ヨーロッパにおいて開発され, 急速に普及している汚泥の熱処理法について, ヨーロッパ各都市の熱処理施設を実際に調査し, またパイロットプラントによる熱処理実験を実施した結果, 熱処理法は汚泥の脱水効果のきわめて高いことが判明した.すなわち, 熱処理汚泥は濾過速度, ケーキ水分さらには脱水ケーキの農業利用の可能性のどれをとっても, 現行の薬注・真空脱水法その他に比較してきわめてすぐれている点が認められた.また処理コストの点でも, 従来法のどれよりもすぐれており経済性についても明らかにすることができた.しかしながら, 熱処理法がすぐれた脱水性, 経済性を有する反面, 熱処理分離液の下水処理工程への返送が好気性処理工程に与える負荷増加割合は10%程度のBOD増に相当し, これに対しては処理コストが1~2%増加することも明らかとなった.だがヨーロッパの一部では, この熱処理分離液を処理プロセスに返送せず, 熱処理分離液を蒸発装置で蒸発させ, 返送による処理工程への負荷の増大を防止する試みもある.これについては本実験で明らかにしたように, 熱処理分離液混入の活性汚泥処理効果のうち, COD除去率, SS除去率などが影響をうける点についても熱処理方式の採否にあたり十分に考慮すべき点である.以上本研究においては, 汚泥の熱処理に関する問題点の実験的検討と, 各種資料にもとづく考察とを述べた.なお本研究は第7回下水道研究発表会 (昭和45年57度) で講演発表したものであるが, 今日, 熱処理に関する研究の普及・進歩はめざましく, ここに述べた内容よりも一段と掘下げた研究報告がなされつつあることは周知の事実である.
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