日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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24 巻, 9 号
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  • 青木 春夫
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2309-2319
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道・胃静脈瘤症例の門脈領域の血行異常の病態に関して, 門脈系の造影所見から左胃静脈の血流動態を84例で検討した結果, 左胃静脈が逆行遠肝性を示す1型は27例と約1/3に過ぎず, to and fro性のIIa型は39例, 順行求肝性のIIb型は18例と遠肝性を示さない症例が多数を占めていた.静脈瘤の形成機序は遠肝性副血行路の要因のほか, 胃噴門部領域の循環亢進状態が推察された.そこで臨床的に胃壁の微小循環動態に関連する各種測定と, 実験的にラットを用いて肝障害時の胃壁の微小循環とエストロゲンの関与を検討した.その結果, 左胃動脈, 固有食道動脈などの流入する下部食道・胃噴門部領域の粘膜下動・静脈短絡の開大・増加による循環亢進状態が静脈瘤発症の直接の要因となっていることが示され, その原因の一つとして肝機能障害による高エストロゲン血症の関与が明かとなった. このような病態の認識の基に局所流入動脈の遮断など, 合理的治療が重要である.
  • 溝渕 俊二, 加藤 抱一, 日月 裕司, 渡辺 寛, 板橋 正幸, 廣田 映五, 山口 肇
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2320-2325
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    最近5年間に切除された術前未治療の原発性食道癌239例中, 多発食道癌は45例 (18.8%) であった. 男女比は14.0: 1と単発癌の5.5: 1に比較して男性に多い傾向を示した.平均年齢は58, 8歳であり単発癌63.2歳に比較して有意に低値であった.他臓器重複癌の内訳で多発癌症例に有意に咽頭癌が多かったこと, 喫煙者の割合と喫煙本数が多発癌症例に有意に高く, びまん性に高度のdysplasiaが多発癌症例に多かったことなどから, 多発食道癌の発生は, 内因性より外因性機序がより強く関与していると考えられた.多発癌45例中42例に副癌巣として表在癌を認め, また副癌巣の46%が主癌巣の口側に位置した.副癌巣の75%がep癌であることから, 切除時癌遺残に注意を要すると考えられた.予後に関して, 4年生存率が多発癌39.3%, 単発癌40.1%とほぼ同値であったことから, 多発癌そのものは, 単発癌に比べて悪性度は高くはないことを示すものと考えられた.
  • 再発時のcomputed tomographyによる検討
    松原 敏樹, 奥村 栄, 植田 守, 西 満正
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2326-2334
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌根治切除術後の頸部・縦隔再発例で再発時にcomputed tomographyを施行した40例を対象として, 頸部~縦隔における再発巣の解剖学的な分布や形態を調べた.
    1. 頸胸連続郭清施行例 (B群: 16例) とそのほか (A群: 24例) では再発部位に差がみられた. 単一領域再発例でみるとA群では反回神経沿線の再発が多く, 食道切除時n (-) でも頸部上縦隔再発が多かった. B群では頸部上縦隔再発は少なく下行大動脈周囲の下縦隔再発が多かった.
    2. 気管前や前縦隔の再発例は右反回神経沿線か左気管気管支の再発を伴っていた.
    3. 深達度sm・pmの症例における単一領域再発部位はどれも深頸部か反回神経沿線であり, 中下縦隔再発はa1以上の症例に限られていた.
    4. 一側のみの頸部再発触知例ではほかに再発巣が認められない症例も多かったが両側触知例はどれも縦隔内に広範な再発を伴っていた.
    5. 経過観察例における再発巣のdoubling timeは0.5~6か月, 平均2.4か月であった.
  • 渡部 洋三, 津村 秀憲, 中川 敏行, 秋本 亮一, 佐々木 浩, 森本 俊雄, 佐藤 浩一, 矢吹 清隆, 大久保 剛, 榊原 宣
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2335-2339
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 選択的迷走神経切離術兼幽門洞切除術 (selective vagotomy with antrectomy: SV+A) 後の胃内容停滞におよぼす, 右胃大網動静脈とそれに沿う迷走神経温存 (温存術) の影響を検討することにある.対象は, 十二指腸潰瘍に対して行ったSV+Aのみの非温存術71例と温存術25例である.方法は, 術後臨床経過, 胃内容停滞の発生頻度, 残胃X線所見, 胃内外分泌機能などを検討した.温存術は非温存術と比べて, 全粥摂取量が67±22%と多かった.胃内容停滞の発生頻度は, 非温存群で21.1%, 温存群で8.3%と温存群で有意に低値であった.温存群の胃X線透視における吻合口近くの大弯側弛緩部は, 術後いずれの時期でも3.0cm以下であり, 残胃の緊張が早期より保たれていた.術後の胃内外分泌機能は, 両群間で差はみられなかった.以上の成績よりSV+Aを行う際に温存術を併せ行うことは, 術後早期の胃内容停滞を軽減するのに有用であると思われた.
