日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
40 巻, 3 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 和田 博雄, 野沢 昭典, 大城 久, 利野 靖, 今田 敏夫, 稲山 嘉明
    2007 年 40 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 内視鏡的切除された大腸粘膜下組織浸潤癌(以下, 大腸sm癌と略記)につき, HE染色とD2-40免疫染色標本によるリンパ管侵襲検出の程度を比較し, リンパ管侵襲検出に関する同免疫染色の有用性を検討した. 対象と方法: 内視鏡的切除された大腸sm癌30例につき連続切片を作成し, HE染色, D2-40免疫染色を行った. 結果: HE標本でリンパ管侵襲は2例2病変, D2-40免疫染色では5例6病変であった. 両者で一致したのは1例1病変, 乖離がみられたのは5例6病変で, 4例5病変がHE標本で過小評価され, 1例1病変がHE標本で過大評価された. 前者4例は, 組織との空隙が乏しい, 腫瘍胞巣やリンパ管が小型である, などのため, HE標本ではリンパ管侵襲と認識困難であったが, D2-40免疫染色では認識容易であった.後者1例は, HE標本でリンパ管とみなしたが, D2-40免疫染色陰性であった. 一方, 同免疫染色では, 腫瘍胞巣を一見取り囲むように非特異的に染まることがあり, リンパ管侵襲と誤認しないよう注意が必要であった. 考察: D2-40免疫染色は, 内視鏡的切除術を受けた大腸sm癌におけるリンパ管侵襲の正確な評価に有用であると考えられた.
  • 佐々木 省三, 黒阪 慶幸, 舩木 康二郎, 道輪 良男, 竹川 茂, 桐山 正人, 川島 篤弘, 小島 靖彦
    2007 年 40 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は89歳の女性で, 食後のつかえ感を主訴に近医を受診し, 食道腫瘍を指摘され当科に紹介となった. 生検を含む精査にてLt, 1pl, T2, N1, M0, IM0, Stage IIの食道扁平上皮癌と診断した. 手術適応と考えたが同意が得られず, 放射線化学療法(54Gy+low dose FP)を施行した. 内視鏡検査所見上, 腫瘍による隆起は消失したが組織学的判定はGrade2であり奏効度はPRと判定した. 12か月後の内視鏡検査で腫瘍の増大を認め, 組織学的に食道癌肉腫と診断された. 肝, 肺転移にて治療開始より14か月後に永眠され病理解剖を行った. 原発巣は“いわゆる癌肉腫”であり, 転移巣はすべて扁平上皮癌であった. 本症例においては放射線化学療法後に扁平上皮癌細胞がmetaplasia を起こして紡錘形化し,“いわゆる癌肉腫” になったものと推察された.
  • 山崎 章生, 江藤 忠明, 前原 直樹, 日高 秀樹, 内山 周一郎, 丸塚 浩助, 千々岩 一男
    2007 年 40 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は胃の陥凹性病変として見つかったNatural Killer T-cell lymphoma (以下, NK/T-cell lymphoma), nasal typeのまれな1切除例を経験したので報告する. 症例は46歳の男性で, 検診の胃透視で異常を指摘され, 上部消化管内視鏡検査で2か所に浅い陥凹性病変を指摘された. 生検ではhematoxylin-eosin染色で異型リンパ球のびまん性の増殖を認めた. 免疫染色でCD56とTIA-1が陽性でCD3も弱陽性, CD79α, CD8は陰性で, EBER-1も陰性でExtranodal NK/T-cell lymphoma (nasal type)と診断した. 全身検索で鼻その他の臓器の病変を認めず, 胃に原発した悪性リンパ腫と診断し, 胃癌取扱い規約に基づいたD2リンパ節郭清術を伴う胃全摘術を施行した. 深達度はmで, リンパ節転移は認めず, Ann Arbor分類でStage I, 胃癌取扱い規約に基づいた分類ではStage IAであった. 術後6か月で, 再発の兆候は認めていない.
  • 北山 大祐, 嶋村 文彦, 宮崎 勝
    2007 年 40 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は1999年1月より2005年12月までに4例の十二指腸憩室穿孔を経験した. 自験例を含む38例の本邦報告例を集計し, 十二指腸憩室の比較的まれな合併症である穿孔の診断および治療について検討した. 十二指腸憩室穿孔は平均68.6歳. 男女比9: 29と高齢女性に多く認められる. 腹痛を主訴とすることが多いが, その部位はさまざまで, 白血球増多や筋性防御を伴わないこともしばしばである. 術前診断率は26.3%と低く, 診断に難渋することが多いが, CTによる有所見率は96.6%で最も有用と考えられ, 後腹膜気腫像が特徴的な所見である. 治療法は手術療法が一般的で, 多くは憩室切除に適切な減圧およびドレナージを施行することで予後良好である. 一方で, 特徴的な所見を認めず診断までに時間を要し, 状態を悪化させてしまうことが十分にありうる疾患であることも念頭に入れておかなければならない.
