マツタケとアカマツとの問の生活関係を究明するために, 松葉および松根抽出液に対して透析法, 吸着法, 簡単な化学分析法およびペーパークロマトグラフ法を適用して, これら抽出液中の成分物質を探究すると同時に, これら成分物質およびこれらに近縁な物質を用いて, マツタケの培養試験を行なった. 一方マツタケ子実体抽出液にペーパークロマトグラフ法を適用して, 還元糖およびアミノ酸の定性分析を行なった. その結果は次のとおりである.
a. 松葉および松根抽出液中に含まれる物質として, 還元糖には果糖およびブドウ糖, アミノ酸にはグルタミン 酸, セリン, グリシン, アラニン, バリンおよびロイシンの6種, その他タンニン, シュウ酸, Ca, K, Mg, NH
4 およびClなどが見出された.
b .マッタケ子実体抽出液からは, 還元糖には果糖およびブドウ糖, アミノ酸には松葉抽出液中の6種のほかにアスパラギン酸およびその他数種が見出された.
c. マツタケ子実体抽出液中の還元糖およびアミ ノ酸の濃度は, 松葉抽出液中のそれらの濃度に比 し, はるかに大である.
d. マッタケはアカマツの根から果糖, ブドウ糖, グルタミン酸, セリン, グリシン, アラニン, バリン, ロイシン およびその他のアミノ酸を吸収し, これらを子実体中に貯蔵していると思われる. したがって, 本菌はアカマツに対して寄生的関係にある.
e. 果糖およびブドウ糖はマツタケの生長にいちじるしい影響をおよぼしている.
f. マッタケ子実体中に多量に含有されるマンニットは, おそらくアカマツから吸収された果糖が還元されたものであろう.
g. マッタケとアカマッとの生活関係は, シメジとアカマッとの関係よりも一層緊密である.
h. タンニンはマツタケの生育に有害作川をおよぼす.
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