昭和50年代前半における琵琶湖南湖の富栄養化状態を明確に把握し, かっ記述するために, 実測データに基づく解析を試みた.用いたデータは京都大学工学部衛生工学教室水質工学研究室で1976年4月より1981年2月までの5年間に同湖内22地点で採取し, 分析したものである.第1報では多くの富栄養化指標の水平分布特性について考察を行った.湖は通常の状態と高濃度汚濁時とでは地域分布が異なるので, 中央値と90%非超過確率値の2種類の統計量を用いて分布特性を検討した.両統計量とも総じて, 南高北低・東高西低の汚濁パターンが示された.一次生産量や河川からの汚濁負荷量は通常, 流下方向に増加する傾向があるが, 南湖ではその流れが北から南に向っているため, 中央値から得られる分布型は南北方向で特に変化が際立っていた.これに対し, 降雨による河川負荷の急増や風による底泥の捲上げのような一時的な変化の影響が反映されやすい90%非超過確率値では, 逆に東西方向の変化が大きく, 水深の浅い東岸で特に高濃度となりやすいことが示された.
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