新しく開発した小型の二重管拡散デニューダー管とPTFE製ろ紙およびポリアミドろ紙と含浸ろ紙を組み合わせて大気中のガス (SO
2, HNO
2, HNO
3, HCl, NH
3) およびエアロゾル (SO
42-, NO
3-, Cl
-, NH
4+, Na
+, K
+, Ca
2+, Mg
2+) の測定 (二重管拡散デニューダー法) を検討した結果, 今回用いた二重管拡散デニューダー管は流量5l/minでガスはほぼ完全に捕集され, また, エアロゾルはほとんど捕集されずに通過することが理論的および実験的に明らかになり, 捕集ろ紙上でのアーティファクトの影響がないガスおよびエアロゾルの正確な濃度の測定が可能になった.本方法を用いて, PTFE製ろ紙上で捕集されたエアロゾルからの揮散率を定量することができ, 各揮散率は, NO
3-: 0.28~0.68 (平均0.44) , NH
4+: 0.15~0.50 (平均0.28) , Cl
-: 0.25~0.75 (平均0.46) であり, NO
3-とCl
-エアロゾルの揮散率は夏期に高く, 冬期に低くなる傾向がみられ, ろ紙法によるエアロゾルのCl
-, NO
3-, NH
4+成分およびHCl, HNO
3, NH
3の測定は適していないことが明らかになった.
本方法を用いて, 1994年7月より1995年6月までの1年間にわたり, 奈良市内で毎月5日間測定した年平均値の結果は以下の通りである.SO
2: 4.32 (μg/m
3, 以下, 単位は略) , HNO
2: 1.46, HNO
3: 1.61, HCl: 1.66, NH
3: 2.43, SO
42-: 4.27, NO
3-: 2.09, Cl
-: 1.12, NH
4+: 1.70, Na
+: 0.34, K
+: 0.31, Ca
2+: 0.22, Mg
2+: 0.04であった.SO
2, HNO
3, SO
42-, Cl
-濃度の季節変化は明らかに認められた.今回の測定の結果, これまで挙動が不明であったHNO
2濃度の挙動が明らかになり, 夏期ではHNO
3濃度がHNO
2濃度より高く, 一方, 冬期ではHNO
2濃度がHNO
3濃度より高くなることが明らかになった.
抄録全体を表示