  • 康 純明, 村田 哲洋, 渋谷 雅常, 鄭 聖華, 山田 忍, 金村 洙行, 竹内 一浩, 新田 敦範, 田中 肇
    2007 年 40 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で, 10年前よりC型慢性肝炎にて通院中, 2003年8月腰背部痛が出現したため当院を受診した. AFPが60ng/mlと高値で, 腹部USにて肝S5に4cm大の高エコー腫瘍を認めた. 造影CTでは辺縁のみ造影され, 総肝動脈, 下大静脈周囲リンパ節腫大もみられた.上部・下部消化管に癌病変なく, 肺・縦隔にも異常所見はなかった. 腹部血管造影検査でS5に腫瘍濃染像がみられ, CT-APにてperfusion defectを呈し肝細胞癌と診断, TAEを施行した. しかし, 壊死効果不十分であったため, 開腹下にマイクロ波凝固療法およびリンパ節摘出術を行った. 肝腫瘍は生検にて低分化型肝細胞癌と診断され, 摘出したリンパ節に類上皮細胞肉芽腫と転移巣が混在して認められた. 術後約2年健存中である. 悪性腫瘍の数%にサルコイド反応がみられ本邦では胃癌, 肺癌に多いとされているが, 肝細胞癌に伴った報告は自験例を含め5例とまれであり文献的考察を加えて報告する.
  • 増田 稔郎, 別府 透, 石河 隆敏, 杉山 眞一, 高森 啓史, 金光 敬一郎, 広田 昌彦, 高岡 了, 田中 基彦, 馬場 秀夫
    2007 年 40 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝炎ウイルス関与を否定しえた自己免疫性肝炎(AIH)に合併した肝細胞癌(HCC)の2切除例を報告する. 症例1は36歳の女性で, AIHに対し, 23年間のプレドニゾロン(PSL)内服治療中, HCCを指摘され, 肝切除術を施行した. 腫瘍は径4.8cmで, 高分化型HCCの内部に中~低分化のHCCを認めた. 背景肝は慢性肝炎で, 血中のHBV-DNA, HCV-RNAともに陰性であった. 症例2は68歳の女性で, AIHに対して20年間のPSL内服治療中, HCCを指摘され, 肝切除術を施行した. 腫瘍は径2.5cmで, 中分化型HCCであった. 背景肝は慢性肝炎で, 血中, 肝組織中のHBV-DNA, HCV-RNAともに陰性であった. AIHにおけるHCCの発生機序としては, AIHの肝硬変への進行, ステロイドの長期投与, ウイルス性肝炎の合併などが想定されており, これらを詳細に検討する必要がある. 2症例とも背景肝は慢性肝炎であり, AIHに対して長期間PSL内服治療を受けていた. HBV, HCVの関与は少ないと考えられた.
  • 尾崎 知博, 齊藤 博昭, 遠藤 財範, 堅野 国幸, 廣岡 保明, 池口 正英
    2007 年 40 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で, 肝細胞癌にて内科的治療を繰り返し施行されていた. 経過観察中に突然腹痛が出現したため, 腹部CTを撮影したところ肝S4に径2cmの肝腫瘍, 肝内胆管拡張, 総胆管内に高吸収域を認めた. 上部消化管内視鏡検査でVater乳頭部からの出血を認め, 肝細胞癌の胆道出血が疑われた. 腫瘍塞栓の成長が急速であり総胆管まで達していたため, 拡大肝左葉切除術を行った. 術後の病理組織学的検査では混合型肝癌であった. 術後14か月で肺および残肝再発を来したものの, 術後24か月現在生存中である. 胆管内発育し胆道出血を来した混合型肝癌の報告例は本邦では1例を認めるのみであり, 本症例は非常に貴重な症例と考えられた.一般に, 胆道出血を伴う肝細胞癌の予後は不良であるが, 切除症例には長期生存例も見られることから, 混合型肝癌でも可能であれば本症例と同様に積極的に肝切除を行うことで良好な予後が得られる可能性があると思われた.
