ヴァイオリン演奏に含まれる個々の音の長さ,高さ,強さといった音響特徴に基づいた熟達度推定に有効な106のパラメータを提案している。提案パラメータ群の熟達度推定への有効性検証として,ヴィブラートを許容した1オクターブ上下行長音階を用い,そのヴァイオリン演奏を記録し,ヴァイオリンの専門家による熟達度の評価から評価スコアを得る。記録演奏から算出された提案パラメータ群に対し主成分分析を行い,得られた主成分を説明変数,評価スコアを目的変数とした10fold-CVで線形回帰による推定の結果,評価スコアと推定スコアの相関係数が0.78であり,提案パラメータ,特に2音間の遷移に関する音響特徴が有効であることが示唆されている。
奥州系の普化宗尺八曲,布袋軒鈴慕の演奏音源から基本周波数を抽出し,旋律をセント表示のグラフにした。これにより,音源の聴き取りを基にした五線譜等では知り得なかった微細な音高変化と,より正確な音価を知ることができた。鈴慕の複雑な旋律も,定型旋律とその変異型との組み合わせとして捉えることにより,各音句による旋律の構成と機能を知り得た。次に,鈴慕は類似の旋律パターンの繰り返しにより構成され,自由リズムとしての回帰性と時間的定質性のあることが分かった。続いて“間”について検証し,音句を構成する音素の時間長が,息継ぎ時間を規制する基本にあることが分かった。