神戸地域の後背地 (北方約40kmの山間部, 三田市母子地区) で夏~秋期, 雨水を採取し, 雨水中の各イオン濃度, pH, 電導度を測定し, その値と同時期の都市部 (神戸地域) の値と比較した.
都市部に近い値として出現するのは, NO
3-, Cl
-, H
+, NH
4+, かなり低い値として出現するのは, SO
42-, Na
+および電導度, きわめて低い値を示すものはNO
2-であった.カチオンのモル濃度はH
+>NH
4+>Na
+の順になり, 都市部とほぼ同じ傾向を示すが, アニオンのモル濃度は夏期に, NO
3->SO
42->Cl
-の順になり (都市部では, SO
42->Cl
->NO
3-) , アニオンに占めるNO
3-の割合が大きい.また, (〔H
+〕+〔NH
4+〕+〔Na
+〕) / (〔NO
3-〕+2×〔SO
42-〕+〔Cl
-〕) の当量比は1/1を示し, 都市部の値より大きい.さらにNO
3-/NH
4+モル比は見かけ上NH
4NO
3の組成に相当する値を示し, Cl
-/Na
+モル比は海水組成にくらべて, Na
+lossの傾向を示した.
これらのことより, NaClやNaNO
3などを含む粒径の大きい粒子やNO
2のような反応性の大きい気体状物質の一部分は輸送途中で大気から除去されるが, NH
4NO
3などを含む粒径の小さい粒子やHClのような反応性がやや小さい気体状物質, NH
3のような自然的発生が考えられる気体状物質は, 都市部の後背地でもあまり濃度減少せず雨水中のイオン組成にそれが反映されると考えた.
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