内管と外管が同軸上に配置された二重円管(クエット・テイラー)型冷却装置を用いた融液晶析により,ステアリン酸とオレイン酸を含む2成分系脂肪酸混合物からのステアリン酸の分離・濃縮を検討した.二重円管部に生じるテイラー渦流によって,内管表面に析出した固体層は波面状の表面を呈した.固体層に含まれるステアリン酸のモル分率は内管の回転速度の増加に伴って増加した.また固体層の凹部と凸部の組成を比較した結果,凹部でのステアリン酸のモル分率は凸部に比較して増加したが,これは凹部での固体層の成長速度が凸部に比較して緩慢であるためと推測される.
地球上に最も多く存在するバイオマスであるセルロースの誘導体化において,その合成プロセスの開発は持続可能な社会実現の観点からも重要である.本研究ではアリルセルロースを均一条件下で合成した.セルロースをテトラブチルホスホニウムヒドロキシド水溶液に溶解させ,臭化アリル(AllylBr)で誘導体化してアリルセルロースを得た.25℃,1時間の反応で置換度(DS)が1.66から2.15の範囲のアリルセル ロースが得られ,生成物のDSをAllylBr の添加速度のみで制御することができた.本研究で得られた結果はアリルセルロースの簡便かつ高効率な省エネルギー合成法として寄与すると考えられる.
藻類-細菌系の廃水処理性能の優位性を検証するため,ポリエステル担体(8㎤,充填率47%)をろ材 とした散水ろ床フォトリアクター(φ13.5 ㎝,H30 ㎝,3層)を構築し,合成下水(TOC 104 ㎎/L,T-N 50 ㎎/L,PO43--P 11 ㎎/L)を赤色 LED(15 µmol/㎡/s,L:D=12h/12h)を照射しながら水理学的滞留時間(HRT)12~2h で通水した.HRT 12h における処理水の TOC,T-N,PO43--P の濃度は,フォトリアクターは4.5 ㎎/L,29.3 ㎎/L,8.1 ㎎/L,光を照射しない通常の散水ろ床は9.1 ㎎/L,40.5 ㎎/L,7.2 ㎎/L であった.フォトリアクターには,緑藻や珪藻,細菌が定着し,HRT 8h 以上において,TOC 除去, 硝化,炭素源資化能が優れていた.
本総説においては,水圏におけるPFOS とPFOAによる汚染を修復するために適用可能な最新の技術の現状について論じる.まずPFOSとPFOAの水圏汚染の実態から,これら化合物の処理に際して何が求められるかを明らかにする.また,これまでに開発されてきた処理技術のうち分解技術を中心にして各々の技術の原理と有効性を論じる.さらに,なぜこれほどPFOSとPFOAは分解が困難なのかを両化合物の化学的な構造や特性から読み取る.最後に実用に供せる水中のPFOSとPFOAの処理フローを示す.
生活排水への臭素消毒の適用性の検討を目的とし,浄化槽処理水を臭素で消毒し,消毒効果,消毒剤残留性およびトリハロメタン生成量を塩素消毒と比較した.大腸菌群に対する臭素の消毒効果は塩素よりも高かった.消毒剤残留濃度は,塩素消毒および臭素消毒ともに同一注入率で同程度であった.トリハロメタンは微量生成したが,水道水質基準と比較して極低濃度であった.臭素消毒が生活排水の消毒に有用であることが示唆された.