本研究では,2016年の熊本地震および同年の阿蘇山の爆発的な噴火に伴う周辺の温泉水の水質変化を把握し,その要因について考察することを目的とした.対象とした温泉は,長湯温泉・由布院温泉・別府温泉とした.これらの温泉周辺では,震災時に震度4以上を観測した.また長湯温泉の近隣には,阿蘇山に隣接する九重山がある.トリリニアダイヤグラムの結果より,長湯温泉・由布院温泉・別府温泉の水質はそれぞれ異なる結果となった.震災後において,Al,Zn,P は平年より低い濃度を示した.噴火後のSr やMn についても平年より低い濃度を示した.噴火後に高い濃度を示したのはAl とB であった.震災時に濃度が変化した理由としては,地下での沈殿物からの溶出が考えられた.噴火後の濃度変化については,阿蘇山の噴火の影響によって圧力が減少し,地下の成分が溶出する量が減少したと推定した.これについては,データに基づく考察ではないため,推測の域はでなかった.