パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法をふん便性細菌の汚染源追跡手法として適用させるためには,時系列的変化に関する情報・知見が必要である.そこで,本研究では,ふん便指標細菌である
Enterococcus faecium(腸球菌の一種)の遺伝子パターンの時系列的変化について検討した.宮崎県内の都市河川の定点を対象として,水試料の採取を開始して,1,3,7,14,30,および60日後における水試料中の
E. faecium を同定・回収した.
E. faecium株についてPFGE 法を用いて遺伝子型(PFGE型)の解析を行い,系統樹解析によって0日目の
E. faecium株と各採取日の
E. faecium株のPFGE型の類似度を比較した.河川の定点において,E. faecium株のPFGE型は0~3日後までは大きな変化は認められなかった.7日目以降から主要なPFGE型が変化した.30日目と60日目のPFGE型は0日目のPFGE型とは高い類似度を示さなかったため,河川の定点において,
E. faeciumは同一菌種間でも全く異なる特徴を有する遺伝子パターンに変遷する可能性が示唆された.したがって,ふん便指標細菌の遺伝子パターンの変遷を考慮した汚染源追跡が重要である.
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