ケシの発育および有用成分などにおよぼす処理温度の効果を明らかにする目的で, 1957, 1961年度の2回, 種子をことなった4段階の温度, 20゜,13゜,6゜, 2゜で, それぞれ20日間処理した. 処理中の種子含水量は13゜, 6゜, 2゜処理は種子重の50%,20゜処理のみは処理中の発芽をさけるために35%に制限した.
6゜および2゜処理においては, 両年度とも発育の促進, アヘンの増収, およびアヘン中のモルヒネ含量の増加がみとめられた. ところが20゜および13゜処理は実験年度によりことなった結果がえられ, 再現性にとぼしかった.
1962年度には, 処理中の種子含水量の影響を明らかにする目的で, 種子含水量を50, 40, 30, 20,10%に調節した種子をもちい, 温度6゜で20日間処理した.
発育促進は50, 40, 30%処理でみとめられ, アヘンは50, 40, 30, 20%処理で増収し, アヘン中のモルヒネ含量は各処理とも増加した. ただし, いずれの場合にも, 種子含水量が減少するほど処理効果が低下した.
以上の結果より, 春化処理においては, 処理温度が重要であるのみならず, 処理時の種子含水量も無視できないことがわかる. ケシにおいては低温と高い種子含水量が好結果をもたらす.
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