本論文では, 1)基本周波数依存性を持たない分析系, 2)個々の調波成分の振幅・位相情報と等価な特徴抽出, の二つを両立させる新たな調波信号分析を目的として, サブバンドに生ずる調波間干渉により, 入力信号の基本周波数によらない表現を与えるフィルタバンクについて論じる。調波間の干渉は, 変調理論に基づき時間領域の零点により表現されるが, サブバンド信号に零点分布は一般にフィルタ特性を介して入力信号の基本周波数に依存する。本論文ではこれを基本周波数によらない特徴量とするフィルタバンクを解析的に導出し, これが唯一, 周波数特性がガンマチャープ型の定Qフィルタバンクとなることを明らかにする。また, サブバンド全体で零点分布を統合することにより, 基本周波数によらない特徴抽出が実現されることを示し, 数値実験によりこれを確認する。
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