日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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31 巻, 12 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 須原 貴志, 辻 恭嗣, 加藤 元久, 国枝 克行, 梅本 敬夫, 宮 喜一, 佐治 重豊
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2303-2311
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌腹膜播種性転移の簡便な診断法として, CEA抗原が細胞膜にphosphatidylinositol anchorで疎水結合し, これがphosphatidylinositol phospholipase C (PIPLC) で切断され可溶化する現象を応用した診断用キットを開発・試作した. 方法: 腹腔洗浄液をGlass Microfibre Filter (GMF) で可及的濾過し, 細胞沈渣を抗CEA抗体含有固相化フィルム上に接触させ, 0.05単位のPIPLCを添加し60分間反応後発色させ, 非添加例との間で比較し色調差を認めた例を陽性と判断した (PIPLC-kit法). 対象は胃癌63例で開腹時に細胞診を施行しPIPLC-kit法の有用性を評価した. 結果: 細胞診陽性の16例はPIPLC-kit法でもすべて陽性であった. 陰性47例中PIPLC-kit法で5例が陽性と判定された. 肉眼的腹膜播種陰性の52例中細胞診で5例, PIPLC-kit法で10例が陽性であった. 以上の結果, PIPLCkitは腹膜播種性転移の簡便な早期診断法として有用である可能性が示唆された.
  • 松崎 圭祐, 戸田 智博, 川野 豊一, 三浦 修, 南園 義一, 長崎 進, 安井 弥
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2312-2318
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1986年から1995年に施行した早期胃癌手術326症例のうちリンパ節転移を認めた21例について, ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いてABC法にて癌関連遺伝子であるp53, c-erb B2, cyclin E, CD44について免疫組織学的検討をおこない, その陽性率について対象群40例と比較検討した. p53, cyclin E, CD44のいずれにおいても陽性率は転移群で有意に高率であり, 3遺伝子ともに陽性を示した症例はn (+) 群: 7/21 (33%), n (-) 群: 3/40 (8%) で. n (+) 群で有意に高率であった. さらにcyclin EまたはCD44が強陽性を示した7例は全例がn (+) 群であった. 1996年度の手術症例29例について, 生検標本において転移高危険群と判定した症例は計4例で, n (+) の2例はもれなく含まれていた. 以上より, p53, cyclin E, CD44陽性症例ではリンパ節転移の危険性が極めて高いことを考慮すべきで, 生検組織による術前判定が可能であり, 最適の治療法や術式の決定に活用できるものと考えられた.
  • 粕谷 孝光, 佐藤 勤, 佐藤 泰彦, 草野 智之, 浅沼 義博, 小山 研二
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2319-2326
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Heat shock protein (HSP) 誘導により肝阻血再灌流障害が軽減されるか否かを確認するため, 1) 正常および肝硬変ラットに熱ストレス (HS) を加え, その後の肝組織内HSP72蛋白量をimmunoblot法にて経時的に測定した. 2) HSP誘導群と非誘導 (対照) 群で肝阻血再灌流を行い, 肝細胞核DNA損傷度とミトコンドリア (m). GOT値を検索し肝障害度を比較した. その結果, 1) 43℃, 15分間のHS後48時間でHSP72誘導量は正常肝, 硬変肝で対照の各3.9倍, 3.5倍と最大に達した. 2) HS48時間後に60分肝血行遮断し再灌流1時間後の肝細胞核DNA損傷度とm-GOT値を調べたところ, 正常肝では対照群と比べHSP誘導群で有意に低値であり, この障害軽減効果は, HSP誘導阻害剤のQuercetin前投与により阻害された. 一方, 硬変肝ではHSP誘導による障害軽減効果を認めなかった. したがって, 正常肝では, あらかじめHSを加えることにより阻血再灌流障害を軽減することが可能で, その機序としてHSP誘導が重要と考えられた.
