による肝不全に対し,生体肝移植を施行後,免疫抑制剤を投与されていた.53歳頃より血便が出現し,CTにて直腸S状部に壁の肥厚,大腸内視鏡検査にて直腸S状部にBorrmann 3型腫瘤を認め,生検の結果,中分化型腺癌と診断された.高位前方切除術,リンパ節郭清を施行した.病理組織診断は,pSS,pN1,Cy1,INFb,ly1,v1,pPM0,pDM0,pRM0,Stage IIIaであった.術後,合併症なく経過し,術後第10病日に退院した.免疫抑制剤の減量は行わず,補助化学療法としてmFOLFOX6を6クール施行後,UFT内服を継続したが,術後3年2か月目に外傷性肝損傷による肝腎不全により死亡した.今後,肝移植症例,長期生存例が増加するにつれて,肝移植患者における悪性腫瘍発症の増加が予想され,適切な経過観察が必要である.
  • 山本 梓, 隈元 謙介, 石橋 敬一郎, 石畝 亨, 岡田 典倫, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 801-808
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    ワルファリンカリウム内服中に上腸間膜静脈および門脈血栓症を発症したプロテインC欠乏症の1例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,プロテインC欠乏症による深部静脈血栓症,肺梗塞の既往がありワルファリンカリウム内服中であった.腹痛にて前医受診し,精査目的に当科紹介入院した.腹部CTで上腸間膜静脈と門脈に広範な血栓形成を認め,小腸壊死が疑われ緊急手術となった.Treitz靭帯から20~80 cmの小腸にうっ血を伴う浮腫性変化と腸間膜内静脈に血栓を認め,同部の腸管切除と,口側人工肛門,肛門側粘液瘻を造設した.血漿プロテインC活性は34%と低下していた.術後,抗凝固療法としてウロキナーゼ,ヘパリンを投与し,経腸栄養開始後,経口よりワルファリンカリウム内服に移行した.術後74日目に人工肛門閉鎖術を施行し,術後2年10か月現在,ワルファリンカリウム内服継続にて血栓形成による症状は認められていない.
  • 武田 佳久, 安田 誠一, 寺村 康史, 橋田 修平, 赤松 信
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 7 号 p. 809-815
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー HTML
    症例は40歳の男性で,腹痛を主訴に来院した.腹部CTにて多発腫瘤による小腸イレウスと腹水を認め,絞扼性イレウスも否定できないため緊急手術を施行した.臍直下の大網辺縁に膿苔を伴い小腸を圧迫する径4.5 cm大の腫瘤を認め,腫瘤切除を行い,イレウスを解除した.また径5 cm大の腫瘤を小網にも認め,切除を行った.さらに,大網,小網,腸間膜表面に多数の白色小結節を認めた.摘出された腫瘤は,大網部が5.0×3.5 cm,小網部が5.0×4.6 cmで両者とも表面は多結節様の腫瘤であった.腫瘤の病理組織学的検査では,大網,小網原発のinflammatory myofibroblastic tumor(以下,IMTと略記)と診断され,多数の白色結節は炎症性腫瘤であった.本邦で大網,小網を原発とする多発性IMTは極めてまれであり,腸管外原発でイレウスにより発見された症例は検索した範囲内で自験例が初めてであった.
訂正
  • 2012 年 45 巻 7 号 p. 816
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    日本消化器外科学会雑誌Vol. 45 (2012) No. 7 p. 724-731 大野 吏輝ほか著「胆道気腫を契機に診断された十二指腸原発T/NK cell lymphoma の1 例」におきまして,誤りがございましたので,お詫びとともに下記のとおり訂正いたします.
    p. 724
    《誤》 現病歴:2010 年8 月上旬より腹痛が出現し近医を受診した.
    《正》 現病歴:2009 年8 月上旬より腹痛が出現し近医を受診した.
    p. 728 Fig. 6 図説
    《誤》 Histological findings: histochemical staining (×20). A: Immunostaining for CD20 was negative. B: Immunostaining for CD3 was positive. C: Immunostaining for TIA-1 was positive.
    《正》 Histological findings: histochemical staining (×20). A: Immunostaining for CD3 was positive. B: Immunostaining for CD20 was negative. C: Immunostaining for TIA-1 was positive.
    p. 730
    《誤》 ……1 手術例を経過した.本疾患は比較的新しい概念の範疇であり,……
    《正》 ……1 手術例を経験した.本疾患は比較的新しい概念の範疇であり,……
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