鉄成分に富む水中には, 鉄細菌が生息しており, 黄褐色のバイオマットを形成している.本研究では, 中性の地下水に生成した鉄のバイオマット中に一般的に生息する鉄細菌
Leptothrix ochraceaについて, 電子顕微鏡観察から, 鉄の濃集と鞘の形成過程について, 以下の知見を得た.
(1) 野外において, 鉄の無機的な沈殿率は1.6, 鉄細菌が関与する沈殿率は8.4であり, 鉄細菌は無機沈殿の5倍以上の鉄を沈殿させる.
(2) 生きている
L.ochraceaの代謝により短時間で鉄鞘が形成される.
(3) UV-C処理を行うことで, 鉄細菌の細胞が死滅し, 鉄バイオマットの形成が抑制される.
(4)
L.ochyaceaの鞘形成の初期段階は, 菌体の周囲に網目状の繊維物質を形成する.繊維が太くなることでチューブ状の鞘が形成される.
(5) 鉄細菌の代謝によって酸化されたFe
3+が繊維状多糖類に蓄積し, 鉄と有機物の複合体からなる鞘を形成する.
(6) 鞘表面に認められる水酸化鉄の微粒子は, 無機化学的に酸化された水酸化鉄の粒子である.
(7) 成熟した鞘は低結晶性のFerrihydriteを形成する.
抄録全体を表示