  • 藪下 和久, 小西 孝司, 野島 直巳, 佐藤 貴弘, 木村 寛伸, 前田 基一, 黒田 吉隆, 辻 政彦, 三輪 淳夫
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2327-2333
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去15年間における大腸癌同時性肝転移手術症例のうち, 原発巣に対して治癒手術が可能であった76例の5年生存率は19.9%であり, 8例の5年以上生存例を得た. 肝病巣が肉眼的に切除可能であった治癒的肝切除群40例を, 肝切除が不完全, あるいは行われなかった非治癒的肝切除群36例と比較すると, 治癒的肝切除群の5生率は29.1%であり, 非治癒的肝切除群の4.9%に比べ有意に予後良好であった. 肝転移程度別では, H1における5生率は治癒的肝切除群31.1%, 非治癒的肝切除群0%, H3においては42.9%, 0%であり, H1のみならず, H3においても治癒的肝切除群の予後が有意に良好であった. また治癒的肝切除群の予後に, 肝転移個数, 肝転移巣の腫瘍径, 切除術式の各因子は有意な影響を与えなかった. 切除可能な症例であれば, 多発性肝転移症例においても, 積極的な肝切除術が予後向上に有用であると考えられた.
  • 井上 雄志, 鈴木 衛, 吉田 勝俊, 手塚 徹, 高崎 健, 村田 洋子, 鈴木 茂
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2334-2337
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸早期癌255例 (m癌182例, sm癌73例) の選択術式, リンパ節転移および予後を検討し, 治療方針につき考察した. m癌およびsm1癌にはリンパ節転移はみられなかった. 脈管侵襲とリンパ節転移は, sm浸潤が進むに伴い増加した. また, リンパ節転移はリンパ節郭清を行った50例中5例 (10%) で, 全例sm2以深で, 脈管侵襲陽性であり, 脈管侵襲陰性例にはリンパ節転移はみられなかった. 以上よりm癌およびsm1癌は局所切除 (内視鏡切除術あるいは経肛門的腫瘍切除術) で根治可能と思われた. また局所切除で断端陰性となる症例では, まず局所切除を行い, 病理所見で壁深達度がsm2以深で, 脈管侵襲陽性の場合に追加腸切除を行うべきで, 腹会陰式直腸切断術の選択は, QOLの立場から慎重であるべきと思われた.
  • 河原 秀次郎, 平井 勝也, 青木 照明, 足利 建, 佐藤 慶一, 小野 雅史, 鈴木 俊雅
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2338-2345
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1980年-1993年の14年間に当教室で経験した下部直腸進行癌根治度A症例で側方リンパ節郭清がD2郭清とD3郭清が施行された171例を対象とし, 至適側方リンパ節郭清の程度について検討した. stage II, IIIa, およびstage IIIbの側方第2群以上にリンパ節転移をみない症例, つまり全対象症例の約90%の症例では側方D2郭清群とD3郭清群に累積生存率で有意差は認められなかった. 一方, 全対象症例の約10%であるD3郭清を施行した側方第2群以上のリンパ節転移例では, その約半数に5年以上の長期生存をみた. よって下部直腸進行癌に対する側方リンパ節郭清は, まず内腸骨動脈の前面に沿ったいわゆるD2郭清を行い, 術中迅速診断で側方第2, 3群リンパ節転移陽性と判断された場合にD3郭清を行うべきである. またリンパ節被膜外病変を伴う症例は単なる外科的治療だけでは十分な根治性が得難いと考えられた.