  • 近藤 泰理, 生越 喬二, 宮治 正雄, 岩田 邦裕, 原 俊介, 田島 知郎, 三富 利夫
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2340-2344
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1978年から1984年に選択的近位迷走神経切離術 (SPV) を施行した十二指腸潰瘍待機手術例31例を対象とし, 術前および術後1年時の基礎酸分泌量 (BAO), テトラガストリン刺激時の最大酸分泌量 (G-MAO), インスリン刺激時の最高酸分泌量 (I-PAO), 空腹時血漿ガストリン値, 試験食負荷時の血中ガストリン分泌反応 (T-IGR), インスリン刺激時の血中ガストリン分泌反応 (I-IGR), ならびにKaplan-Meier法を用いた術後累積再発率を検討した.31例中術後潰瘍再発例は9例 (29.0%) で術後10年累積再発率は31.7%であった.術後再発例の術後1年時におけるG-MAOおよび術前のT-IGRは非再発例に比べ高値を示した.術後累積再発率の検討から術前のBAOが4m Eq/hを超えた症例, 術前のT-IGRが2min・ng/mlを超えた症例の累積再発率がそれ以下であった症例に比べ有意に高値を示したことより, 術前にBAOや血中ガストリン分泌反応が高値を示す症例はSPV術後に消化性潰瘍の再発をきたしやすいものと考えられた.
  • 分化型腺癌と未分化型腺癌の比較
    田中 雄二
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2345-2353
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1978年から83年に浜松医科大学第2外科で切除した胃癌89例について, フローサイトメトリーによるDNA ploidy pattemを解析した結果, 分化型胃癌47例では, diploid 22例 (47%), aneuploid 25例 (53%) と半数ずつ占めるのに対し, 未分化型胃癌42例では, diploid 29例 (69%), aneuploid 13例 (31%) で, diploidの多い傾向を認めた.分化型胃癌では, 進行度に対応してaneuploidの頻度が増し, さらに生存率の検討でもaneuploid症例は有意 (p<0.05) に不良であり, DNA ploidy patternと予後との間に関連のあることが示唆された.一方, 未分化型胃癌では, このような関連は認められなかった.これは, 実質と間質の量比および浸潤増殖様式の因子などにより規定されるためと考えられた.以上より, 胃癌細胞核DNA量の測定は, 分化型胃癌において, 生物学的悪性度を反映するよい指標と考えられる.
  • 貝沼 修, 浅野 武秀, 榎本 和夫, 久保田 亨, 磯野 可一
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2354-2357
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝のミクロゾーム機能評価法として, 塩酸リドカイン (以下リドカイン) の代謝産物であるmonoethylglycinexylidide (以下MEGX) 濃度を測定した.方法はリドカインを1mg/kg静注して15分後に採血しHuorescent polarization immunoassay (以下FPIA) 法にて測定した.正常肝66.8±19.0ng/mlに比べ硬変肝32.4±17.9ng/mlおよび閉塞性黄疸肝34.8±18.2ng/mlは有意に低下していた (p<0.01).またMEGX濃度はindocyanin green試験15分値 (以下ICGR15) やcholine esterase (以下ChE) とも有意に相関した.リドカインの代謝は肝細胞のミクロゾーム中のチトクロームP-450量に依存しており, MEGX濃度は肝の機能容量すなわち機能肝細胞総数を表わしており, 本試験は簡便かつ迅速に測定できることから肝機能評価法として極めて有用と考えられた.
