日本消化器外科学会雑誌
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49 巻, 2 号
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原著
  • 赤井 隆司, 遠藤 健, 豊島 明, 天野 隆晧
    原稿種別: 原著
    2016 年 49 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     目的:Bevacizumab併用化学療法を行った切除不能進行再発大腸癌症例を対象に,消化管穿孔の危険因子を検討する.方法:2007年7月から2012年12月までに当院でBevacizumab併用化学療法を開始した切除不能進行再発大腸癌症例195例をレトロスペクティブに解析した.消化管穿孔の危険因子を単変量,多変量ロジスティック回帰分析により検索した.結果:消化管穿孔は7例(3.6%)に認めた.単変量解析では,直腸癌(オッズ比4.933,95%信頼区間1.061~22.947),放射線照射既往(オッズ比39.120,95%信頼区間4.518~338.691)の二つの因子が統計学的有意(P<0.05)に消化管穿孔の発生と関連していた.多変量解析では,放射線照射既往のみが独立して有意な因子であり,照射既往ありの調整オッズ比は34.831(95%信頼区間3.566~340.204)であった.結語:放射線照射症例に対するBevacizumab投与は慎重に行われるべきであると考えられた.
  • 斎藤 祥, 村上 雅彦, 山崎 公靖, 大塚 耕司, 冨岡 幸大, 有吉 朋丈, 渡辺 誠, 藤森 聰, 青木 武士, 加藤 貴史
    原稿種別: 原著
    2016 年 49 巻 2 号 p. 84-91
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     目的:胃癌に対する腹腔鏡下胃切除症例におけるドレーン留置の有無が,術後合併症,術後在院日数に影響を与えうるかを検討した.対象と方法:対象は1999年9月から2013年11月までに当科で施行した腹腔鏡下胃切除(腹腔鏡補助下幽門側胃切除,腹腔鏡補助下幽門保存胃切除,腹腔鏡下幽門側胃切除,腹腔鏡下幽門保存胃切除)266例をドレーン留置群(以下,D群と略記)102例,ドレーン非留置群(以下,ND群と略記)164例に分類し,術後合併症と術後在院日数について後方視的に検討した.結果:術後合併症の発生率はD群では13.7%であったの対し,ND群で12.2%であり両群間に有意差を認めなかった(P=0.7162).術後在院日数は,D群で15.4日であったのに対し,ND群で13.5日でありD群で有意に長かった(P=0.014).合併症を発生した症例では両群間で術後在院日数に有意差を認めなかったが,合併症を発生しなかった症例ではドレーン留置群で有意に術後在院日数が長かった(P=0.0036).結語:腹腔鏡下胃切除術において,画一的なドレーン留置による術後合併症軽減への影響は依然議論の残るところではあるが,ドレーン留置は術後在院日数の延長に影響を及ぼす可能性があることが示唆された.
症例報告
  • 松本 尊嗣, 野村 幸博, 永井 元樹, 田中 信孝
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     症例は75歳の男性で,C型慢性肝炎にて内科通院中にスクリーニングにて施行された腹部超音波にて肝S7に95 mm大の腫瘤を認め,また左葉優位だが両葉に肝内胆管の囊胞状拡張を多数認めた.ダイナミックCTにても肝S7に早期濃染,後期wash outされる巨大腫瘤を認め,肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)の術前診断にて右肝切除術を施行した.肉眼的に,割面ではS7を中心に11 cm大の内部壊死を伴う白色で境界明瞭な腫瘤を認め,背景肝には門脈域の繊維性拡大とともに囊胞状に拡張した胆管を認めた.病理組織学的に腫瘍は偽腺管様構造を形成する異型上皮の密な増殖からなり,核の大小不同,多型性が高度で一部で索状構造が不明瞭な中分化型肝細胞癌であった.拡張した胆管は異型性のない上皮細胞に裏装されており,Caroli病として矛盾しない所見であった.以上から,Caroli病に合併した巨大肝細胞癌と診断した.
  • 吉田 佐智子, 大原 忠敬, 押切 太郎, 千堂 宏義, 杉本 武巳, 藤野 泰宏, 富永 正寛
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     先天性心疾患に対する手術としてFontan手術が選択されるが,術後に慢性的な心拍出量の低下と血流鬱滞による肝障害が生じることが問題視される.肝細胞癌の合併例の報告も散見されるが切除例の報告は少ない.今回,我々はFontan手術後の鬱血肝を背景に発生した肝細胞癌の手術症例を経験したため報告する.症例は34歳の男性で,先天性三尖弁閉鎖症に対して幼少期の手術を経て19歳時にFontan手術を受けたが,術後15年目に肝S3に肝細胞癌を指摘された.肝S3部分切除術を施行したが,肝臓の線維化は術前の評価以上に進行しており,肝流入血遮断下に切除したもののFontan循環の影響により肝静脈の鬱血を来しており静脈性出血のコントロールに難渋した.肝線維化マーカーは正常であったが,背景肝はF3であった.Fontan手術後の肝細胞癌の症例に対しては,特殊な循環動態を含めた病態を理解したうえで手術に臨む必要がある.