  • 臼田 昌広, 小泉 雅典, 國府田 博之, 中原 千尋, 植木 浜一, 柴崎 信悟
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2346-2349
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過食後の急性胃拡張により胃壊死をきたした1例を経験した. 症例は66歳の男性, 器質性精神病で他院精神科に入院中突然の激しい腹痛を訴え始めたため当院紹介となった. 来院時, 腹部は著明に膨隆し板状硬, 上腹部を中心に圧痛を認めた. 腹部単純X線写真で胃壁内ガス像を認めた. CTでは肝左葉を中心とする肝内門脈のガス像と大量の残渣で著明に拡張した胃および胃壁内ガス像を認めた. 発症前の過食の有無は不明であったが以上の所見より急性胃拡張による胃壊死と診断し緊急開腹手術を施行した. 胃内に大量の食物残渣を認め, 幽門部の一部を除く胃のほぼ全域で粘膜の壊死が認められた. 胃全摘術を施行し術後経過は良好であった. 過食後の急性胃拡張による胃壊死はまれな疾患であるが, 本症例のような精神疾患を基礎とした発作的過食後の激しい腹痛では常に念頭におかなければならない. この際CTや単純X線写真検査の所見は診断に有用である.
  • 飯山 仁, 中根 恭司, 井上 健太郎, 佐藤 睦哉, 明平 圭司, 岡村 成雄, 日置 紘士郎, 坂井田 紀子, 岡村 明治
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2350-2353
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 主訴は特になく検診にて上部消化管透視を施行され, 胃体小彎にIIc病変を指摘された. 術前に施行された腹部超音波検査 (以下, US) および, 腹部CTで胆嚢頸部にポリープ様病変を認めたため, 胃切除時に胆嚢ポリープの診断の下に胆嚢の摘出も行った. 胆嚢頸部に5×5mmの漿膜下の腫瘤を認め, 病理組織学的に膵腺房, 導管, Langerhans島組織を有するHeinrich I型の異所性膵と診断された.
  • 松本 耕太郎, 清水 周次, 山口 幸二, 千々岩 一男, 高嶋 雅樹, 田中 雅夫
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2354-2358
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性. 右季肋部痛を主訴に当科受診. 超音波検査で胆嚢は浮遊物を含む胆汁で緊満腫大し, 底部に径5cm大の内部不均一な腫瘤を認めた. 腹部CTでは底部腫瘤と腹壁や横行結腸間膜との境界が不明瞭であり, 血管造影では胆嚢底部に血流に富む腫瘤影を認めた. ERCPでは胆管は造影されるも胆嚢は頸部で完全閉塞し造影されなかった. 以上より胆泥を充満する胆嚢底部原発胆嚢癌と診断し, 癒着していた周囲組織を含み拡大胆嚢摘出術を施行した. 切除標本の検索で術前指摘されていなかった丈の低い隆起性病変を頸部から胆嚢管にかけて認めた. 術中迅速病理検査では底部腫瘤は黄色肉芽腫性胆嚢炎 (XGC), 頸部病変は腺癌と判明し, 胆管切除術および2群+16番リンパ節郭清を追加した. 最終診断はGn, circ, 結節浸潤型, P0, H0, n0, ss; stage IIであった. XGCと胆嚢癌の鑑別は画像上は困難である. 両者合併も念頭に置き, 術中に正確な診断を下すことが重要である.
  • 渡部 広明, 角 昭一郎, 漆畑 貴行, 岩崎 伸治, 佐々木 晋, 矢野 誠司, 仁尾 義則, 田村 勝洋
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2359-2363
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性. 平成4年8月, 重症急性膵炎を発症し, 保存的治療で軽快した. 今回, 胆石・仮性膵嚢胞に対する治療目的で紹介された. 画像所見で胆嚢内に胆石と約1cm径の隆起性病変を認め, ERCPでは合流異常が発見された. 胆石, 胆嚢ポリープ, 膵胆管合流異常の診断のもと胆嚢・総胆管切除. Roux-en Yによる総肝管空腸吻合を行った. 胆嚢には15個の胆石, 多数の隆起性病変を認め, 迅速病理検査で胆嚢癌と診断された. 胆嚢癌の肉眼所見は, S0, Hinf0, H0, Binf0, P0, N (-), M (-), Stage I, R1, DW0, HW0, EW0であった. 合流異常症における膵炎は一般に軽症にとどまるとされるが, 胆石などの付加的因子が存在すれば重症化する場合もあるものと思われた.また膵炎症例では, 合流異常の存在を念頭に置き, より早期に合流異常を発見し, 胆道癌を含めた合併症の早期治療を行うことができるものと思われる.
