様々なイヤホンの音響特性とIEC60711カプラの問題点を明らかにすることを目的として,5種類のイントラコンカ型イヤホンと3種類の挿入型イヤホンと2種類のヘッドホンのIEC60711カプラレスポンス,実耳レスポンス,位相特性,遮音特性,音響クロストーク特性,高調波歪特性を測定し比較した。その結果,イヤホン及びヘッドホンの実耳レスポンスは6〜10kHzでカプラレスポンスより6dB以上低いことが分かった。また,挿入型イヤホンの実耳レスポンスは,音響漏洩の影響により,03kHz以下でカプラレスポンスより6dB以上低いことも分かった。更に,イヤホンの位相特性と群遅延特性には特異な点はないこと,遮音量は最大でも20dB程度であること,音響クロストーク量は10kHz以下で-40dB以下であること,2〜5次の高調波歪量は-40dB以下であることが分かった。このように,イヤホンの諸特性には特段の問題は認められないが,イヤホンを聴覚実験に用いる場合は,実耳レスポンスとIEC60711カプラレスポンスとは必ずしも一致しないことを念頭において,その諸特性を適切な方法で把握しておくことが重要である。
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