  • 泉 良平, 清水 康一, 桐山 正人, 橋本 哲夫, 浦出 雅昭, 伊与部 尊和, 岩佐 和典, 桝谷 博孝, 八木 雅夫, 宮崎 逸夫
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2358-2362
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腫瘍最大径3cm以下の肝癌102症例の予後について, 治療法の違いによる予後の検討を行った.肝切除術50例では絶対的治癒切除術12例, 相対治癒切除術19例, 相対非治癒切除術15例, 絶対非治癒切除術4例が行われた.Transcatheter arterial embolization (TAE) 52例中24例ではTAEを1回のみ (TAE-O), 残る28例では2回以上 (TAE-TM) 行った.治癒切除例の予後はTAE例よりも良好であったが, 非治癒切除例とTAE例間には有意差は認められなかった.肝内転移陰性例では, 肝切除例の予後が有意に良好であったが, 肝内転移陽性例では差は認めなかった.TAE-OとTAE-TMではTAETMの予後が有意に良好であったが, いずれも絶対治癒切除例の予後よりも不良であった.相対治癒切除例の予後はTAE-Oよりも良好であったが, TAE-TMとの比較では4年生存率でのみ有意差が認められた.小肝癌の治療に際しては, 良好な予後をうるためには治癒切除術が必要である.
  • 藤森 勝
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2363-2372
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    一元放射状免疫拡散法により大腸癌120例の血清α1 acid glycoprotein, prealbumin比 (cancer serum index, 以下CSI) を測定し, carcinoembryonic antigen (以下CEA) と対比しつつその臨床的意義を検討した.CSIはstageの進行とともに上昇し, 220をカットオフ値とすると大腸癌の陽性率は77.5%であったが, 炎症性消化器疾患でも86.1%と高値であった.CSIは腫瘍径と正の相関をもち, s (a), n因子との関連が大きかった.一方CEAは腫瘍径と有意の相関をもたず, H因子との関連が大きかった.CSI, CEAともに非治癒手術群が治癒手術群に対して有意に高値であったが, 非治癒手術群の22.7%はCEA正常例であった.術後再発例ではいずれもCEAの上昇が先行していた.以上からCSIは大腸癌のスクリーニングまたは再発のモニターとして用いるには不適当であるが, CEAとのcombination assayにより進行度の評価ならびに治癒手術可能性の判定に有用であることが示された.
  • 山田 一隆, 鮫島 隆志, 鮫島 淳一郎, 春山 勝郎, 長谷 茂也, 桂 禎紀, 丹羽 清志, 石沢 隆, 島津 久明
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2373-2378
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌症例において, 両側の側方郭清を伴う自律神経片側温存手術 (A-II) 10例の術後の排尿・性機能障害について, 自律神経全温存手術 (A-I) 21例, 通常郭清手術 (B-I) 25例および拡大郭清手術 (B-II) 44例の成績と比較検討した.排尿機能に関しては, A-II手術では排尿困難の出現はなく, B-II手術の30%と比べて有意に低率であった (p<0.05).性機能に関して, 射精障害・勃起障害の出現頻度はA-I手術で20%, 0%, A-II手術で50%, 17%, B-I手術で57%, 36%, B-II手術で75%, 63%であり, A-II手術における頻度はB-I・B-II手術に比べて低率であった.これらの機能障害出現頻度の相違は, 低位前方切除術施行例に比べて直腸切断術・貫通術式・重積術式施行例で著明に認められた.以上より, 自律神経片側温存手術は術後の機能保持に関して有用性をもつことが示され, 全温存手術に比べてより根治性を求めた機能温存手術であると思われる.
  • 吉岡 和彦, 早田 和訓, 松井 陽一, 山田 修, 坂口 道倫, 高田 秀穂, 日置 紘士郎, 山本 政勝
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2379-2384
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    前方切除術およびS状結腸切除術後の排便機能の客観的な評価を試みた.手術を施行された18例において, 術前と術後2か月, 6か月および12か月に臨床的, 生理学的および解剖学的評価を行った.術後2か月の排便回数が1日4回以上のものを不良群, 3回以下のものを良好群とすると, 肛門縁と吻合部の距離は不良群が良好群より有意に短かった (良好群: 10 (6-25) cm, 不良群: 6 (2-14) cm (中間値と範囲), p<0.025).不良群では安静時肛門内圧, 直腸最大耐容量および直腸コンプライアンスは有意に低下した.Pelvic floor descentは不良群では有意に増大した (術前: 2.5 (1.2-6.9) cm, 術後2か月: 4.0 (2.7-5.6) cm, p<0.025).以上のことから術後の排便機能は, 肛門縁から吻合部までの距離, 肛門内圧, 直腸最大耐容量, 直腸コンプライアンスおよびpelvic floor descentに関係していると思われた.
  • 神保 雅幸, 岡崎 肇, 佐藤 孝臣, 三浦 一章, 小熊 司郎, 天田 憲利, 菊地 廣行
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2385-2394
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    最近10年間の当施設での維持透析患者の消化器外科手術症例をA待期的手術群52例, B緊急手術群33例の比較を中心に検討を加えた.