  • 奥山 裕照, 岩田 辰吾, 小浜 和貴, 田中 仁, 橋田 裕毅, 中村 吉昭, 牧 淳彦, 高林 有道
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2364-2368
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    回腸腸間膜静脈瘤を原因として消化管出血を来したWilson病の1例を経験した. 症例は28歳の女性.19歳時よりWilson病と診断され, 小康状態であった. ところが平成8年12月13日より突然下血を繰り返したため, 平成8年12月16日, 精査目的に入院となった. 血管造影 (上腸間膜静脈相) にて右卵巣静脈とシャントを形成する回腸腸間膜静脈瘤を認め, その部位からの出血と診断し, 腸間膜静脈瘤を含む回腸部分切除術を施行した. 既往歴に虫垂切除術があり, 腸間膜静脈瘤の発生に関与したと考えた. Wilson病を基礎疾患とする異所性静脈瘤の報告例は本邦初でまれであり報告した.
  • 塚本 忠司, 太田 泰淳, 山本 隆嗣, 久保 正二, 広橋 一裕, 木下 博明
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2369-2373
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性. 1990年10月左腎癌の診断のもと左腎摘出術をうけ, 術後インターフェロンを投与された. 1996年10月検診の上部消化管造影検査にて異常陰影を指摘され, 精査の結果胃癌と診断された. 11月18日開腹すると胃角部に3×2cmのIII+IIc類似進行癌を認め, さらに空腸起始部に6×9cmの腫瘤を認めた. 胃癌に対し胃幽門側切除術, D2リンパ節郭清を, 小腸腫瘍に対し口側断端を十二指腸第4部とした小腸部分切除術を行った. 再建は空腸断端を十二指腸第2部に側側吻合したのち, BillothII法による胃空腸吻合を行った. 病理組織診断は胃癌は高分化型管状腺癌, 小腸腫瘍はmalignantlymphoma of mucosa-associated lymphoid tissueであった. 術後VEPA療法を施行し術1年7か月後の現在, 再発の徴候なく健在である.
  • 松本 勲, 高橋 一郎, 品川 誠, 吉田 政之, 山崎 四郎, 花立 史香
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2374-2378
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Fitz-Hugh-Curtis症候群 (以下, FHCSと略記) はクラミジアや淋菌感染により引き起こされる肝周囲炎である. 我々はFHCSから腸閉塞となり, 手術を必要とした興味ある1例を経験した. 症例は21歳の女性. 右季肋部から臍周囲の疼痛と嘔吐を認めた. 腹部単純X線写真上著明な小腸拡張と鏡面像形成を認め, 腸閉塞と診断された. 減圧チューブを挿入したが, 症状が遷延したため手術を施行した. 腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ, 腹壁と肝表面, 大網および腸管の間にviolin string状の癒着性索状物を多数認めた. この索状物が回腸を取りまき通過障害をおこしていた. また子宮および付属器の強い発赤を認めた. 手術所見と血清クラミジアトラコマティス抗体陽性であることからクラミジア感染症による腸閉塞を伴ったFHCSと診断した. 近年性行為感染症としてクラミジア感染が増加しており, 性的活動性のある女性で右季肋部痛が先行する症例ではFHCSの関与を念頭に置くべきである.
  • 宇高 徹総, 堀 堅造, 安藤 隆史, 辻 和宏, 高垣 昌巳, 山根 正修
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2379-2382
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下血を主訴とし. 腸重積を呈した単発性Peutz-Jeghers (P-J) 型空腸過誤腫の1例を経験したので報告する.
