植物学雑誌
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71 巻, 845-846 号
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  • 倍数性と開花期ならびに生長率との関係
    神野 太郎
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 359-365
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) 筆者は日本産キイチゴ属数種の開花期について観察し, また枝のさし木繁殖法で冬芽の開舒の時期, 葉の発育および発根について研究した。その結果, これらの現象が倍数性と深い関係のあることがわかった。
    2) 同一圃場に栽培したキイチゴ属15種について開花期の観察を行なった。この観察結果によると, 同一花序をもつキィチゴ属植物では, 一般に倍数体の開花期は2倍体よりもおそく, わけてもMalachobatus亜属に所属する8倍体の開花期は, 他種からとくにおくれる。そのためこれら8倍体は他種から生理的に隔離されており, 筆者の現在までの調査によると, これら8倍体と他種との間の自然雑種はみいだされない。
    3)枝のさし木実験の観察によると, 2倍体は倍数体よりも芽の開舒時期がはやく, また2倍体の葉の生長は初期に倍数体よりも速かであった。多くの2倍体では葉の発育がさし木後50日目頃より急に低下したが, 倍数体の葉は2倍体よりも長い期間発育が持続された。それ故この実験の終りには, ある倍数体は葉の発育が2倍体よりもまさってきた。
    4) 倍数体のさし木の発根状態は, 一般に2倍体におけるよりも良好であった。このことはさし木実験の後期に倍数体の葉の発育が2倍体よりもよいことの原因の一つと考えられる。
  • II. 原形質分離で遊離した葉緑体での実験
    植田 利喜造
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 366-370
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    前報では超音波作用で生細胞の液胞内に遊離した葉緑体の生存力や機能について報告したが, それに関連して, ここでは他の方法で葉緑体を遊離した場合について研究した。その大要は次のごとくである。
    1. 原形質分離によつてオオカナダモの葉緑体は母原形質から遊離することができた。これらの遊離葉緑体で光合成によるデンプン形成が証明された。
    2. 遊離葉緑体の光合成はカルシウムイオンの存在で促進された。
    3. 遊離葉緑体の光合成能に関連して葉緑体の自律性について考察した。
  • 豊田 清修
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 371-377
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. 池の泥の中から採集した古いハスの果実の中に含まれているガスを, 流動パラフィンと置換することにより, 注射器で捕集した。
    2. このガスを注射器, ミクロピペットなどを用い, 吸収法に基づく筆者独自の方法て分析した。
    3. 新しい果実に含まれているガスも分析した。この結果, 新しい果実では古い果実に比して炭酸ガスが多くて酸素が少ないことがわかった。しかし, 新しい果実に含まれているガスを毎月分析してみると, 時の経過によって変化が見られ, 炭酸が減少, 酸素が増加し,数カ月たつと, 古い果実とほぼ同じ比率をもつようになった。
    4. 0°,30°と60°の各温度における果実内のガス組織の変化をみると, 0°では炭酸ガスは減少したあと増加する傾向があり, 酸素は一般に減少した。30°では炭酸ガスは減少したあと増加し, 配素は少し増加した。60°では炭酸ガスはかなり増加し, 酸素は減少した。
    5. 60°にある期間おいてあと流動パラフィンにつけた果実をみると, 果皮よりガスの放出はみられない。これらの果実内のガスを分析した結果, 炭酸ガスは減少し, 酸素は増加するというきわめて注目すべき結果が現われた。
  • 志平 依久子
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 378-385
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    緑藻ヒトエグサで細胞内に形成された配偶子に活性が与えられるためには, 暗期とこれにつづく光期が必要であった。暗期の長さは配偶子の熟度が進むほど短縮されついに不必要になる。中間に光期をそう入して全体が放出にじゅぶんな長さになるように暗期を与えてもその効果はあらわれなかった。すなわち断続的な暗期は加算ざれず, 不十分な暗期の効果は光によって消される。暗期につづく光期は暗期の長さや照度に関係があるが, 暗期がじゅぶん長いときには400lux, 1秒でまったく効果をあらわし, いちじるしい光感性をしめした。なおこの光効果は, 500mμ 以下の短波長光でもたらされ, それ以上の波長の光は闇とまったく同じ効果をあらわした
    配偶子の活性化は, 暗反応-青色光以外の光下でおこなわれる metabolicな反応-とこれが完成したときに続いておこる光反応-青色光による光感反応-の二つからなることが推測された。このような闇と光のつ二の反応からなる現象は高等植物において, ことに花芽形成や種子の発芽において認められた現象ときわめてよく類似するものとおもわれる。有効波長については高等植物ではがいしてこの逆の場合が多い。Ingold & Dring (1957) によれば, 子のう菌 Sordaria の胞子放出には, 闇と光が必要で, 青色光がもっとも有効である。上記のように, ヒトエグサの配偶子の活性化における光効果はこの Sordaria の場合と共通性がみられる。
  • 大沢 義信
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 386-407
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    蛋白分解酵素に対するクロロフィリンの影響に関する研究は少なく, わずかに Wasielewski 等, およる Zirm 等の報告が見られるが, 両者の結果は一致していない。このことは用いられた酵素源のちがうこと, 純化されていない資料を用いたことによると思われる。筆者は結晶トリプシン, および3種の結晶クロロフィリンを用い, カゼインのトリプシンによる分解に対するクロロフィリンの影響をしらべた。その結果: (1) Cu-, Fe-およびMg-クロロフィリンはいずれもトリプシンの作用を阻害すること, (2) これらの作用は対応する金属だけの作用に比しはるかに大きいこと, (3) クロロフィリンとトリプシンとの pre-incubation がこのさい重要であり, 両者の反応は一次反応によること (4)分光化学的研究によリクロロフィリンとトリプシンの複合体が形成されること, (5) かかる複合体の形成は酵素の失活を来たすが, それは酸や, 硫酸アンモン処理により賦活されること, (6) 複合体はクロロフィリンの金属部と酵素のイミダゾール部にて結合形成されるこの (7) クロロフィリンの作用は拮抗阻害であること, (8) クロロフィリンの作用はトリプシンの促進剤であるCaCl2やある濃度の硫酸アンモンによって弱められること (9) ある条件下でクロロフィリンの作用がトリプシン阻害剤によってかえって弱められることがあるが, オレイン酸等によっては逆に相乗的効果が認められること (10) クロロフィリンはトリプシンの自己融解を遅延させること, (11)クロロフィリンは紫外線によるトリプシンの変性に対し安定化剤として作用するように思われること, を明らかにした。
  • 鯨井 忠五, 今村 駿一郎
