14)
ヨシナガクロウロコゴケ(新稱)なる名稱は初めて本種を採集された吉永虎馬氏(高知)を記念したものである。基本種は印度, セイロン, スマトラ, ジヤワ, マライ, ボルネオ, フイリツピン, ニユー•ギニー, ニユー•カレドニヤ, サモア, タヒチ等廣く分布し, 相當變化に富む大きな種である。
15)
ウロコゴケは從來
Chiloscyphus 屬に入れてあつたが, SCHIFFNER(1910)は
Heteroscyphus屬を新設し, 雄花が莖の腹面より生ずる短枝に着き, 苞葉は數對密生して穗状をなす種類を之に移した。此等の種は總て熱帶性で葉縁に齒牙を有するものが多い。筆者もこれに全く同意見である。
16)
オホウロコゴケは前述の理由により屬を移した。本種は本邦に極めて普通なる種にも拘らず未だ圖説せるものがなかつたので略圖と簡單なノートを附した次第である。
17)
ツクシウロコゴケも從來
Chiloscyphus 屬を用ひたものが多かつた。本種も本邦南部に普通な種であるが未だ圖示せるものがなかつた。
18)
マスハブシユカンゴケの新品種を圖説記載した。基本種もSTEPHANI(Spec. Hepat. II, 135. 1902.)により本邦(確實な産地不明)より報告されて居るが, 或は歐洲産の基本種よりも寧ろ本品種に入るべきものかも知れない。
19)
コマノキリシマゴケは朝鮮(詳細な産地不明)より記載されて以來, 疑問のまゝに止つて居たものであるが, 京都帝大小泉源一教授の好意により理學部植物學教室所藏のFAURIE採集の恐らくは原標本と考へられる標本を研究する事ができた。
20)
ミヤコゼニゴケ(新稱)なる名稱のもとに
Mannia fragrans (BALB.) FRYE et CLARKの新品種を記載及び圖説した。基本種も亦SCHIFFNER(in Oesterr. Bot. Zeitschr. XLIX, 387. 1899.)により三宅驥一博士の採品に基いて東京より報告された[但し
Grimaldia fragrans (BALB.)CORDAなる名稱を用ひてある]。以上の兩者は同一であり, SCHIFFNER は乾燥標本で研究したため, 新鮮な状態に於ても無臭な點が不明であつたと想像される。因に歐洲にも稀に無臭のものがあるが(
Grimaldia inodora WALLR. in LINNAEA XIV, 686. 1840.-現在
M. fragrans の變種又は異名となつて居る), 東京産の植物は其の他の點でも少しく異なる所があるのでそれとは別に新品種とした次第である。
21)
ドクダミゼニゴケ(新稱)は
ドクダミそつくりの臭ひがあり之は相當強く, 乾燥した葉状體でも水に浸し少しもんで嗅ぐとやはり臭ひがする。其の他雌器托の扁平な事, 柄の極めて短い事も他に見られない特徴である。花被は著しくない。
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