    症例は47歳の男性.1996年10月2日頃より下血を認め入院となった. 小腸造影検査で空腸に腫瘍を認め, 1週間後の腹部超音波, CT検査で空腸に腸重積の所見を認めたが, 腹部症状は認めなかった. 小腸造影の再検査では腸重積を認めなかった. 腸重積を呈した空腸腫瘍と診断して11月26日手術を施行した. トライツ靱帯より50cmの空腸が三筒性の重積をきたしていた. 用手的に整復した後, 腫瘤を含め20cmの空腸を切除した. 摘出標本では, 腫瘍は有茎性のポリープで, 病理組織学的診断は, P-J型の過誤腫であった.自験例では, 過誤腫による無症状の腫重積を起こしては自然に軽快するという興味深い経過をたどっていた. また, 本疾患は良性腫瘍であるため腸切除よりは腸切開・ポリープ切除が適切な手術法であると思われた.
  • 広利 浩一, 山崎 左雪, 河島 秀昭, 原 隆志, 石後岡 正弘, 細川 誉至雄
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2383-2387
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    成人の空腸間膜に発生した仮性嚢胞を経験したので報告する. 症例は34歳の女性.4年前より腹部腫瘤を自覚していたが, 徐々に増大傾向を認めたため, 当院を受診. 既往歴は外鼠径ヘルニアの手術歴のみであり, 明らかな腹部外傷の既往を有していない. 腹部超音波およびCTにて径7cm大の単房性嚢胞を認めた. また腹部MRIにて嚢胞内部の上方はT1 WI super high, T2 WI high, 下方はT1 WIおよびT2 WI highと二層性を示した. 腸間膜嚢胞の診断にて開腹, 空腸間膜に径7cm大の嚢胞を認め, 摘出した. 嚢胞内容物は黄白色調の粘稠度の高い泥状の液体であった. 病理組織学的に仮性嚢胞と診断した. 本症の本邦報告例は自験例を含め9例であり, 極めてまれな症例と考えられた.
  • 杉浦 禎一, 新實 紀二, 横井 俊平, 神谷 里明, 鈴木 正彦, 青野 景也
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2388-2391
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の男性, 日系ブラジル人. 主訴は左側腹部痛. 腹部所見で筋性防御, CTで小腸の限局性の肥厚を認め開腹術を施行した. 手術所見では約30cmの範囲の回腸壁の発赤と, 同部位の回腸静脈および上腸間膜静脈内の血栓を認め, 回腸部分切除を行った. 術後3日目に再び腹痛を訴え, CTでも小腸の広範囲な浮腫, 腹水を認めたため再開腹し広範囲小腸切除を施行した. 再手術後はヘパリン, ウロキナーゼの持続点滴とワーファリンの内服により軽快退院した. 患者には特に既往歴はなかったが, 家族歴として父と兄が上腸間膜静脈血栓症を発症していた. また, 凝固機能異常としてプロテインSが低値を示した.
    本症例は悪性腫瘍, 感染症, 薬剤服用その他血栓症の誘因となるものはなく, プロテインS欠乏症による凝固異常症が原因と考えられた.
  • 船田 幸宏, 中野 眼一, 菊池 隆一, 内田 雄三
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2392-2396
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸切除術後に発生し, その後44年間放置された皮膚腸瘻の1例を経験した. その治療から長期間空置された大腸と肛門の機能および組織学的変化を検討しえたので報告する. 症例は69歳の男性で腸痩周囲の皮膚炎を主訴に来院した. 大腸はS状結腸と直腸のみ残存し, 皮下にて回腸と吻合されており, その吻合部が皮膚腸瘻を形成していた. 直腸生検では粘膜の慢性炎症細胞浸潤, 陰窩の乱れと萎縮, 粘膜表層のびらんが認められた. 手術は, 腸瘻部を含めた腸管切除および回腸直腸吻合術を施行した. 術後2か月間, 水様軟便がみられ, 廃用性の水分吸収機能障害によるものと考えられた. 術後3か月の直腸生検では, 炎症所見は消失していた. 肛門管最大静止圧は術前40cmH2Oと低値であったが, 術後3か月で80cmH2Oまで回復した. 肛門の再使用により, 低下した括約筋機能が回復したと考えられた.
