2次遷移における種の交代の理由を明らかにするために群落を構成する種の生活環の諸相を比較しているが, 本報告では重要な先駆種の種子生産量を比較した. 長野県菅平地方に優占する先駆種であるハルタデ,ヒメジョオン, ヒメムカシヨモギ, アレチマツヨイグサ, シロザの5種についていろいろな大きさの個体の草丈と根元の直径とを測り, その生産した種子数を数えた. さらにそのような植物の各部分の大きさと種子生産量との間の相関を検討した. その結果種子生産量をN
s, 植物体の草丈H, 根元の直径D
oとすると各種の各大きさの個体の種子生産量は次のように示される. ハルタデ: log N
s=2.843log D
o+4.061, ヒメジョオン: log N
s=1.171 log D
o+4.948, ヒメムカシヨモギ: log N
s=2.676 log D
o+2.997, アレチマツヨイグサ: log N
s=2.402 log D
o+4.770, シロザ: log N
s=3.944 log D
o+4.778. この結果を用いてヒメジョオン•シロザの優占する群落中の種子生産量を推定した. 前者では個体密度58本/50×50cm
2で約120万粒, 後者では個体密度66/50×50cm
2, 131/50×50cm
2でそれぞれ約22.4万, 10.5万粒である. 種子の重量からみると初年度に優占するブタクサ, ハルタデ, シロザなどは鳥によって運ばれる (D
2型) 比較的大型の種子で,第2年度に優占するヒメジョオン, ヒメムカシヨモギなどは風によって運ばれる (D
1型) 小型の種子であることは興味深い. 種子生産量には種内および種間の競争がきくであろうが, その詳細は後報にゆずりたい. ここではまず2次遷移の初期に優占する種の種子生産とその意義が検討されたが, それを通して沼田ら (1964) が提案したGSP, SSPの概念をふくめ, ある群落における種子量の収支関係 (Fig. 1) を明らかにしていきたい.
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