高齢者における摩擦音の促音の知覚を調べるために,高齢者と若年者を対象に実験を行い両者の結果を比較した。特に高齢者については最小可聴値と時間分解能を測定し,それぞれが劣化しているか否かによる結果の違いを検討した。実験は二つ行い,一つは摩擦音の長さの弁別実験もう一つはイシ-イッシに対する識別実験を行った。弁別実験の結果より,時間分解能の低下と摩擦音の長さの弁別能に相関が見られた。また,識別実験の結果では高齢者においてイッシをイシに異聴する傾向が見られた。特に,高齢者において最小可聴値の上昇と時間分解能の低下が,識別に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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