酸性雨被害はわが国では最近はほとんど無く, 以前には経験されたがその内容は北米やスカンジナビヤ諸国のものとは異なっている.酸性雨にはいくつかのタイプがあり, これらを大別すると, (1) 広域拡散型, (2) 局地強酸型, (3) 複合型に分類できると筆者は考える.北米やスカンジナビヤのものは (1) , 四日市や川崎などで大気汚染のひどかった時に経験されたものは (2) , 数年前に関東地方一円に降って目を刺激したものや最近西ドイツ国内で深刻になっているものは (3) であると言えよう.
これらの酸性の原因物質は, (1) では発電所や工場で発生するSO
2が主で, これに天然および人為のNOxが加わり, (2) では工場排ガス中のSO
3が主であり, (3) ではこれらにさらに光化学反応生成物や塩酸などが加わっている.酸性雨対策はこれらの原因に応じて有効な対策をたてるべきである.わが国ではSO
2とNOxについてはすでに世界に例のない高度の対策を実施して徹底的に減少させているが, わが国には立地的に広域型酸性雨の問題は少なく, 大気汚染の要因としてSO
3を重視する必要があろう.
抄録全体を表示