本研究では,音声の構造的表象を用いた未観測音素の調音運動の推定法について報告する。本研究で対象とする未観測音素とは,発話者にとって発話が困難な音素,すなわち観測が困難な音素を言う。未観測音素の調音運動は,当該話者の音声が観測できないため,従来の音声-調音マッピングを用いた推定が難しい。そこで,本研究では,その音素を正しく発声できる他話者の音声から得られる,当該音素に関する音声の構造的表象を利用して,未観測音素の調音運動を推定する手法を提案する。他話者音声から抽出された音声の構造的表象を制約として,それを満たすような調音運動を元話者の調音空間において探索することで,未観測音素の調音運動を推定する。