植物学雑誌
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78 巻, 926-927 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 小野田 哲夫, 宇佐美 正一郎
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 267-273
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureus 209-P の母株菌と, われわれの研究室で分離した青酸耐性変異株菌の代謝型の差異を, 比較検討した. 青酸無添加培地における生長速度は, 変異菌の方が母株菌より遅いが, 1mM の青酸を含む培地では, 前者の方が後者より速い. 母株菌におけるコハク酸の酸化は, 青酸, アザイドおよび一酸化炭素により顕著に阻害されるが, 耐性菌の方は全く阻害をうけない. これに反し, アクリフラビンやキニーネの如きフラビン阻害剤により, 耐性菌の方が母株菌よりもかなり阻害される. マロン酸やPCMBは期待通り, 両種の菌のコハク酸酸化を強く阻害した. 青酸耐性菌では, 母株菌でみられるチトクローム b1 (557mμ) にかわり, 552mμ に最大吸収を示すチトクロームが観察された. しかし, a-型のチトクローム (600-602mμ) は, 母株菌と何らかわっていなかった. グルコースは母株菌によって強く酸化されるが, 耐性菌は全然利用できない. ピルビン酸の酸化についても, グルコースの場合と同様の結果が得られた. 酢酸は, 母株菌と同様, 耐性菌により酸化される. L-ロイシン, L-グルタミン酸, DL-アラニンの酸化活性は, 耐性菌の方が, 母株菌よりいくらか強いことがわかった.
  • 紅藻石灰藻の有機酸について
    古谷 庫造
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 274-279
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    高等植物の陽イオン吸収には有機酸が重要な役割をはたしているので, 石灰藻の石灰化にも有機酸が何らかの関係をもっているものと考えられる. そこで, 紅藻石灰藻の有機酸はどのようになっているかを調べる目的で紅藻石灰藻サンゴ科2種, ガラガラ科3種, および石灰を含まない他の紅藻, オバクサ, カバノリなどの有機酸の分析をおこない, 石灰藻と他の海藻との有機酸の比較をおこなった. 藻体の抽出有機酸をペーパークロマトグラムで調べたところ, 石灰藻と他の紅藻はともにリンゴ酸, クエン酸, コハク酸, フマール酸, 蓚酸, α-ケトグルタル酸, オキザロ酢酸およびピルビン酸などが検出され, 主な有機酸については両海藻類共に類似していることがわかった. 石灰藻の有機酸のカラムクロマトグラフィの結果によると, リンゴ酸, クエン酸, コハク酸が多量である. 藻体の全有機酸量 (mg 当量) は石灰藻が他の紅藻より乾量に対して約2倍, 藻体のN量に対して数倍である. 石灰藻は有機酸の含量が多いことが特徴的である.
  • 植物プランクトンの光合成の季節的変化
    有賀 祐勝
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 280-288
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    富栄養淡水池 (東京大学構内心字池) の植物プランクトンを用いて1年にわたり毎月光合成-光曲線および光合成-温度曲線をつくって, その季節的変化を調べた. この池の表面水温は8月に最高(約30°), 1月に最低 (約4°) を示した. 比較的珪藻の多いこの池のクロロフィル量は5月に最大(0,49mg/l)となり, 8月に第2のピーク (0.39mg/l) が見られた. 池の水 1l あたりの一次生産力は5月 (4.1mgO2/l/hr.) および8月 (5.6mgO2/l/hr.) にピークが見られた. 光合成-光曲線では1年を通じて強光阻害が見られず, 湖沼や内湾の水の華の時期の植物プランクトンの光合成曲線と同じような傾向を示し, 外洋の植物プランクトンの光合成曲線とは著しい対照を示した. 光合成-光曲線の光飽和点は春から夏にむかって徐々に高くなり, その後冬にむかって低くなる傾向が得られた. また, Ik値 (光合成-光曲線の最初の立ちあがりの勾配を示す直線と光飽和になった時の光合成値を示す直線との交点の光の強さ) の変化もこれと同様の経過をたどり, 夏季には大きな値を, 冬季には小さな値を示し, 陽生型•陰生型の分化が認められた. 光合成-温度曲線は, 単種培養の材料で得られたようなシャープな山は見られず, 温度の上昇とともにゆるやかに上昇して最大を示した後, ゆるやかに低下する傾向を示した. これは異なった適温をもつ種々の植物プランクトンが混在していることによるものと考えられる. しかし, 池の水温の上昇とともに, 春から夏にかけて光合成の最適温度も上昇し, 8月に最高 (約30°) になり, その後ふたたび低下することが明らかになった. 