梵鐘の音響特性は, 部分音の構成及び減衰時間で決まる。減衰時間及び部分音の歴史的変遷については, 前報までに論じた。梵鐘は, 教会鐘と同じく, CU-Sn系合金で作られる。梵鐘の場合には, 音響特性と機械的な強度との間の適切な妥協から87:13から83:17の比が最適と言われる。この論文では, Cu-5,10,15及び20 mass%Snの板状試験片の機械的性質, 及びそれぞれのカップ状試験片の音響的性質について検討した。結果は, 錫量の増加に伴って, (1)硬さは増加, 引張り強さ及び伸びは減少, (2)損失係数は減少及び減衰時間は長くなった。特に, 引張り強さは10%の錫量から減少し, 一般に錫量13〜17%が適当と言われるのは, この機械的強度から選ばれていることを示唆する。カップ状試験片の形状の変化は, 厚さの薄い方が音の減衰時間が長くなること, また閉口部の緑の厚さの影響について検討した。
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