本研究は大阪湾ベイエリアにおける光化学オキシダント (Ox) の生成とその原因物質発生量の関係を明らかにすることを目的としている.この第2報では, 典型的な夏季晴天日 (降雨量=0mm/日, 日最高気温≧35℃, 日最大日射量≧3.0MJ/m
2/h, 日平均風速≦4.0m/s, 一般風が弱い) における播磨 (36km×28km) , 阪神 (32km×32km) , 大阪エリア (28km×36km) における光化学オキシダントの生成とその一次原因物質である窒素酸化物質 (NOx) および反応性炭化水素 (RH) の発生量の関係を3次元大気環境シミュレータOASISによって検討した.各エリアで算定された一次汚染物質の発生量比RH/NOxは播磨=6.1, 阪神=3.5, 大阪=4.3であった.光化学反応過程で生成されるラジカル類のマスバランスの算定によって, 播磨エリアはSillmanらが定義する「低NOx地域」に, 阪神と大阪エリアは「高NOx地域」に分類されることが明らかとなった.低NOx地域である播磨エリアでは一次原因物質の発生量の削減によって最大Ox濃度およびOH, HO
2ラジカル濃度が単調に減少し, 特にNOx発生量の削減がOx汚染の防止に効果的である結果が得られた.一方, 高NOx地域である阪神と大阪の両エリアにおいては, 播磨エリアと異なり, NOx発生量の削減によってOH, HO
2ラジカル濃度が増加し, 逆にOx濃度が増加する可能性が示唆された.この重要な結果は, NOxだけでなくRH発生量もバランス良く削減する政策が, 典型的な夏季晴天日における阪神・大阪エリアのOx濃度の減少に必要であることを示唆している.また, 低NOx地域・高NOx地域どちらの場合も最大Ox濃度出現時刻はNOx発生量の削減によって早くなり, RH発生量の削減によって遅れる現象が見られた.
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