  • 大谷 眞二, 野坂 仁愛, 豊田 暢彦, 若月 俊郎, 竹林 正孝, 鎌迫 陽, 谷田 理, 加藤 圭
    2007 年 40 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症のうちAlonso-Lej分類のII型(憩室型)の占める割合は1~2%とまれである. 今回, 拡張した胆管内に早期胆管癌を伴ったII型胆道拡張症を経験したので報告する.症例は53歳の女性で, 胆嚢ポリープとして当科入院. 画像検査で肝管の. 腫状の拡張が認められ胆道拡張症と診断された. 膵胆管合流異常は認められず, 拡張胆管内に7mm大の腫瘍性病変を伴っていた. 拡張胆管を含めた胆管切除が行われた. 拡張部は肝管より最大径6cmの憩室状となっており, 組織学的には線維増生と炎症細胞浸潤が認められた. 腫瘍は乳頭腺癌で深達度m, リンパ節転移はなかった. II型胆道拡張症の多くは膵胆管合流異常を伴わないが, 胆道癌合併の頻度は少なくない. 一般に胆道拡張症における発癌には膵液の関与が高いとされているが, 本例のような場合, 膵液の影響は小さいものと考えられ, 興味深い症例であると思われた.
  • 飯田 豊, 鬼束 惇義, 片桐 義文
    2007 年 40 巻 3 号 p. 296-300
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性で, 嘔気, 発熱, 右季肋部痛のため当院へ入院となった. エコーで胆嚢内に結石像は認めなかったが, 胆嚢腫大と壁肥厚を認めた. 急性無石胆嚢炎と診断し経皮経肝胆嚢吸引術(percutaneous transhepatic gallbladder aspiration; 以下, PTGBAと略記)を施行したところ悪臭を伴う膿性胆汁を排液した. PTGBA施行後も発熱, 腹痛が継続するため発症後48時間で緊急胆嚢摘出術を施行した. 胆嚢壁は壊死に陥っており, 術後敗血症性ショックとなり全身状態が急速に悪化したが, エンドトキシン吸着療法により改善し, 第36病日に退院した.PTGBAの際に採取した胆汁からAeromonas hydrophilaClostridium perfringensが検出された. これらの菌の感染例においては急激な経過をたどり, 敗血症から多臓器不全を来し死亡したとの報告もみられることから, 急性無石胆嚢炎の治療の際にはその存在と危険性を念頭におく必要があると考えられた.
  • 那須 裕也, 近藤 哲, 原 敬志, 平野 聡, 七戸 俊明, 竹内 幹也, 仙丸 直人, 鈴木 温, 樋田 泰浩
    2007 年 40 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性で. 肝門部胆管癌と診断し, 肝右葉尾状葉, 肝外胆管切除術を予定した.術中, 門脈本幹の癌浸潤陽性と判断し門脈合併切除を行い, 再建は門脈左枝横行部と門脈本幹の端々吻合を行った. 肝切除・胆管切除後の胆道再建中, 門脈圧上昇による出血を認め, 門脈再建部は固く触れ, 術中エコーで肝内の門脈血流は微弱であった. 血栓による門脈閉塞と診断し, 血栓除去・再吻合を行った. しかし, 術中再び門脈閉塞となり同様の血栓を認めたため再々吻合を行った. 2回とも吻合部にねじれや狭窄はなく凝固異常の存在を疑い, 胃大網静脈にカテーテルを留置してヘパリン(2,500単位/日)持続注入を開始. その後, 門脈閉塞を来すことなく手術を終了した. 手術後原因検索を行ったところ, 肝機能が改善した術後19日目においてもプロテインCのみが23%と低下したままであり, その活性低下が原因と判断した. ワーファリン投与を開始し, 術後49日目に退院となった.
  • 木川 雄一郎, 池田 宏国, 仲本 嘉彦, 原田 武尚, 竹尾 正彦, 小縣 正明, 山本 満雄
    2007 年 40 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵十二指腸動脈瘤(以下, PDAA)は近年のinterventional radiologyの発達に伴い報告例も増えてきつつある. 破裂後に診断されることが多く, 破裂した場合, 出血部位はさまざまで, 消化管, 後腹膜, 腹腔内などである. しかし, 総胆管への穿破は報告が少なく, 極めてまれといえる症例を経験した. 症例は56歳の男性で, 大酒家で慢性膵炎の既往があった. 急性胆嚢炎にて入院し, 保存的治療後, 腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った. 術後, 膵炎が増悪し, 保存的治療にて軽快していたが, 8日目に突然吐血した. 緊急内視鏡検査で, 十二指腸乳頭部からの出血を認め, 腹部CTでは総胆管に出血を思わせる像を認めた. ただちに腹部血管造影検査を行ったところ, 後上膵十二指腸動脈に仮性動脈瘤と造影剤の血管外漏出を認めた. マイクロコイルを用いた塞栓術が可能で, 止血に成功した. 総胆管に穿破した例は極めて少なく, 文献的考察を加えて報告する.