  • 間野 洋平, 副島 雄二, 本村 貴志, 中西 良太, 藤中 良彦, 西田 康二郎, 高橋 郁雄, 西﨑 隆
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     症例は56歳の男性で,総胆管結石を伴った総胆管瘤と診断された.ERCPと内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphinc terotomy;以下,ESTと略記)による採石と開窓を試みるも総胆管瘤から胆管へのカニュレーションが困難であった.開腹下に総胆管切石と,術中ERCPによるランデブー法を用いたESTにより瘤の開窓を行った.総胆管瘤の治療は,本症例のように内視鏡的治療が困難な症例では,開腹下に術中内視鏡を併用したESTを行うことも有用であると考えられた.
  • 青山 広希, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 宮田 完志, 藤野 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     症例は57歳の女性で,上腹部痛と黄疸を主訴に当院を受診した.膵頭部腫瘤による閉塞性黄疸と診断され,CTでは膵頭部に乏血性で遅延性濃染を示す径30 mmの腫瘤と,その左側に隣接して径10 mmの内部低吸収で周囲が早期濃染を示す腫瘤を認めた.造影超音波内視鏡検査では膵頭部に低エコーの乏血性腫瘤と,それに接して周囲が造影される無エコー領域を認めた.膵頭部癌と貯留性囊胞あるいは膵内転移の囊胞変性と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織学的に膵頭部の径27 mmの充実性腫瘤は中分化型管状腺癌,その病変に接する径13 mmの内部が囊胞化した腫瘤は高分化型神経内分泌腫瘍で,二つの腫瘍は衝突していた.膵内に膵外分泌腫瘍細胞と内分泌腫瘍細胞が存在する「広義の膵併存腫瘍」の1亜型として衝突腫瘍の存在を認識して,診断や治療にあたるべきである.
  • 岩田 至紀, 夏目 誠治, 千田 嘉毅, 伊藤 誠二, 小森 康司, 安部 哲也, 清水 泰博
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     通常型膵癌術後に発症した残膵癌の4切除例を報告する.膵癌取扱い規約第6版に基づく初回病変の組織学的深達度はT3が3例,T4が1例で,リンパ節転移は2例に認めた.病期はIIIが2例,IVaが2例であった.初回手術から残膵病変出現までの期間はそれぞれ2年,2年5か月,4年6か月,8年4か月であった.術式は,膵体尾部切除後の残膵全摘が2例,膵頭十二指腸切除後の残膵全摘と膵尾部切除(膵体部温存)がそれぞれ1例であった.1例は残膵に2病変を認めた.残膵病変の発生要因は,新規病変(異時性膵癌)と初回病変の再発(断端再発,残膵再発)の鑑別が重要と考えた.3例に遺伝子検査を行い,その変異形式から残膵再発と診断した.遺伝子検査が得られなかった1例は,残膵病変切除までの期間が8年4か月と長期間であり,組織型も異なっていたので異時性膵癌と診断した.
  • 原 明弘, 福永 潔, 高野 恵輔, 橋本 真治, 小田 竜也, 菅野 雅人, 野口 雅之, 古西 崇寛, 那須 克宏, 大河内 信弘
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     症例は49歳の女性で,B型慢性肝炎を背景とした肝細胞癌に対して7年前から肝切除,TAE,ラジオ波焼灼療法を受けており,経過中に食道静脈瘤に対する内視鏡的治療が行われていた.また,子宮全摘術の既往があった.今回,下血と嘔吐を主訴に来院した.経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡にて回腸静脈瘤出血と診断された.ヨードアレルギーのため造影CTや血管造影を行うことができなかった.開腹手術にて静脈瘤を含む回腸の部分切除を行い,以後出血を認めていない.回腸静脈瘤はまれな疾患であるが,発症の危険因子として腹部手術の既往や食道静脈瘤の治療既往などがあり,診断に際して有用である.また,近年,小腸内視鏡やカプセル内視鏡が用いられるようになり,これまで行われていたCTや血管造影検査を上回る診断能を有する.治療については手術が確実であり,安全な手術のためには回腸静脈瘤の血行動態を念頭に置くことが重要である.
