模擬難聴を実現する一手段として劣化音声を用いることが考えられている。日常会話における聴取特性を調べたい場合,単音節ではなく単語以上の単位の音声を使うことが望ましい。しかし,音声発話に伴う調音や韻律の連続性や心的辞書内のモーラ遷移情報がどの程度結果に影響しているか分かっていない。そこで本研究では,単語了解度試験用リストFW03中の低親密度単語の劣化音声における音響的な連続性やモーラ遷移情報の影響を評価することを試みた。まず,自然発話単語の劣化音声の聴取実験の結果と対比するために,単音節を有意味あるいは無意味に並ぶようにした単音節系列劣化音声を用いた聴取実験を行った。更に,自動音声認識器を用いて自然発話単語における劣化音声の認識実験を行い,人間の聴取実験結果と対比して考察した。この結果,人間でも自動音声認識器で抽出可能な音響的な連続性やモーラ遷移情報に支えられて劣化音声を認識していることが示唆された。
抄録全体を表示