  • 森田 敏弘, 山内 利夫, 熊沢 伊和生, 堅田 昌弘, 山田 慎, 佐治 重豊
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2397-2401
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    虫垂に限局したCrohn病は非常にまれな疾患で, 本邦では10例の報告をみるにすぎない. 今回, われわれは虫垂Crohn病と診断された1例を経験したので報告する. 症例は20歳の男性, 右下腹部痛を主訴に当科を受診した. 受診時, 右下腹部に圧痛, 筋性防禦を認めた. 腹部超音波, 腹部CTで回盲部に腫大した腫瘤陰影を認めた. 急性虫垂炎と診断し, 緊急開腹術を施行した. 虫垂は炎症性に著明に腫大しており, 35×30mmの大きさであった. 虫垂腫瘍と診断し, 2期的にD2リンパ節郭清を伴う回盲部切除を施行した. 術後の病理組織検査で, 虫垂に全層性炎症性病変, 非乾酪性小型肉芽腫および裂溝が認められ, 虫垂Chohn病と診断された. 術後経過は順調で, 2年経った現在, 再発の徴候は認めていない.
  • 下村 誠, 世古口 務, 藤井 幸治, 北川 真人, 中村 菊洋, 山本 敏雄
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2402-2406
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    患者は68歳の男性で, 直腸癌の術前, 肝性脳症をきたし, 当科へ緊急入院した. 血中アンモニアは191μg/mlと異常高値を示し, 上腸間膜動脈および腹腔動脈造影静脈相にて上腸間膜静脈より下大静脈に流入する巨大短絡路を認め, 上腸間膜静脈および脾静脈の血流はすべて短絡路を介し下大静脈へ流入し, 門脈は遠肝性の血流を認めた. バルーンによる短絡路閉鎖試験では閉鎖後上腸間膜静脈の血流は門脈を介し肝へ流入し, 門脈圧は17mmHgより20mmHgに増加した. 猪瀬型肝性脳症を合併した直腸癌の診断で, 短絡路を結紮したのち, 腹会陰式直腸切断術を施行. 術後血中アンモニアは低下し脳症は軽快した. 門脈圧は18mmHgより24mmHgへ上昇した (増加率33%) が, 術後1年目の現在, 食道胃静脈瘤の発生は認めず, 肝機能は著明に改善した. 短絡路閉鎖術により脳症の改善とともに肝機能改善の可能性もあり, 積極的に施行すべき有意義な治療法と考えられた.
  • 山本 達人, 的場 勝弘, 池田 宜孝, 佐藤 仁俊, 都志見 睦生, 安藤 静一郎, 都志見 久令男
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2407-2411
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症10例に対して経胆管的にバルーンカテーテルを十二指腸乳頭部まで誘導し, 乳頭を拡張することによって治療を行った. カテーテルの挿入ルートは, 経皮経肝胆道ドレナージの瘻孔経由4例, 腹腔鏡下胆嚢摘出術術中胆嚢管経由5例, 腹腔鏡下胆嚢摘出術後経胆嚢管的ドレナージチューブの瘻孔経由が1例であった. 結石径が10mm以上の4例に対してダイ・レーザーによる胆道鏡下砕石術を併用した.
    10例中9例で1回ないし2回の乳頭拡張によって除石に成功したが, 1例でESTの併用が必要であった. 一過性の高アミラーゼ血症を2例, 胆管炎を1例認めたが, 重篤な合併症は経験しなかった. 術後1年6か月の1症例で結石の再発を認めた. 経胆管的十二指腸乳頭拡張術は, 手技的に容易であり, 合併症も少なく総胆管結石治療の1つの選択肢として有用であると思われた.
  • 若野 司, 犬房 春彦, 足立 俊之, 中嶋 章浩, 進藤 勝久, 安富 正幸
    1998 年 31 巻 12 号 p. 2412
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
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