    A群術後合併症28.8%, 直死3.8%, B群合併症48, 5%, 直死21.2%であり, 術後在院死の主因はA群で肺合併症, B群でseptic multiple organ failureであった.B群の51.5%を虚血性大腸炎壊死型を主とする下部消化管穿孔例が占め, 手術までの経過時間は大きな予後規定因子であり24時間以内の早期手術が肝要である.A群の60歳以上の術後合併症66.7%, 在院死58.3%で, 60歳未満で合併症17.5%, 在院死2.5%であり, 前者の在院死はすべて担癌患者であった.A群の血漿fibronectin値は術前, 術後3, 7病日ともに成人健常者に比べ有意に低く, また術後の回復遅延が認められた.以上より維持透析患者は消化器外科手術において術後感染防御・創傷治癒の両面でのriskを有し, 特に60歳以上の担癌患者はhigh riskと考えられる.
  • 長田 哲雄, 芦田 寛, 高木 一光, 西岡 昭彦, 橋本 直樹, 琴浦 義尚, 宇都宮 譲二
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2395-2399
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男で肝硬変例.主訴は食道胃静脈瘤術後再発であり, 経腹的食道離断後7年4か月目の腹部血管造影にて, 門脈系の遠肝性側副血行路の関与はなく, 残存した後胃動脈を供給路とする食道胃静脈瘤再発を確認できた.また, 初回手術時に温存した巨大な胃腎短絡路も認めた.本症例に対しては, 後胃動脈のTAE後内視鏡的硬化療法を付加し, 静脈瘤の消退をみた.静脈瘤再発機序としては, 後胃動脈が関与した局所の循循環亢進状態の存在が大いに関係しているといえた.一方, 胃噴門部近傍に存在する胃腎短絡路が再発静脈瘤の排出路となりえなかった.
    胃噴門部領域の興味ある血行動態を呈した直達術後食道胃静脈瘤再発症例につき報告した.
  • 東山 考一, 永瀬 敏明, 藤巻 雅夫
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2400-2404
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍が成因と思われスキルス胃癌との鑑別が困難であった慢性び漫性胃蜂窩織炎の1例を経験したので報告する.
    患者は64歳男性.肺炎の診断で当院内科入院中吐血で発症.胃造影X線検査および胃内視鏡でスキルス胃癌を強く疑われたが胃生検上悪性所見は得られなかった.手術所見では胃は手拳大に萎縮しており胃全摘・脾合併切除術を行った.病理所見では広範囲に潰瘍が広がり胃壁の線維性肥厚と著明な形質細胞の浸潤を認め慢性胃蜂窩織炎の診断を得た.
    胃蜂窩織炎はまれであり極めて診断困難な疾患であるが, 診断にあたってはまず本症の存在を念頭におく必要があると痛感した.
  • 市成 秀樹, 井上 正邦, 関屋 亮, 崎浜 正人, 松崎 泰憲, 谷川 誠, 柴田 紘一郎, 古賀 保範, 百瀬 寿之
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2405-2408
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性.脳梗塞にて入院中に上腹部不快感を訴え, 検査にて貧血, 低蛋白血症および便潜血を認めた.上部消化管X線検査にて胃体上部大攣側から前庭部を結ぶ線状陰影と, 十二指腸球部のカリフラワー状腫瘤を認めた, 十二指腸腫瘍の診断であった.内視鏡検査では胃体上部に存在する山田IV型ポリープの十二指腸球部への脱出が観察され, 生検の結果はGroupIIIであった.悪性も否定できず, またポリペクトミーは困難と判断されたので胃亜全摘術を施行した.切除標本では, ポリープは胃体上部大攣側に存在し, 径7cmで2個の頭を有し, 茎はほとんど認められなかった.病理組織診断は腺管腺腫であった.
    胃隆起性病変の十二指腸脱出の報告は比較的少なく, 特に胃体上部以上の腫瘍脱出の報告はまれである.本邦報告例をみると, われわれの検索した範囲では本症例も含め10例のみであり, うち上皮性腫瘍の脱出は本症例のみであった.文献的考察を加え報告した.
