1. ツクリタケ (西洋マツタケ) で,子実体の生長促進ホルモンの存在を実験的に明らかにし, さらにかような生長ホルモンが, 広く担子菌の子実体の生長に関与しているという考えを提示した。
2. 伸長生長の盛んな30mm. 位の子実体を用い, そのかさの前後の部分を除き, 左右にのみかさをもつ植物体を実験に使用した (図1)。この左右のうち, 一方のかさからひだを完全に除くと, 子実体の柄はひだの除去された側に屈曲する。またひだの残された側のかさに, いろいろの程度に傷をつけても屈曲が起る(写真1)。ひだの量を, 左右異った程度に除くと, 柄はひだの少なく残された側に屈曲する。さらに左右のかさのうち, 一方のかさと, 柄の接合点に雲母板を挿入すると, 柄は雲母板の挿入された側に屈曲する (写真2)。しかし一方のひだを除き, 他方の残されたひだをもつかさと, 柄の接合点に雲母板を挿入しても, 柄は殆ど屈曲しない。
3. 子実体の柄の屈曲は, 傷やこれに伴なう水分の発散によって起るのではなく, ひだの存在と密接な関係がある。
4. 生長ホルモンは, ひだでつくられ, かさおよび内被膜か通って, 柄の生長帯に向基的に移動し, 細胞の伸長を促進する。
5. ヒトヨタケ属, その他の担子菌の子実体の生長も, また同様な生長ホルモンにより調整されていることが, かさの一部除去により明らかとなった (写真3)。
6. ツクリタケの子実体を用いると, いろいろの菌の子実体の生長ホルモンの検定が可能である。
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