夏季には池の水温と光合成の最適温度とは非常に近い値を示したが, 冬季の場合にはかなりの開きが認められた. 4月-11月には植物プランクトンの光合成の最適温度は池の水温と直線的な関係を示したが, 冬季の場合には1月の15°を除き, ほぼ20°のところで光合成の最適を示した. 一方, 植物プランクトンの種類組成の季節的変化にはあまりはっきりした傾向は認められず, 3月から6月にかけては珪藻 (Synedra, Melosira など) が比較的多く, 9月•10月には藍藻が, 12月•1月には鞭毛藻(Trachelomonas, Cryptomonas など) が多く見られたが, その他の種類もかなり混っており, とくに7月と11月には種々の緑藻•珪藻•藍藻•鞭毛藻がほぼ同じ程度に混っているのが見られた.このように光合成の最適温度の季節的変化は植物プランクトンの種類組成の変化とはそれ程緊密には関連しておらず, 第II報で報告する予定の培養した Chlorella の光合成-温度曲線の変化からも推定されるように, 同一種類でも光合成の最適温度はある幅をもって変わりうることを示すものと考えられる.
  • 館岡 亜緒
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 289-293
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    Streblochaete は1種 (S. longiarista Pilger) のみを含み, 旧大陸の熱帯山地に分布しているイネ科植物である. この属の類縁はこれまで十分に研究されていなかったので, その胚と葉の解剖学的特徴および外部形態を調査した. その結果, Streblochaete はウシノケグサ亜科のコメガヤ族に含められるべきものであることが判明した. コメガヤ族の限界およびその起原について, 若干の考察をあわせておこなった.
  • 館岡 孝
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 294-298
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    高等植物体内でのシキミ酸の分解的代謝過程をしらべる目的で, 暗発芽させたヤエナリの胚軸を 0.5%のシキミ酸を含む培養液中で 4-5 時間培養した. その結果培養液中に5-デヒドロシキミ酸とプロトカテチュ酸の生成が認められた. このことからシキミ酸の分解的代謝に関して, 微生物で見出されている分解過程と同様な系が高等植物にも存在するものと考えられる.
  • 柴田 萬年, 山崎 公子, 石倉 成行
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 299-305
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ホテイアオイ (ミズアオイ科) は夏から秋にわたり淡紫色の花を開く水生植物で, この花はただ一種のアントシアニンを含んでいる. この色素を単離結晶化して, その性質を調べた結果, それは一分子の delphinidin と二分子の glucose からなり, 糖はフラビリウム骨格の3-位に二糖体として結合していることが判ったので, 材料の学名に因み “アイヒホルニン” と命名した. この色素について抽出,精製, 結晶化, 化学的性質, 元素分析, 水解, 可視部, 紫外部ならびに赤外部の吸収スペクトル, 電気泳動, Rf値などを近縁のアントシアニンと比較しながら調べ, それが delphinidin-3-diglucoside であることを確認した.
  • 館岡 亜緒
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 306-311
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    マダガスカルで採集した33系統のイネ科植物の染色体数を報告した. それらは19属29種に属するもので, そのうち11種の染色体ははじめて報告されるものである. またヌメリグサ (Sacciolepis indica), メヒシバ (Digitaria adscendens) などの日本にも分布する種類も含まれている. 細胞分類学的な観点から, ネズミノオ複合体 (Sporobolus indicus complex) や他のいくつかの種類について議論した.
  • 劉 逸民
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 312-318
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    The effect of high temperature on the meiotic division was studied. The material plants, Trillium kamtschaticum (2n=10), were treated at 27° for two weeks at various stages of meiotic prophase I.
