植物学雑誌
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77 巻, 911 号
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  • 中野 治房
    1964 年 77 巻 911 号 p. 159-167
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1. 本論交は1913年ドイツ国の植物雑誌(Bot.Jahrb.50(4)440)に公表された研究の追加補足を目的とするものであるが, また訂正を志すものでもある. 研究方法は前著におけるように培養試験により, 諸器官の発生を調べ, また特に果実の遺伝性を観察したが, さらに諸外国の博物館や膳葉館における該当種の標本との比較研究にもよった.
    2. 前論文においてはヒメビシ (Trapa incisa S.et Z.) にふたつの形(Formen)(小形と大形)を含むとしたが, その後の研究によると小形が実はヒメビシで, 大形はオニビシの変種 Trapa natans var. pumila auct. (コオニビシ) であることがわかった. この二形の間には推移はなく葉も異なり, また果実の大きさも違うほか, ヒメビシの果実の竪角にはほとんど逆刺が認められない. 培養の結果ではこれが全く認められなかったが, 自然の場合では2~3% くらい,しかも不完全の逆刺 (前後の竪角のうち1本だけにあったり,また1本の逆刺で代表されるという不完全さ) が認められるにすぎない.
    3. 2本角のヒシの場合2本の横角 (lateral) の存在がその特徴であるが,まれに前後の面 (transversal sides) に角状の突起が成立することが特にvar. Jinumai に見られ奇異の感にうたれるが, これはよく見ると決して逆刺を具えず, また4本角のもののようにとがってもいないのでこれを擬角と命名した. 実にこの擬角はがく片から発生する四角ヒシの竪角とは発生が異なり, がく片脱落後そのこんせきから生ずる特殊の突起にすぎない. 著者の経験によれば二角ビシの5形が見られるが, この角の反曲性(recurving)のコウモリビシ(T. bicornis L.f.)が代表種と認められ, 他の4形はその変種と認めるのを妥当とするのである.
    4. 4本角の外国種 T. natans L. の標本を種種しらべたが, これにもいろいろ変化があるとはいえ, 邦産のオニビシ' T. quadrispinosa Roxb. とシノニマスであることがわかった. また邦産のオニビシの三角のものが間々現われるが, これは子の代に皆四角に返えり安定性を持たないことを明らかにした. すべて四角性のヒシ, すなわち, オニビシ, コオニビシ, ヒメビシはがく全部が角を構成するが, ヒメビシの竪角には逆刺の発達が不完全で二角性のヒシに, ある連関性があるように見える.
    5. がく片の全部が脱落して,無角のヒシが形成されることが中国上海附近嘉興南湖産のもので証明され, これを T.acornis Nakanoとした.
    6. 不連続ながら長年の研究で本邦および隣接地域のヒシ属には少なくとも4種, 5変種が存在することが明らかにされた.
  • 伊野 良夫, 門司 正三
    1964 年 77 巻 911 号 p. 168-175
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    火山灰土壌の一種である腐植質アロフェン土壌地域は, ある程度, 耕地または牧草地として利用されているが, 全般に生産力は低く, 原野のまま放置されている地域も少なくない. 著者らはこの種の土壌における有機物の分解と, 分解に関する要因にっいて調べ, 温度およびリンの効果が著しいことを見た. 長野県霧ケ峰山地草原のトダシバ型群落で,表層 (10~20cm) の腐植質アロフェン土壌 (有機物含量30~40%,pH 4.5) を試料に用いた.土壌有機物分解率を土壌から放出されるCO2量から算定した.分解率は源度などの条件をかえて1-2日後に最大になり,その後ゆるやかに減少し,3-6週間後にほぼ一定の値を示した.温度を20°から30°にあげた場合,pH 6.5にした場合に分解率は著しく増大し, また塩類のなかで,Nはほとんど影響を与えず,Kはわずかな増加をもたらし, Pは分解率を著しく高めた. 霧ケ峰の平均気温から土壌微生物の活動期間を月平均気温5°以上の6ヵ月間(5月~10月)とし,温度-CO2放出量曲線から各月のCO2放出量を推定し, 年間の有機炭素分解率を計算し, 132gC/m2の値を得た. この値は1m2の土壌中に含まれる全有機炭素量の0.50%に相当する. 供給量から計算した同様な値は0.65%であった. 酸性土壌でとくに土壌微生物の中で有機物分解に関係の深い糸状菌を稀釈平板法で調べ,対照で1g土壌乾量当り7万,K添加で10万,P添加で15万の値を得た. 糸状菌コロニー数の最大値はCO2放出量の最大値出現後1-4日に認められた.
  • 信夫 隆治, 萱村 善彦
    1964 年 77 巻 911 号 p. 176-180
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    大阪府, 岸和田市の庭園の土壌から分離した放線菌No.738は輪生体を形成し, 形態学的, 生理学的および培養所見的研究から, 従来発表された放線菌と異なることを認めたので新種と断定し, 岸和田市の地名にちなんで Streptomyces kishiwadensis と命名した.
  • 井口 昌一郎, 大信 武志
    1964 年 77 巻 911 号 p. 181-190
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    ヘテロ融合性の Saccharomyces cerevisiae の単相には接合型が aのものとαのものとある. 両型の細胞を適当な条件下で混合培養すれば, ある時間後に接合像をつくるようなる. しかしこれらの接合像-transient heterokaryon-をただちに選択培地に播いても得られる複相集落の数は非常に少ない. 実際にこうして 得られる複相集落の数は接合像がつくられてからある時間経過したものを播いた場合に極大となる. 接合像は細胞質接合の結果生ずるものであり, 複相集落は複相細胞をつくること (diploidization) から始まるのであるから, 細胞質接合 (transient heterokaryon)→核合体 (diploidization)→複相集落の過程を経るものと思われる. 1)混合培養にペプトン,酵母抽出物を添加すると接合像は著るしく増加するが複相集落の数は減少する.クロランフェニコールの添加により,ペプトン,酵母抽出物の接合像に対する効果は阻止される, しかし複相集落の出現は影響されないように見える. 2)以上のことから接合において細胞質接合と核合体はひきつづいて起こる現象であって同時に起こるのではないこと,またそれぞれの現象はちがった要因により影響されることがわかる.
  • 高見 亘
    1964 年 77 巻 911 号 p. 191-196
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
    1) Growth rate of a strain of brewer's yeast inoculated in the range of 2×106-5×106/ ml is greater than that in the range of 7×106-106/ml.
    2) Growth rate in the medium containing initially 4-8% glucose is greater than that in the medium containing 12-16% glucose for the first 10hrs., but for the second 10hrs. the latter exeeds the former, so that in the final stage number of cells in the 12-16% glucose medium is greater than that in the 4-8% glucose medium.
    3) The functional relation among the fermentation period t, the initial size n and the initial concentration of glucose c for the batch fermentation in 150ml John White medium in 300ml flask at 30° is dt=∂t/∂c dc+∂t/∂n dn =1.5dc-2/n dn Integration of the equation gives t=1.5c-2loge n+k (k: integration constant) =1.5c-4.61og10 n+k. In this experiment c=10 and n=3 give t=38, therefore k=25 and the above equationbecomes t=1.5c-4.6log10 n+25.
    4) A simple graphical method for determining the fermentation period is obtained as shown in Fig. 7.
    5) In case of experiments in 100ml John White medium in 200ml flask, the equation obtained is dt=dc-2/n dn t=c-4.6log10n+26
  • 豊国 秀夫, 豊国 (木村) やなぎ
    1964 年 77 巻 911 号 p. 197-198
    発行日: 1964年
    公開日: 2006/10/31
    ジャーナル フリー
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