わが国の化学物質管理制度であるPRTR では,従業員数が20人以下の「少人数事業者」は化学物質の排出量を報告する必要がない.しかし中には1t 以上の化学物質を取り扱っている事業者もあり,災害時には化学物質の漏出が懸念される.本研究では,業種別少人数事業所数の分布を推定する方法と少人数事業所からの排出量を推計する方法を提案した.つづいて,大阪府の中で特に少人数事業所が集まっている地域を対象に,それらを組み合わせることで少人数事業所からの化学物質排出量の分布を推定し,GIS で可視化した.PRTR 届出排出量の分布と比較した結果,化学物質や業種によっては少人数事業所排出量と分布の傾向が異なり,災害時の化学物質の漏出リスクを評価する際にPRTR の情報だけでは不十分であることが示唆された.