    1) As regards the chromosome behavior from prophase I to metaphase I, most of chromosomes were asynaptic when the treatment was carried out at leptotene, while desynaptic univalents and precocious type bivalents were both seen in the treatment at early or mid-zygotene; and almost all homologous chromosomes showed the normal configuration in the treatment at late zygotene and pachytene.
    2) Abnormal PMCs at telophase I were classified in four types according to the pattern of nuclear distribution. Type 1 cells (apolar) occurred with a high frequency in the treatment at leptotene, while type 2 (dispersed-polar) as well as type 3 (tripolar, unequally bipolar and monopolar) appeared frequently when the treatment was carried out at mid-zygotene and early zygotene, respectively.
    3) In the case of treatment at a stage earlier than mid-zygotene, the cell division was affected and the PMCs could not proceed further than the first division; however, they have entered the second division when the treatment was effective at a stage later than late zygotene, and the frequency of aberration at telophase II was higher than that in the controls.
    4) The development process of the mitotic apparatus in the first division was discussed. It was suggested that the normal division of the pole organizer (centrosome) might take place at early zygotene stage.
  • 続 ソメイヨシノの起原
    竹中 要
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 319-331
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1) ソメイヨシノの実生の成樹の内約130株について, この外部形態を調査した. 典型的のオオシマザクラとエドヒガンとに入れらるべきものを極く少数生じ, 大多数のものは両者間を連続的につなぐ形質分布を示すものであった. またその中にはソメイヨシノ型のものも少数出現した.
    2) オオシマザクラとエドヒガンの間の交配 F1で14株の成木を得た. これらは互の間に少しずつの差異はあるが, 形態的に見て, すべてソメイヨシノの範疇に入るものである. ただしソメイヨシノそのものよりは葉と花が大きく, 雄ずい数が多く, また1株を除いて他はすべて花色が薄かった.
    3) オオシマザクラとイトザクラとの交配 F1 はソメイヨシノよりも枝条が華奢であり, 葉と花が僅かに小さく雄ずい数が僅かに少なかった. 外見上ソメイヨシノはオオシマザクラとイトザクラの F1 というよりもオオシマザクラとエドヒガンの F1 という方が, より適当に思われる.
    4) オオシマザクラとソメイヨシノとの交配 F1で19株の成木を得た. これら19株は割合均一であった. オオシマザクラとエドヒガンの交配 F1 で,
    葉•がく•花梗の毛茸および花序の散形が優性であることを知ったが, この交配 F1 でも, それらが当てはまった.
    5)船原峠で発見したフナバラヨシノはソメイヨシに比べて葉と花が大きく雄ずい数が多い外は, すべてソメイヨシノと同じく, かつソメイヨシノと同様に雑種強勢を示す. オオシマザクラとエドヒガンとの自然交雑によってできた F1 と考えられる.
    6) 熊本市で栽培されていたクラマザクラはソメイヨシノに比べて, 葉と花が大きく枝条に少し屈曲気味があるが, 他はすべてソメイヨシノと同じである. しかも著るしい雑種強勢を示す. このサクラもオオシマザクラとエドヒガンとの自然交雑によって生じ F1 と考えられる.
    7) 萩市で栽培されていたが現在は成木の見られないミドリヨシノは, 花色の白いという点だけソメイヨシノと異なり他の形質はすべてソメイヨシノと同じである. これもまた徳川時代に伊豆あたりに生じたものが, ひろい上げられて庭園樹となったものと思われる.
    8) 著者も伊豆と房州その他でソメイヨシノの子孫と思われるものを少数発見したが, 分類学者によっても見いだされつつある. これらの中にはソメイヨシノそのものの子孫もあろうが, その他, 過去においてソメイヨシノと同様にオオシマザクラとエドヒガンとの交配によって生じたソメイヨシノようのサクラがあって, それらからの子孫もあるであろう.
  • 山崎 敬
    1965 年 78 巻 926-927 号 p. 332-343
    発行日: 1965年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
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