細菌, カビ, 高等植物のコンニャクマンナン分解利用の研究が行なわれてきたが, これに引ぎ続ぎ放線菌による利用に関する研究を行なった.
15種に属する17菌株を供試し, コンニャクマンナンを唯一炭素源として培養した結果は, 信夫改変培地 (A) とブイヨンコンニャク培地 (C) とによく生育し, 升本改変培地 (B) には劣った発育を示した. 発育の菌株順位は大体, つぎのとおりである. Q>A,F,L,N,P,D,H,I>C,K>E,G,M,O,J>B (第1図参照).
コンニャク添加培地は固体の観を呈し, 放線菌発育に伴って, 液化をおこしてくる. 液化の菌株順位は次のようである.L,M,C>F,N,P,K,Q>A>D,E,G,H,I,J,O (第3図参照).
発育, 液化の両菌株順位が一致しない事実は, マンナーゼ産生能が菌株によって, 相違することを物語っている.
細菌の種類鑑別にコンニャク液化性を利用したことがあるので, 市販のコンニャク切片の断面上に放線菌を接種した. その結果, いろいろな程度の発育と液化が観察されたことから見ると, ゼラチン液化と同じように, 同定上の性質として用いることができると思われた (第4図参照).
培養中のマンナン分解の進行は,
S. fradiae をつかって追跡した. なお放線菌の発育には長い時日を要するので, 振盪培養を行なって, その短縮を図った. コンニャクマンナンの0.1-2%添加培地は固体状なので, 元のマンナンと化学性を等しくし, ただ粘度だけ低いコンニャクマンニンを代用して, 振盪培養を実現させた. 最大菌糸体を得るのに静置では2週間以上を要するのに対し, 振盪培養では3-4日でその状態に達した. 液中にピレット状をなして繁殖した.
分解生産物である糖類としてはマンノース, ブドウ糖がフェニルヒドラゾン, オサゾンとして, またべーパークロマト法で確認された. 後の方法では二糖類, 三糖類らしい少糖類も検出された.
生体外のマンナン分解をしらべたところ, 培地ろ液に大部分のマンナーゼが分泌されて, 菌体には少量が残留するにすぎない. 培養中の酵素作用を追跡すると, 静置においては40日後においても作用の増加が認められた.
炭素源のマンナーゼ生産に対する作用をしらべた結果は, コンニャクマンナンのみがマンナーゼを誘起する. ニュウ糖, ショ糖, デンプンに皆無, ブドウ糖, バクガ糖にわずかの作用が認められたにすぎない. 窒素源, pHの作用も検した (第1表, 第2表参照).
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