梁を用いた損失係数の測定では従来から用いられる半値幅法と共に,最近では周波数応答関数(加振力に対する速度応答)に曲線適合(カーブフィット)を行い,損失係数を求めることが行われる。また,共振での損失係数のみならず,反共振での損失係数を求めることも行われる。ところが,共振系を基本としたモデルでは共振ではフィットできるが,反共振ではフィットができない。また,共振での損失係数と反共振での損失係数が同じかどうか,という疑問もある。この論文では,1自由度の共振系が二つ並列接続された電気回路において,共振の間に発生する反共振の周波数と損失係数を与える式を求めた。同様のことを反共振回路についても検討した。更に,電気回路における無損失の駆動点インピーダンス関数(リアクタンス関数)に関して,それを表現する共振を基本とする回路と反共振を基本とする回路があるという知見を利用して,無損失の場合の梁の駆動点インピーダンスを二つの同路方式で表現し,それらが一致することを示した。また,それらの回路に損失を付加すると特性に差が生じることを示した。この結果から,共振と反共振での損失係数を同時に正しく曲線適合で求めるには,極零モデルを用いることの必要性を示した。
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