ベルバスコースは従来ビロウドモウズイカ (
Verbascum thapsus L.) の根の少糖類として知られ,しょ糖のグルコース側に3分子のガラクトースが結合している。1954年 Hérissey らはこれに近い種とみられる
V. thapsiforme Schrad の根がラフィノース型の高級少糖類を数多く含んでいることを見出し, 四糖類 (スタキオース) から八糖類までをそれぞれ分離し, いくつかの実験からこれらが一般に, (O-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6))
n-O-α-D-グルコピラノシル-(1→2)-β-D-フラクトフラノシドと表わされることを示した。
一方たまたま同じころ, われわれも独立にビロウドモウズイカの少糖類を研究していた。そして同様に多くの高級少糖類を見出し, これらをペーパークロマトグラフィーで展開し, いずれも非還元性でケトースを含むこと, および分配凾数の値ど重合度との関係から, ラフィノース-スタキオースの系列に入る同族少糖類であることを推定した。またろ紙から単離して完全•部分加水分解を行った結果は上の推定をいっそう確実にした。つぎにこれらを純粋に分離することを試み, アルコール抽出液から活性炭セライト吸着クロマトグラフィーにより, スタキオース, (2Ga-G-F, 結晶), ヘプタオース, (5Ga-G-F, 無晶形, 237-9°,封管中, 分解), オクタオース, (6Ga-G-F 結晶, 252°, 封管中, 分解), ノナオース (7Ga-G-F, 結晶)をそれぞれ分離することができた。
またこの植物の種々の生育段階の各部分について糖類の分布を調べた。その結果, 高級少糖類は地上部より地下組織に多く, 単糖類は地上部に多く分布していることを観察した。また茎に遊離のガラクトースおよびマンニノトリオースが比較的多量に存在することは興味ある事実である。
高級少糖類のペーパークロマトグラフィーの溶媒には, ピリジン-ブタノール-水 (1:1:1.5, V/V) がよい結果を与える。
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