し尿処理場の生し尿臭気の除去を目的として, 重金属合成触媒を用いて, 3段式の触媒層を有する低温酸化脱臭装置を考案し, 実験室規模の基礎実験から大型装置への実用化実験と一連の脱臭実験を実施した.
その結果,
1) 脱臭率は99~100%と良好な結果を得, 臭気が甘味のあるベンズアルデヒド様の芳香臭に変った.
2) 触媒温度は, 230~270℃に自動温度制御により保持され, 連続無人運転の装置として初期の目的が達成された.
3) 触媒のイオウ吸着量分析の結果, 3種類の触媒ともに当初予定の寿命より長くもつことが明らかに認められた.
4) 本装置による実際施設の運転1年間の実績によれば, 実験で得たのと同様の好成績を示し, 投入口周辺からの, 生し尿臭気が消滅し, 作業環境が大いに改善された.
5) し尿臭は多種類の臭気の複合臭であるが, 臭気ガスの性質に応じ.それに適合した触媒を選択組合わせて用いれば, 効率の高い安定した脱臭効果が得られることが立証された.
また, 本方式は全乾式工程であるから, 排液処理などが不要で, 低温酸化による燃料経費の軽減と, 自動化ならびに装置の簡易化によって, 総体的に他の脱臭装置に比較して, 確実な効果が期待でき, 設備費, 運転経費等の面でも軽減化が可能となり, すぐれた脱臭方式といえよう.
6) 実際装置の良好な運転実績から数多くの市の施設において本方式の採用があり, 普及しつつある.
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