  • 猶本 良夫, 合地 明, 上川 康明, 淵本 定儀, 阪上 賢一, 折田 薫三
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2409-2413
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は61歳, 女性.主訴は心窩部不快感.本症例は画像上肉眼型が特異であり, 生検にてDutcherbodyが認められたことから, 胃形質細胞腫を疑い, 確定診断のため一部をpolypectomyし免疫グロブリン染色にてIgM/x型のmonoclonalな形質細胞腫と診断した.切除標本の肉眼所見では胃体部前後壁にそれぞれ脳回様に発育する腫瘤を認め, 皺壁の先端は腫大し, 表面は発赤していた.組織学的に胃粘膜内に発育する形質細胞腫で, 免疫組織学的にIgM/κ型胃形質細胞腫と診断した.諸検査にても他部位に病変をみとめず胃粘膜内発育をする原発性形質細胞腫と診断した.
  • 柴田 近, 佐々木 巌, 内藤 広郎, 舟山 裕士, 神山 泰彦, 高橋 道長, 福島 浩平, 瀬上 秀雄, 土井 孝志, 岩附 昭広, 大 ...
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2414-2418
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性で悪心・嘔吐を主訴とし, 空腹時血漿ガストリン値が高値, セクレチン負荷試験陽性でZollinger-Ellison症候群と診断された.腹腔動脈造影にて膵頭部に腫瘍濃染像を認め, 選択的動脈内セクレチン注入試験により胃十二指腸動脈が栄養動脈と判断された.術中所見として, 膵頭部に3個の腫瘤を認め, うち1個は術前の血管造影時の腫瘍濃染像と一致すると思われた.手術は膵頭十二指腸切除を施行し, 腫瘍切除後の術中セクレチン負荷試験では陰性であることを手術終了前に確認した.組織学的検索にて, ガストリノーマ原発巣は直径5mm大で十二指腸粘膜下に存在し, 術中に認めた腫瘤はそのリンパ節転移と診断された.術後5か月目のセクレチン負荷試験でも陰性であった.本症例では選択的動脈内セクレチン注入試験と術中セクレチン負荷試験の併施により腫瘍の完全切除を行いうると考えられた.
  • 佐々木 誠, 押淵 徹, 浜崎 宏明, 藤本 正博, 梶原 義史, 松尾 繁年, 角田 司
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2419-2423
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸球部膠様腺癌を経験した. 症例は66歳女性, 嘔気, 嘔吐を訴えたため, 上部消化管X線検査, 内視鏡検査を施行したところ, 十二指腸球部に潰瘍を伴うBorrmann2型様の腫瘤を認め, 生検の結果はGroupVであった.原発性十二指腸球部進行癌の診断のもとに, Childの変法による膵頭十二指腸切除術を行い, 治癒切除した.切除標本では腫瘍は, 十二指腸球部大蛮側を中心に広がり, 4.0×0.5×1.0cmの大きさで不整形の潰瘍を伴うBorrmann2型様の外観を示した.腫瘍の主体は十二指腸粘膜下にあり, 腫瘍細胞は, PAS染色陽性で, ムチン産生性の膠様腺癌と診断され, 組織学的には, Brunner腺から発生したものと考えられた.十二指腸球部の膠様腺癌は, 本邦では自験例が初めてと思われるので, 若干の文献的考察を加えて報告する
  • 原田 晴久, 野口 徹, 浦山 弘明, 杉山 敦, 志賀 知之, 沼田 稔, Masatoshi Makuuchi
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2424-2428
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    心窩部膨満感および上腹部腫瘤を主訴とする48歳の女性の多発性肝嚢胞症に対して, 1985年に嚢胞壁前壁切除術と開窓術を施行した.ひき続き本症例の姉も多発性肝嚢胞で当科にて同様の手術を行った.家族歴を詳細に調べたところ家系内に疑診者1名を含め計7名の多発性肝嚢胞症の集積を認めた.本家系のように濃厚な本症集積例の報告はまれである.遺伝様式の追究も含め嚢胞性疾患の家系内調査は必ず行うべきと考える.
    さらに本症例は初回手術3年後に, 症状が再燃し画像診断上も遺残嚢胞の増大と嚢胞壁前壁切除部の腹壁との癒合を認めたため, 超音波誘導下嚢胞内純エタノール注入療法が行われた.約10個の嚢胞に対しておのおの1~4mlのエタノールを注入し再排液しない方法で行ったが, 今日まで嚢胞は縮小したままである.類似症例に対して本法を積極的に行うつもりである.
