本研究では背景音の呈示下で時間間隔を生成する精度に,音楽経験が影響を及ぼすか否かを検討した。背景音の呈示下で時間間隔を生成するためには,生成すべき時間間隔を背景音を手がかりとしながら予測する過程(心的予測過程)と実際に動作を行う過程(動作遂行過程)という一連の過程を必要とすると考え,音楽経験が影響を与える場合はこのどちらか一方,あるいは両方に起因するのかを明らかにする実験を行った。まず,実験1では,4拍(1,000ms/拍)のような比較的長い時間間隔を,繰り返し生成する等時的な時間間隔の生成課題を設け,背景音の種類による時間精度の傾向を熟達者と非熟達者とで比較した。次に実験2では,非等時的な時間間隔の生成課題を設け,その時間精度を熟達者と非熟達者とで比較した。時間精度の指標には得られた入力時間間隔の標準偏差を用いた。以上の実験と分析の結果,(1)心的予測過程では音楽熟達度による差はほとんど生じない,一方で(2)複雑な動作遂行過程では熟達度による差は生じる,等の結論が得られた。
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