以下の2つの評釈は, 平成10年8月に公表された名古屋市港管理組合・名古屋市『名古屋市港区藤前地先における公有水面埋立及び廃棄物最終処分場設置事業に係る環境影響評価書』 (藤前干潟評価書) について行われたものである.本事業は, 公有水面埋立事業と廃棄物最終処分場設置事業の2つの種類の事業が複合した事業である.事業者は, 公有水面埋立事業については名古屋市港管理組合 (代表者: 名古屋市長) であり, 廃棄物最終処分場設置事業については名古屋市である.事業予定地は, 名古屋市港区藤前地先公有水面である.事業規模は, 埋立面積約46.5ヘクタール, 埋立容積約400万立方メートルであり, これは, 昭和59年の閣議決定要綱における廃棄物最終処分場事業にかかる規模要件 (30ヘクタール) , 名古屋市環境影響評価指導要綱における公有水面埋立事業にかかる規模要件 (10ヘクタール) , 同要綱における廃棄物処理施設にかかる規模要件 (埋立面積3ヘクタール以上, 埋立容積15万ヘクタール以上) をそれぞれ満たしている.そこで, 「厚生省所管事業に係る環境影響評価実施要綱」に基づき, 「名古屋市環境影響評価指導要綱」の趣旨を尊重して環境影響評価が実施され, 本評価書が作成された.
本事業は, 埋立容積約400万立方メートルの管理型の一般廃棄物最終処分場を建設しようとするものであり, 護岸工事を平成11年から開始し, 平成13年度から平成22年度までの10年間にわたって, 一般廃棄物, 上下水道汚泥, しゅんせつ土砂を埋め立てようとするものである.また, 埋立終了後は, 自然共生緑地及び親水緑地を整備することとされている.
なお, 本事業については, 評価書公告後の1998年12月18日に, 環境庁が, 「藤前干潟における干潟改変に対する見解について (中間とりまとめ概要) 」を公表し, 現干潟を嵩上げすることにより埋立の代償措置とするという名古屋市の対応を厳しく批判した.このことに端を発し, 干潟を保全する方向で事態は急展開を見せ, 本年1月26日には, 事業者の名古屋市により, 事業の実施を断念する旨が公表されている.名古屋市は, 当面の代替地を検討するとともに, ごみの減量に取り組むこととしている.
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