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 408-416
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1) 発芽当日のアサガオの子葉は暗期に感応しないが, 翌日から強い感応性を示し, その限界暗期は成体と同じく8ないし9時間である。
    2) 子葉の一部を切りさってその面積を制限すると, 面積が小さいほど日長反応は弱くなる。
    3) 暗期を与えたのち子葉を除けば, 反応は弱くなるが, 除去する時期が遅れるほど花芽数は増加する。
    4) 一子葉が暗期を受けている間に他の子葉が光を受けているとき日長反応は弱くなる。
    5) 主軸を除いた芽生に暗期を与えると花芽は子葉の腋芽に現われる。暗期を与えたのちで主軸を除くと子葉腋芽に現われる花芽数はいちじるしく減少する。
  • 服部 静夫, 畑中 信一
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 417-424
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    ベルバスコースは従来ビロウドモウズイカ (Verbascum thapsus L.) の根の少糖類として知られ,しょ糖のグルコース側に3分子のガラクトースが結合している。1954年 Hérissey らはこれに近い種とみられるV. thapsiforme Schrad の根がラフィノース型の高級少糖類を数多く含んでいることを見出し, 四糖類 (スタキオース) から八糖類までをそれぞれ分離し, いくつかの実験からこれらが一般に, (O-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6))n-O-α-D-グルコピラノシル-(1→2)-β-D-フラクトフラノシドと表わされることを示した。
    一方たまたま同じころ, われわれも独立にビロウドモウズイカの少糖類を研究していた。そして同様に多くの高級少糖類を見出し, これらをペーパークロマトグラフィーで展開し, いずれも非還元性でケトースを含むこと, および分配凾数の値ど重合度との関係から, ラフィノース-スタキオースの系列に入る同族少糖類であることを推定した。またろ紙から単離して完全•部分加水分解を行った結果は上の推定をいっそう確実にした。つぎにこれらを純粋に分離することを試み, アルコール抽出液から活性炭セライト吸着クロマトグラフィーにより, スタキオース, (2Ga-G-F, 結晶), ヘプタオース, (5Ga-G-F, 無晶形, 237-9°,封管中, 分解), オクタオース, (6Ga-G-F 結晶, 252°, 封管中, 分解), ノナオース (7Ga-G-F, 結晶)をそれぞれ分離することができた。
    またこの植物の種々の生育段階の各部分について糖類の分布を調べた。その結果, 高級少糖類は地上部より地下組織に多く, 単糖類は地上部に多く分布していることを観察した。また茎に遊離のガラクトースおよびマンニノトリオースが比較的多量に存在することは興味ある事実である。
    高級少糖類のペーパークロマトグラフィーの溶媒には, ピリジン-ブタノール-水 (1:1:1.5, V/V) がよい結果を与える。
  • 肥田 美知子
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 425-429
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    Anthocyanidins in the coloured leaves and leuco-anthocyanidins in the green leaves of the conifers were investigated by means of paper chromatography and spectrophotometry.
    The results can be summarized as follows:
    1. The red colours of the conifers' autumnal leaves seem to be mostly due to anthocyanins.
    2. The anthocyanidin present in the coloured leaves is identified with cyanidin or delphinidin; some species contain both cyanidin and delphinidin, some, cyanidin, ut none contains delphinidin. These anthocyanidins may not be produced solely from the anthocyanins but from the leuco-anthocyanins co-occurring in the autumnal leaves.
    3. The leuco-anthocyanin present in conifers' green leaves is converted into cyanidin or delphinidin by heating with 2N-HCl.
    4. Anthocyanidins formed from leuco-anthocyanins in the green leaves are generally the same as found in the coloured leaves of the same species.
    5. The kind of anthocyanidin and leuco-anthocyanidin found in the coloured and the green leaves is characteristic of systematic position of the plants; there are more species which contain leuco-delphinidin than those which produce both delphinidin and cyanidin among Pinaceae, while species which form both delphinidin and cyanidin are more common than those giving cyanidin alone among Taxodiaceae and Cupressaceae.
    6. Leaves of major species of Pinaceae give delphinidin alone when heated with HCl and do not change their colour in autumn or in winter.
    7. The systematic distribution of anthocyanidin and leuco-anthocyanidin in the coloured and the green leaves suggested that Metasequoia is closely related to Sequoia and Sequoiadendron among Taxodiaceae.
  • 橋本 徹
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 430-431
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
  • Arcot VISWANATHAN
    1958 年 71 巻 845-846 号 p. 432-433
    発行日: 1958年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
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