2004年3月から1年間, 岡山市街地において降水量1mm~8mmまでの降水を1mm毎に定量分割採取し, その化学成分特性を明らかにすることを目的とした. 分析項目は, 降水のpHとEC, それと各種イオン濃度 (F
-, Cl
-, NO
2-, NO
3-, SO
42-, PO
43-, Na
+, NH
4+, K
+, Mg
2+, Ca
2+). washoutによる測定地点近傍の大気汚染の影響が強いと考えられる1~4mmまでの降水のpHとECの平均値はそれぞれ4.46と32.7μS/cmであった. また, 主な酸性成分であるNO
3-とnss-SO
42-のイオン濃度はそれぞれ2.7mg/
l と2.5mg/
l であった. 広域的な大気汚染による影響が強いと考えられる5~8mmまでの降水のpHとECの平均値はそれぞれ4.60と20.4μS/cmで, NO
3-とnss-SO
42-のイオン濃度はそれぞれ1.6mg/
l と1.4mg/
l であった. 大気流跡線解析結果から, 降水時の大気はユーラシア大陸経由, 太平洋経由, 東南アジア経由, そして東アジア沿岸周辺を経由して移流する4つの大気流跡パターンに大別できた. 降水時の大気が東南アジア経由の場合, 降水のNO
3-とnss-SO
42-のイオン濃度は一番高く, それぞれ2.4mg/
l と2.1mg/
l であった. ついで, ユーラシア大陸経由の場合の1.5mg/
l と1.5mg/
l, 東アジア沿岸経由の場合の1.3mg/
l と1.1mg/
l, 太平洋経由の場合は0.7mg/
l と1.1mg/
l と, 大気経路による降水の化学成分特性の違いが明らかとなった.
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