  • 尾上 俊介, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 鈴木 正臣, 平松 和洋, 吉原 基, 池山 隆, 鈴村 潔, 水谷 哲之, 安藤 晴光
    2007 年 40 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の女性で, 健診にて膵腫瘍を指摘された. 腹痛, 黄疸はみられず, 血液生化学検査では膵型アミラーゼ, CA19-9が異常を認めるのみであった. 腹部超音波検査, CTでは膵頭部に直径約5cmの境界明瞭で, 膨張性に発育する腫瘍がみられ, 尾側主膵管は拡張していた.膵管造影検査では主膵管に陰影欠損を認めた. 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術にて腫瘍を摘出した. 腫瘍は肉眼的に充実性で, 被膜を形成し, 膨張性発育を呈した. 組織学的検索では腺房細胞癌と診断され, 主膵管内への発育がみられた. 術後8か月経過し, 社会復帰している. 最近10年間の膵腺房細胞癌切除本邦報告例は40例みられ, そのうち3例に膵管内腫瘍栓がみられた. 本腫瘍は膨張性に発育するため周囲へ浸潤しにくいが, 膵管内腫瘍栓を形成することがある.
  • 野村 尚弘, 金住 直人, 渡邉 出, 竹田 伸, 井上 総一郎, 野本 周嗣, 杉本 博行, 中尾 昭公
    2007 年 40 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の女性で, 1999年3月, 腹痛を主訴に近医を受診. 巨大膵嚢胞の診断で経皮的エコー下嚢胞穿刺やエタノール注入を繰り返してきたが, 嚢胞の縮小が得られず腫瘍性病変も否定できないため2005年5月当院に紹介となった. 入院時上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.腫瘍マーカーはCEA 3.7ng/ml, CA19-9 40U/mlであった. CTでは膵体尾部に接して20cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め, 嚢胞壁や隔壁に濃染される充実性部分が見られた. 膵体尾部に発生した粘液性嚢胞腫瘍を疑い手術を施行した. 表面平滑な厚い被膜を有する巨大腫瘤で, 被膜を破らないように剥離を進め脾膵体尾部とともに腫瘤を摘出した. 割面は隔壁を有し, 内腔に突出する不整な隆起を認めた. 病理組織検査にて微小浸潤性の膵粘液性嚢胞腺癌と診断された. 長期間の経過観察後に切除された膵粘液性嚢胞腫瘍はまれであり文献的考察を加え報告する.
  • 多田 正晴, 中山 昇, 坂田 晋吾, 武田 亮二, 山本 道宏, 西崎 大輔, 山口 哲哉, 近藤 守寛, 高橋 裕
    2007 年 40 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で, 肝硬変による腹水のコントロール目的で平成12年2月にperitoneo-venous shunt(以下, PVS)カテーテル挿入した. 平成13年11月に急な腹痛で発症, 絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した. 開腹すると腹腔内臓器ほぼ全体が白濁した硬い被膜に覆われていた. 一部で硬い被膜が破れ小腸が露出し, その裂創に絞扼されて露出小腸は壊死していた. これらの所見から被嚢性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis; 以下, EPS)とそれによる絞扼性イレウスと診断した. EPSは臨床的には腸閉塞症状を来し, 腹腔内臓器が白濁肥厚した膜に覆われ, 繭で包まれたように塊状になるとされる. EPSはcontinuous ambula-tory peritoneal dialysis (以下, CAPD)の合併症として知られているが, 本症例は, CAPD以外でも腹腔内に異物であるカテーテルを留置する場合にはEPS発症の危険があることを示唆していると考えられる.