  • 大江 正士郎, 八木 俊和, 安東 勝宏
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     腸間膜に発生する血管原性腫瘍はまれである.症例は70歳の女性で,大腸早期癌に対する内視鏡的粘膜切除術後の定期検査で腹部造影CTを施行した際,空腸間膜に55×77 mm大の腫瘤を認めた.腫瘤は造影早期から急速に造影され,後期まで血管と同程度に造影された.また,拡張した栄養血管も描出され,血管性腫瘍の診断であった.S状結腸からの超音波内視鏡検査では,腫瘍内部に血流を認めなかった.以上により,小腸間膜血管腫の診断で,腹腔鏡補助下に小腸部分切除術を施行した.腫瘍径は8×7×6 cm,充実性,弾性軟で,割面は暗赤色を呈し,病理組織学的診断は血管腫であった.小腸間膜血管腫の本邦報告例は自験例を含めて26例である.平均年齢は36歳,平均腫瘍径は15.2 cm,主訴は腹痛,腹部膨満,出血である.我々の症例では,造影CTの特徴的な画像所見に加えて,栄養血管が明瞭に描出され,術前診断が可能であった.
  • 田中 征洋, 山本 聖一郎, 大城 泰平, 藤田 伸
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
    ジャーナル フリー HTML
     症例は13歳の女性で,右下腹部痛を主訴に前医を受診し,急性虫垂炎の診断で虫垂切除術が施行された.病理組織学的に壊疽性虫垂炎とともに虫垂カルチノイドを認めた.腫瘍径は6 mmでリンパ管侵襲を伴い,追加手術の必要性の検討目的に当院を受診した.腹部CTでは回盲部のリンパ節腫大を認め,虫垂カルチノイドのリンパ節転移を疑い,D3郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.病理組織学的にはリンパ節転移は認めなかった.虫垂カルチノイドは全消化管カルチノイドの約10%と比較的まれな疾患である.術前診断は困難で,術後の病理組織学的検査で診断されることがほとんどである.リンパ節郭清を伴う追加切除の適応は腫瘍径が2 cm以上とされ,腫瘍径が1 cm以下では一般には経過観察となる場合が多い.本症例ではリンパ管侵襲を伴い,画像上リンパ節転移が疑われたので追加切除を施行した.
  • 村田 哲洋, 天野 良亮, 木村 健二郎, 山添 定明, 大平 豪, 西尾 康平, 平川 弘聖
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 152-160
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
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     von Recklinghausen病(以下,VRDと略記)はさまざまな消化管の腫瘍性病変を合併することが知られている.我々は,VRDにソマトスタチン産生十二指腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)と空腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)が合併したまれな1例を経験したので報告する.症例は63歳の女性で,検診の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸乳頭部の口側近傍にびらんを一部に伴った隆起性病変を指摘された.腹部CTでは造影効果を受ける2 cm大の腫瘍であった.生検の結果は十二指腸NETであり,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行った.術中,空腸に1.5 cm大の腫瘍を認め,同時に小腸部分切除術を施行した.術後病理組織学的検査にて十二指腸腫瘍はソマトスタチン染色陽性のNET,小腸腫瘍はGISTと診断された.
  • 相崎 一雄, 河野 悟, 木村 友洋, 佐々木 一憲, 若林 正和, 藤平 大介, 小池 卓也, 船津 健太郎, 保刈 岳雄, 風間 暁男
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 49 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2016/02/01
    公開日: 2016/02/23
    ジャーナル フリー HTML
     症例は57歳の女性で,腹部膨満感,下腹部痛を主訴に来院した.腹部CTで骨盤内に長径10 cm大の内部不均一な腫瘍を認め,小腸浸潤による完全閉塞を呈していたため手術となった.術中所見では小腸が腫瘍に巻き込まれており,腫瘍の一部が破裂しムチン様内容物の流出が認められた.腫瘍を含めた小腸部分切除を行ったが骨盤腔内の全ての腫瘍を切除することはできなかった.組織学的に胎児型横紋筋肉腫で,術後残存する腫瘍に対し,化学療法としてvincristine,actinomycin D,cyclophosphamide併用療法(VAC療法)とifosphamide,etoposide併用療法(IE療法)を施行し画像上一時期部分寛解となったがその後急速に腫瘍が進行し敗血症で死亡にいたった.極めてまれな成人発症の骨盤内横紋筋肉腫の症例を経験したので報告する.
編集後記
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