乾期 (2002年1月~2月) と雨期 (2001年8月) にバンコク市内4個所 (ジャンカセン, ディンデン, チャオプラヤおよびラブラナ) で, ハイボリューム・エアーサンプラーによってエアロゾルを24時間捕集し, エアロゾル組成を求めた.乾期のTSP, PM10, SO
2およびNO
2濃度は雨期の2倍ほど高かった.これは, 雨期に粒子状およびガス状物質がwash-outによって除去されるためと思われた.水溶性イオンの中ではCa
2+とNH
4+濃度が雨期に比べると顕著に高かった.NO
3-とSO
42-濃度は良好な相関性 (R=0.85) を示した.エアロゾルの酸性化を支配するNO
3/nss-SO
4は雨期に0.37で乾期には0.69となった.Cl/Na (当量比) は雨期に主風向の影響を受けて海塩粒子組成 (1.18) に接近した.1月19日と25日には, 市内の大渋滞によって視呈が著しく低下し, これに対応してNO
3-とSO
42-濃度が増大した.その後, 高濃度のC
2O
42-が検出された.TSPはFe, Mn, Ca
2+およびK
+と良好な相関性を示した.重金属の中ではAlとFe濃度が高く, Pb濃度はWHOの長期基準 (0.5~1.0μg/m
3) 未満であった.付近に大規模な重油燃焼系の発生源がないのでVとNi濃度は低かった.分析元素の濃縮係数 (EF) を求めるとZn, Pb, NO
3-N, SO
4-SおよびTC (全炭素) のEFが大きく人為寄与が疑われ, Fe, Mn, Al等は自然寄与と思われた.なお, 交通量の多いディンデンでは, TSPや重金属濃度の他に, PAHやTCが高くなる特徴が認められた.
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