キチン,キトサンのリン酸エステル誘導体であるリン酸化キチン,リン酸化キトサンによる重金属イオン,アルカリ土類金属イオン,アルカリ金属イオンの吸着にいて,キチン,キトサンおよびリン酸化セルロースと対比しながら検討した.
1) リン酸化キチン,リン酸化キトサン,リン酸化セルロースのリン酸化多糖は,キチン,キトサンのようにリン酸基をもっていない多糖に比べて, Cu
2+, Mn
2+, Co
2+, Cd
2+, Zn
2+, Ni
2+, Cr
3+の重金属イオンを強く着捕集することが認められた.これらのリン酸化多糖なかで, Cr
3+に対する吸着能はリン酸化キトサンが最も大きかった.
2) Li
+, Na
+, K
+のアルカリ金属イオンに対する吸着率は,上記3種のリン酸化多糖のなかでリン酸化キトサンが最も大きかった.
3) Mg
2+, Ca
2+, Sr
2+のアルカリ土類金属イオンに対する吸着については,上記3種のリン酸化多糖はいずれも高い吸着率を示し,ことに, Sr
2+ (50ppm溶液)に対しては,いずれのリン酸化多糖も定量的に吸着捕集した.
4) リン酸化キチンによるCu
2+, Cd
2+の吸着は,きわめて短時間に行われることが認められた.
5) リン酸化キチンのCu
2+吸着におよぼす各種要因の影響について検討した.その結果, Cu
2+の吸着率は溶液中のCu
2+濃度が50ppmまでは100~98.6%を示し,リン酸化キチンはCu
2+に対して高い吸着能を示すこと,吸着担体の量が増えるにつれてCu
2+の吸着率は高くなること, Cu
2+吸着は温度の影響をあまり受けないこと, pH 3~5 (Cd
2+について3~7)では吸着率に差はないが, pH 2では低下すること,また,塩化ナトリウム,硫酸ナトリウムがCu
2+と共存するとCu
2+の吸着率は低下することを認めた.
以上のように,キチン,キトサンのリン酸エステル誘導体であるリン酸化キチン,リン酸化キトサンは,リン酸基をもっていないキチン,キトサンなどの多糖に比べて重金属イオン,アルカリ土類金属イオンを著しく高い吸着率で捕集できることが明らかになった.
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