暗所で発芽させたハッショウマメの上胚軸を切断すると切断部にカルスを生ずるが, 切断後明所にもって くるとカルスは形成されない. 一方, ソラマメでは, 上胚軸を切断しただけではカルスを生じないが, 切断 面に IAA を与えると切断部の肥厚がおこってくる. カルス形成部位あるいは肥厚部における IAA 含量と IAA 破壊活性の消長をしらべ, 次の結果を得た.
1) ハッショウマメについては, カルス形成の条件下では切断部における IAA 含量は, 上胚軸の切断後 顕著に増加するが, 一方, カルス形成のみられない条件下では, そのような増加はない. IAA 破壊活性は, いずれの条件下でも, 切断部で顕著な増加を示す. 2) ソラマメの場合には, 切断部を IAA で処理したも のでは, その結果としてその部分での IAA 含量は一時的に急激に増加するが, その後かなりの減少を示す. しかし, IAA 処理をしないものにくらべれば, 比較的高いレベルに保たれている. IAA破壊活性は, IAA処理の方が, 未処理のものより, 低い. 3) これらの結果から, カルス形成あるいは肥厚のおこる条件下で は, それらがおこる部分の IAA 含量は比較的高くなっている. そして, ソラマメの場合に, 肥厚がおこる 条件下で IAA 含量が高いのは, 少くとも, それがおこっている部分での IAA 破壊活性が低いことによっ ているのであろうと考えられる.
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