  • 高橋 広城, 松尾 洋一, 山本 稔, 沢井 博純, 佐藤 幹則, 岡田 祐二, 竹山 廣光, 真辺 忠夫
    2007 年 40 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で, 上行結腸癌の診断で他院から紹介され当院を受診された. 術前の腹部CTで肝S3に若干造影される直径約1cmの腫瘤を指摘され, 腹部USでは低エコーであった.腹部MRIではT1-low, T2-highでsuperparamagnetic iron oxideの取り込みは認められなかった. 転移性肝腫瘍と診断し, 右半結腸切除術と肝S3部分切除術を施行した. 肝臓の腫瘤は白色で被膜を有しており, 比較的柔らかく境界は明瞭であった. 病理組織学的検索では肝臓の病変はリンパ濾胞の増生を認めるのみで, 転移は認められなかった. また, リンパ球にも異形性は認められず, 免疫染色の結果を含めてreactive lymphoid hyperplasiaと診断された. 本症例では術前の検索では転移性肝腫瘍と判断したが, 画像診断による鑑別は非常に困難であり, 正診率の向上のために今後さらなる症例の蓄積が必要と考えられた.
  • 名取 志保, 舛井 秀宣, 高川 亮, 太田 郁子, 小島 康幸, 浜口 洋平, 福島 忠男, 茂垣 雅俊, 長堀 薫, 津浦 幸夫
    2007 年 40 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は30歳の女性で, 妊娠後期の内診で直腸壁に腫瘤を触知され, 出産後に外科紹介となった. 直腸診では下部直腸から歯状線直上にかけて径4cmの可動性不良の腫瘤を触知した. 下部消化管内視鏡検査では最下部で肛門管内に達する粘膜下腫瘍を認めた. 腹部造影CTでは右肛門挙筋への浸潤が疑われる径5cmの腫瘤を認めた. Core needle biopsyによる病理組織学的検査所見で直腸gastrointestinal stromal tumor (以下, GIST)で, Mitotic indexから悪性GISTと診断した. 免疫組織学的検査ではc-kitおよびCD34が陽性であった. 直腸切断術の適応であったが, neoadjuvant chemotherapyとしてメシル酸イマチニブを400mg/日投与したところ, 腫瘍の著明な縮小がみられ経肛門的腫瘍切除が可能となった. GISTの治療法の第1選択は外科的切除であり, 直腸の場合は直腸切断術が選択されることが多いが, 自験例のように術前化学療法により, 根治性を損なわず, 肛門機能を温存できる可能性が示唆された.
  • 小田 晃弘, 三澤 健之, 矢永 勝彦
    2007 年 40 巻 3 号 p. 344-348
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性で, 乳頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後NafamostatMesilate (以下, FUTと略記)を20mg点滴静注開始直後に, 全身の発疹, 浮腫を伴いショック症状を呈した. 補液, 酸素療法, ステロイドの静注により次第に意識が回復し, 1時間後に呼吸・循環動態は正常化した. ショック後の採血では好酸球の増多ならびにFUTおよびGa-bexate Mesilate (以下, FOYと略記)に対するIgE抗体価の異常高値が認められた. また本症例は術前のERCP施行時と1年前の胆嚢摘出術施行時に, FOYの投与歴があった. FUTとFOYは抗原決定基の化学構造上の類似性を有する. このため, 本症例はFOYで感作された後, 交差反応によりFUTでアナフィラキシー反応を呈したものと考えられた.
  • 長江 逸郎, 土田 明彦, 田辺 好英, 高橋 総司, 湊 進太朗, 日比 康太, 松林 純, 泉 美貴, 向井 清, 青木 達哉
    2007 年 40 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性で, 1998年9月に左鼡径ヘルニアの疑いで当院に紹介された. 術前CT, 超音波検査で鼡径部に腫瘤が認められたため, 腫瘍切除術(精索合併切除)を施行した. 当初の病理診断ではmyofibroblastic sarcoma, low grade malignancyであった. 術後半年から約4年間, 自覚症状ないため受診されなかったが, 再受診時には左鼡径部に再発腫瘍を認めた. 手術所見では再発腫瘍は腹壁からS状結腸, 左尿管, 外腸骨動脈, 静脈, 膀胱壁への浸潤を認めた. 腫瘍摘出ならびに浸潤臓器の広範囲合併切除, F-F bypassによる血行再建ならびに腹壁再建を施行した. 再発腫瘍は脱分化型脂肪肉腫と診断, 初回病理標本も見直しにより同一腫瘍型であることを確認した. 術後は経過良好で現在3年経過したが再発はない. 本疾患は当初鼠径ヘルニアと診断されており, 診断, 臨床経過ならびに治療法において検討を要した症例であった.
  • 岡島 正純, 惠木 浩之, 吉満 政義, 川原 知洋, 栗田 雄一, 金子 真
    2007 年 40 巻 3 号 p. 355
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top