  • 中山 浩一, 星野 正美, 小野 俊之, 小山 善久, 井上 典夫, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2429-2432
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    組織型を異とする多発性胆嚢癌の, 1切除例を報告する, 症例は78歳の女性で右上腹部痛を主訴とし, 腹部超音波検査にて肝左葉内の腫瘤と音響陰影を伴う胆嚢結石像が描出された, 内視鏡的逆行性膵・胆管造影では, 胆嚢および総胆管内の多数の透亮像があり, 総胆管の拡張と圧排像が認められた.血管造影では, 胆嚢底部, 体部, 肝外側区域及び肝十二指腸間膜内に血管増生像がえられた.肝床切除, リンパ節郭清を伴う拡大胆嚢摘出術, 肝左葉外側亜区域 (S3) 切除術を施行した.切除標本にて, 胆嚢内には2.0×2.0×1.0cmの腺扁平上皮癌と0.6×0.6×0.5cmの高分化型腺癌の病巣が独立して存在した.肝十二指腸間膜内腫瘤は扁平上皮癌から成るリンパ節転移で, 肝腫瘤もまた扁平上皮癌の転移であった.自験例は腺癌と扁平上皮癌の生物学的な増殖, 進展の違いを示唆する興味深い多発胆嚢癌であった.
  • 高橋 雅司, 石井 洋, 小泉 雅典, 佐野 進
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2433-2436
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    植物を核として形成された総胆管結石は極めてまれであり, しかも開腹手術歴のない患者に発生した例は本邦で2例目である.症例は34歳の男性で, 主訴は上腹部痛と発熱である.超音波検査と腹部computed tomographyから総胆管結石と診断された.胆嚢摘出術と総胆管切石術を施行した.総胆管結石は植物を核として, クリスマスツリー状に形成されていた.核となっていた植物は走査電顕を用いた鑑定の結果, イネ科の野生の植物と判明した.術後塩酸負荷胆道内圧測定を施行したところ, 乳頭筋は正常反応型を示した.何らかの機序で, 総胆管内への経口摂取物の逆行性進入が起こりうることが示唆された.
  • 藤野 泰宏, 佐藤 美晴, 斎藤 洋一
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2437-2441
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性.胆石症にて胆嚢摘出後2か月で黄疸を主訴として発症.経皮経肝胆道造影における中部胆管狭窄像および胆汁細胞診より胆管癌と診断され保存的加療を受けていた.その後全身状態の悪化や腫瘍の増大を認めなかったため, 開腹術施行.胆嚢管合流部から下部胆管にかけて, 弾性硬で表面不整な5×3cmの腫瘤を認め, 膵頭十二指腸切除が施行された.組織学的には, 胆管壁に肥大した神経腫が多数増生し断端神経腫を形成しており, 胆嚢摘出後に生じた胆管断端神経腫と診断した.胆嚢摘出術2か月という極めて早期に閉塞性黄疸を主訴として発生し, 胆管癌と鑑別困難であった胆管断端神経腫の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 川角 博規, 佐々木 洋, 今岡 真義, 桝谷 誠三, 大橋 一朗, 小川 淳宏, 岩本 伸一, 石川 治, 古河 洋, 岩永 剛, 工藤 ...
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2442-2446
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    最近, われわれは, 右側腹部腫瘤に対し各種画像診断を試みたが, 術前確定診断をつけるのが極めて困難であった末梢型胆管細胞癌の症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で体重減少を主訴として近医を受診し, computed tomography (CT) で腹部腫瘤を指摘され紹介となった.腹部CTおよびmagnetic resonance imageでは肝右葉後区域から右副腎におよぶ浸潤性発育を示す腫瘤が描出された.血管造影上, 腫瘤はhypervascularで強い腫瘍濃染を示し, 肝動脈造影ではarterio-portal shuntがみられるがencasementやstretchingは認められなかったため, 胆管細胞癌よりもむしろ右副腎癌の肝浸潤の術前診断のもとに手術を行った.病理組織学的にはムチン産生と中等度結合織を伴う管状腺癌から成る胆管細胞癌であり, 豊富な腫瘍血管の増生のため血管造影で特異な像を呈したものと思われた.
