植物学雑誌
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76 巻, 901 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 田崎 忠良, 牛島 忠広
    1963 年 76 巻 901 号 p. 237-245
    発行日: 1963年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    前報に続き, ポプラ苗の切り取られた茎についている葉の水経済をおもに取り上げたが, クワの葉では取り扱わなかった “鈍葉” (“dull leaf”) の気孔運動の光能動反応についてもふれた. この植物でもクワと同様に, 乾燥に際して気孔が閉じない “鈍葉” の現象が見られたが, 葉の老化による “鈍葉” 化はクワのように急激には起こらず連続的であった. 不活発な水能動反応によって名づけられた “鈍葉” の気孔は, 長時間暗中に置かれた後も開いており, 光能動反応も不活発であることがわかった. したがって,“葉” の気孔は終日開いていることになる. 切り取られた茎についている葉は, 処理後一定時間を経たとき, 切り取られた葉よりも全体として含水量は大きい. この間の蒸散量は, 茎についている葉の方がかえって大きく, この間に茎から相当の水が補給されていることが考えられる. この補給量は実際に計算によっておのおのの葉について明らかになった. 最後に以上実験結果の干ばつ下の植物に対する意義が論じられた.
  • 岩波 洋造, 松村 清二
    1963 年 76 巻 901 号 p. 246-255
    発行日: 1963年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    4種類の花粉にγ線 (137Cs•55kr/hr.) を照射してから, これらの花粉を人工培養して, 生殖核の核分裂に及ぼすγ線の影響について調査した.
    1) γ線の線量の増加にともなって, 生殖核は分裂の速度を減じ, やがて分裂能力を完全に失った.
    2) ヤマユリの花粉において, 生殖核が完全に2つの精核に分れるのは1~5krまでであった.ただし, 20krの照射のときも, 染色体にまでは変るものがみられた.
    3) ツバキの花粉の核は50krの照射によって, 約半数のものが分裂能力を失い, 80krにおいて完全に分裂しなくなった.
    4) サザンカの花粉は25~50krの照射で分裂能力を失った.
    5) ホウセンの花粉は小粒ではあるが極めて放射線に対して抵抗性が強く, 80krの照射によっても, 約半数の花粉の核が分裂能力をもっていた.
    6) 以上のように, 花粉が花粉母細胞や生長点と比較にならないほど放射線に対して強い抵抗性を有しているのは, やくから出る花粉が特殊な状態にある(例: 生長のための準備をすべて終えた後に水分を失っている) からと考えられる.
  • 萩本 宏
    1963 年 76 巻 901 号 p. 256-263
    発行日: 1963年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    1. ツクリタケ (西洋マツタケ, マツシュルーム) 子実体の生長はホルモンによって調整されている. 子実体にいろいろの処理をして現われる反応を基にして生長に伴なう柄中のホルモンの消長を考察した.
    2. T型に前処理された子実体のひだの片側を除去することによってひぎ起こされた柄の屈曲角の大きさは用いた子実体のステージが若いほど大きい. 発育の進んだ子実体は生長するがあまり屈曲しない.
    3. 処理される子実体の発育が進むに従い, ひだを除いた後の子実体の生長量は大きくなる. これは子実体が生長するに従い, 柄中の “surplus hormone” が増加し, ひだを除いた後もこれを費やして生長するからである.
    4. 高さ約40mm の子実体をT型に処理した後, 片側のひだを除くと子実体はひだの残された側に屈曲することがあり (正屈曲). さらに, 一旦正屈曲を起こした子実体が負屈曲に “転換” することがある.
    5. T型に処理した後片側のひだを除いたとき, ひだの残された側に屈曲するような高さ約40mmの子実体のひだを. Agaricusテストにかけると負屈曲が起こる. 若い子実体 (高さ約30mm以下) のひだを, 高さ40mm位のひだを完全に除いた子実体の片側に与えると正屈曲が起こる.
    6. 高さ約40mmの子実体の柄中にはかなりの量の “surplus hormone” が存在し, このうえにさらにひだからホルモンが供給されるとホルモンの濃度が過剰となり, 生長阻害が起こると考えられる.“転換” はホルモンの過剰とその解除およびそれに続く生長促進の結果であろう.
  • 広本 一由
    1963 年 76 巻 901 号 p. 264-272
    発行日: 1963年
    公開日: 2006/12/05
    ジャーナル フリー
    マツタケとアカマツとの問の生活関係を究明するために, 松葉および松根抽出液に対して透析法, 吸着法, 簡単な化学分析法およびペーパークロマトグラフ法を適用して, これら抽出液中の成分物質を探究すると同時に, これら成分物質およびこれらに近縁な物質を用いて, マツタケの培養試験を行なった. 一方マツタケ子実体抽出液にペーパークロマトグラフ法を適用して, 還元糖およびアミノ酸の定性分析を行なった. その結果は次のとおりである.
    a. 松葉および松根抽出液中に含まれる物質として, 還元糖には果糖およびブドウ糖, アミノ酸にはグルタミン 酸, セリン, グリシン, アラニン, バリンおよびロイシンの6種, その他タンニン, シュウ酸, Ca, K, Mg, NH4 およびClなどが見出された.
    b .マッタケ子実体抽出液からは, 還元糖には果糖およびブドウ糖, アミノ酸には松葉抽出液中の6種のほかにアスパラギン酸およびその他数種が見出された.
    c. マツタケ子実体抽出液中の還元糖およびアミ ノ酸の濃度は, 松葉抽出液中のそれらの濃度に比 し, はるかに大である.
    d. マッタケはアカマツの根から果糖, ブドウ糖, グルタミン酸, セリン, グリシン, アラニン, バリン, ロイシン およびその他のアミノ酸を吸収し, これらを子実体中に貯蔵していると思われる. したがって, 本菌はアカマツに対して寄生的関係にある.
    e. 果糖およびブドウ糖はマツタケの生長にいちじるしい影響をおよぼしている.
    f. マッタケ子実体中に多量に含有されるマンニットは, おそらくアカマツから吸収された果糖が還元されたものであろう.
    g. マッタケとアカマッとの生活関係は, シメジとアカマッとの関係よりも一層緊密である.
    h. タンニンはマツタケの生育に有害作川をおよぼす.
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