本研究では,ホールにおけるフルート演奏音の聴感印象について,楽器の個性としての遠鳴り・そば鳴りの観点から検討した。実験では,ステージと客席で同時に収録した8本のフルートの演奏音を3次元音場再現装置で実験参加者に呈示し,各楽器についてそば鳴り・遠鳴りの評価を求めた。その際,遠鳴り・そば鳴りの定義や重視する聴感印象についてインタビュー調査を行った。その結果,定義については通説と概して一致するものの,評価時の着眼点は個人差があることが分かった。各フルートの評価は着眼点に応じて異なっていたが,比較的多数の実験参加者に遠鳴り・そば鳴りと評価された楽器については音圧レベル,及び倍音構造において共通の傾向がみられ,主観的評価との対応が確認された。