  • 秋山 裕人, 新実 紀二, 横井 俊平, 津金 恭司, 岩田 博英, 鳥居 良彦, 鈴木 正康
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2447-2451
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ハンドル外傷による主膵管断裂を伴った膵頭部断裂を経験した.主膵管は修復不能であったが, 経十二指腸的膵管内カテーテル挿入術が有効であったので報告する.症例は57歳男性.飲酒運転で衝突し腹部を打撲.受傷後16時間後に呼吸困難, 心窩部痛, 嘔吐のため救急車で来院した.諸検査より膵頭部損傷, 腹腔内出血, 外傷性膵炎と診断され緊急開腹術を行った.膵頭部前壁に上腸間膜静脈の露出を見る4cmの断裂があり, 主膵管は後壁がわずか燵続して6mmにわたって欠損していた.膵散損部を橋渡しさせカテーテルを挿入固定後に膵実質断裂部を縫合し, カテーテルの他端を経十二指腸的に体外に誘導留置した.術後の膵液瘻は難治であったが, 治癒後の内視鏡的逆行性膵管造影で膵管の開存は十分に保たれた, 本術式は膵の正常解剖と生理機能を温存でき, 膵挫滅が軽度で主膵管の縫合再建困難な膵頭部損傷に有効であると考えた.
  • 天野 実, 森 英昭, 松川 俊一, 前田 潤平, 宮田 昭海, 林田 政義, 入江 準二, 冨岡 勉
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2452-2456
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵外に発育した非機能性膵島腫瘍の1例を経験した.症例は56歳男性で, 定期原爆検診で左上腹部腫瘤を指摘され, 著者らの病院に入院した.
    膵内分泌ホルモソ過剰分泌による症状は認められなかった.腫瘤は膵尾部より膵外に発育しており, 膵の一部を含めて腫瘤を摘出した.大きさは13.6×11.8×9.4cm, 900gで, 病理組織診断は疑悪性の非機能性膵島腫瘍であった.
    術後3年半後の現在, 再発の所見もみられず健在であるが, なお経過観察中である.
  • 川人 宏次, 井上 淳, 久保 琢自, 出川 寿一, 高木 淳彦, 坂本 昌義, 丸山 雄二
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2457-2460
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵のsolid and cystic tumorの1例を経験したので報告する.症例は15歳の女性で, 主訴は左上腹部痛である.入院時臨床検査所見では異常を認めなかったが, 腹部超音波検査, CT, 血管造影検査より膵体尾部腫瘍と診断した.入院3日目から上腹部の激痛, 嘔吐などの急性腹症を呈し緊急に膵体尾部切除術を行った.腫瘍はよく被包化され, 12×9×6cm大で内部には出血壊死が著明であった.病理組織所見では腫瘍組織は充実性および乳頭状に増殖しており, 免疫組織化学的検査ではα1-antitrypsinが陽性であった.電顕上zymogen様顆粒は認められなかった.以上によりsolid and cystic tumor of the pancreasと診断した.術後4年の現在再発なく健在である.
  • 浅利 靖, 島津 盛一, 西村 博行, 新井 伸康, 中 英男, 大和田 隆, 比企 能樹, 柿田 章
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2461-2465
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    中年の男性に発生した巨大な膵のsolid and cystic tumor (SCT) を経験し, その臨床経過よりdoubling timeを算出した.また本邦報告例139例について検討した.症例は58歳男性.腹部腫瘤を主訴に入院.開腹したところ, 膵体部に被膜におおわれ充実性かつ弾性軟の, 24×19×8cmの腫瘤が存在し, 膵体尾部脾合併切除施行.病理組織学的に, 充実性で髄様増殖パターンを呈し, 免疫染色では上皮系マーカーに陽性でありSCTの診断を得た.4年前の初診時の腫瘍径と今回術前の精査時の腫瘍径とからdoubling timeを算出したところ, 240日とslow growingな腫瘍に分類されることを証明しえた.本邦報告例139例について検討したところ, 本例は男性例としては最年長かつ最大の腫瘍径を持つものであった.術後1年経過した現在, 患者は健在であり, 再発も認められていない.
  • 吉田 寛, 恩田 昌彦, 田尻 孝, 金 徳栄, 岡崎 滋樹, 梅原 松臣, 真々田 裕宏, 谷合 信彦, 西久保 秀紀, 寺本 忠, 田島 ...
