本実験では,定位のターゲットとして音声を呈示すると同時に音声との関連性を操作した話者像を二つ呈示し,音声と話者像の一致が腹話術効果に与える影響を観察した。実験1では,音声と同一の単語/異なる単語を発話する話者像,静止話者像の3タイプを比較した。その結果,音声と話者像の発話動作が同一の単語を発話する条件の場合にのみ,腹話術効果が観察された。実験2では,音声と発話動作の開始タイミングの時間的ずれの影響について検討した。その結果,音声が300ms遅延する条件でも,腹話術効果が観察された。これらの結果,複数話者像が存在する状況において,同一の音声と発話動作とが対応づけられて知覚されること,その対応づけは多少の時間的ずれが存在していても成立すること,が示唆された。
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