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2466-2470
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    急性上腸間膜動脈閉塞症 (根部完全閉塞) に対し, 発症後早期にウロキナーゼを動注し, 回盲部切除のみで救命しえた症例を経験したので報告する.症例は56歳男性で, 10年来の心房細動, 十二指腸潰瘍, 一過性の右片麻痺があった.突然の腹痛を主訴に, 発症3時間後に来院.腹部所見, 腹部単純X線, 既往歴より上腸間膜動脈閉塞症を疑い, 発症4時間後に緊急血管造影を施行し, 上腸間膜動脈本幹の完全閉塞を認めた.選択的ウロキナーゼ短時間大量動注療法 (60万単位/時間, 1時間) にて造影像の著しい改善と症状の消失を認めたため, さらに持続動注療法 (2万単位/時間, 9時間) を施行した.翌日, 下血, 右下腹部痛が出現し, 再度血管造影を施行.回結腸動脈末梢に無血管野を認めたため, 発症18時間後開腹し, 盲腸部の壊死を認め回盲部切除施行し短腸症候群を回避しえた.術後, 下血は消失し, 血管造影, 小腸造影でも異常所見を認めず, 経過良好にて退院となった.
  • 鍋谷 圭宏, 中村 宏, 今野 秀次, 平嶋 毅, 朱 綜杰, 伊賀 多朗, 長尾 孝一
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2471-2475
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で, 急性の腹痛, 嘔気, 嘔吐を主訴として腸閉塞の診断で入院した.腹部の単純X線超音波, computed tomography検査などから腸重積症を疑い, 保存的にイレウス管による減圧をはかったが改善しないため, 5日後に緊急手術を行った.開腹所見では回盲部腸重積症で, 用手整復が困難なため回盲部切除と端々吻合術を施行した.切除標本では回盲弁から約20cmの回腸に3.5×3.0×2.5cmのポリープ状粘膜下腫瘤が存在し, 重積先進部となっていた.組織学的には, 粘膜下組織原発のまれな発育形式を呈した腹腔内デスモイド腫瘍と診断された.本症例では大腸腺腫症の併存はなく, 腹腔内デスモイド腫瘍単独症例としては文献上本邦第16例目, さらに腸重積症をきたした症例としては本邦第1例目と思われる.術後経過は順調で, 第31病日に軽快退院した.腸重積症の術前画像診断, 特に腹部超音波検査の有用性を強調したい.
  • 大田 守雄, 大田 治, 金城 治, 大嶺 靖, 城間 寛, 喜名 盛夫, 古謝 景春, 草場 昭
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2476-2480
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは横行結腸癌を伴った播種性糞線虫症の1例を経験した.症例は69歳女性, 主訴は腹部膨満感および腹痛.術前の注腸造影で, 右側横行結腸癌を疑われた.入院直後より咳嗽が続くため喀痰検査を施行した.喀痰細胞診で糞線虫のフィラリア型幼虫およびラブジチス型幼虫を多数検出した.また, 喀痰細菌培養検査ではグラム陰性桿菌 (E.Coli) が検出された.播種性糞線虫症と診断し, 内視鏡にて十二指腸下行脚より生検を施行, 十二指腸粘膜の腺細胞および腺腔内に多数の虫体を認めた.thiabendazoleの内服を術前より開始し, 手術は横行結腸部分切除術および人工肛門造設術を施行した.術後もthiabendazoleによる治療を引き続き行い, 肺炎は軽快した.現在では流行地以外でも糞線虫症に遭遇する可能性があり本症に留意する必要がある.
  • 加納 宣康, 山田 直樹, 二村 直樹, 古村 能章, 前田 浩幸, 田辺 博, 伊東 久雄, 斉藤 雅之, 木村 友彦, 池田 庸子
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2481-2485
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれは最近, 直腸癌が原因となったと考えられる直腸脱の1例を経験したので報告する.患者は54歳, 男性.主訴は肛門部の腸管脱出.家族歴および既往歴に特記すべきことなし.1990年2月15日, 便意があったためトイレで怒責したところ, 肛門より腸管の脱出を来したため当院を緊急受診した.来院時, 肛門部には直腸が脱出していたが, その大部分は乳頭状あるいは絨毛状に発育した全周性の腫瘍により占められていた.脊髄麻酔下に整腹した後, 注腸造影および内視鏡検査で直腸癌と確定診断して腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本所見で腫瘤は大きさ11.0×14.0cm, 全周性で, 腫瘤の表面は地図状あるいは絨毛状に隆起し辺縁は明瞭であった.病理組織学的検査では高分化型腺癌で大部分は粘膜内にあり一部で粘膜下に達していた.リンパ節転移はなかった.また癌の辺縁にはtubulovillous adenomaを認めた.直腸脱を合併した直腸癌例はきわめてまれである.
  • 吉田 和彦, 田部 昭博, 中川 辰郎, 石田 秀世, 養田 俊之, 穴沢 貞夫, 桜井 健司
    1991 年 24 巻 9 号 p. 2486
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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